7-1
ルシアルの兵は、落下の際に木へ激突したのだろう。木の枝が右足に深々と食い込み、折れている左の二の腕にも突き刺さっていた。流れる血は地面に赤黒いシミを作り、それでも彼の瞳は、強い光を宿している。
「あぁ……! ジューメ!」
ユーは青ざめ、振り返った。言いたいことが分かったのだろう、ジューメは目を丸くすると首を振る。
「冗談じゃない!
確かにあの軟膏は持ってきたさ。だけどな、作るための道具は全部洞穴に置いてきたから、今のオレ達にとっては貴重な治療薬だ。わざわざ敵に使ってやること、ないだろう!」
泣き出しそうに顔を崩し、ユーは兵の傍へ近寄った。なおもジューメを見上げ、視線を逸らし続けていたジューメも深いため息をつくと、袋の中を漁る。
「……骨折は治せないからな」
ジューメは歩み寄ろうとし、咄嗟にユーの首根っこを掴んで後ろへ飛んだ。ユーは何事かとジューメを見上げ、木に寄りかかったままの兵へ目を向ける。彼の右手には無残にも砕けた剣が握られており、それを振るったのだということは容易に想像できた。
「……敵に、手ほどきを受けるつもりは、ない……。殺せ」
「そんなこと言わないで! どうしてさ、簡単にそんなこと」
「黙れオスキュリート! 特に貴様には、情けをかけられるなど!」
「どうしてそんな酷いことが言えるの!」
怒鳴る兵の胸倉を掴みあげ、ヴェントは顔を紅潮させた。半ば無理やりに立たせたせいだろうか、兵の表情はわずかに歪み、それでもヴェントのことをにらんでいる。
「ユーは本当は、あんた達なんて放っておいてもいいんだ! そうだろ、あんた達はそれだけのことをユーにしてる、殺されたって痛めつけられたって文句は言えないはずだ! それなのにユーは、あんたの事助けようとしてるんだ。あんたが傷ついて痛そうにしてるのを、辛そうにしてるのを放っておけなくて助けようとしてるんだよ! なのに、なんでそんなことが言える!」
目元に涙を浮かべながら吠えるヴェントの腕を、ジューメに下ろしてもらったユーは、弱々しく引っ張った。それにヴェントは手を放し、落とされた兵はわずかにうめき声を上げながらもユーを見る。
「ヴェント……だけど、この人に、こんなに酷い怪我を負わせたのはボクなんだ。眼を使って、力を抑えられなかったボクなんだ」
肩を震わせ、消えるような声音で言うユーに、ジューメはそっと頭へ手を乗せた。それから今度こそ兵の前に膝をついて座り、ザッと傷を見る。兵は暴れることもせず、ヴェントに抱きしめられたまま、俯いて体を震わせているユーを見ていた。




