↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の国 ~オスキュリートの血~  作者: 夢野 幸
第七章 てがかり
25/39

7-2

 その間にジューメは右足の付け根を縄できつく縛り、左腕も同じようにした。躊躇いなく木の枝を抜くと自身の手に炎を纏わせ、傷口を撫でる。炎に焼かれて血は止まり、軟膏を置くと、縄を解いた。兵は脂汗を額に浮かべながら顔を上げた。

「おい、お前の鎧のマント、破るぞ」

「……好きにしろ」

 投げ捨てるように言う彼に、ジューメはマントを遠慮なくはぎ取ると対角線に裂いた。適当な大きさの木の枝を拾い上げると、残りの布きれを細くちぎり、兵の左腕へ手を伸ばす。

「……ユー、この布きれ、こいつの口に押し込んどけ」

「え……?」

「今から骨を弄る、間違って舌を噛むかもしれないからな」

 ユーは戸惑いながら、ジューメに渡された布きれと兵を交互に見た。彼はどこか面倒くさそうに眉を寄せ、右腕をユーに伸ばす。

「さっさと渡せ、自分で噛める」

 恐る恐る近寄り、それを渡した。彼が布を口に咥えたのを確認し、ジューメは左腕を握る。骨の形を確かめながら添え木を縛り付けていき、三角に裂いたマントを縛るとそれを三角巾にし、首にかけた。短い時間で行われたそれに、兵は布きれを吐き出すとジューメを見る。

「別に、オレはタダで助けたつもりはないぜ。……てめぇらの親玉のところ、連れていけ」

「断る」

 あまりにも早い返答に、一瞬、会話を聞いていたヴェントは意味を理解できなかった。冷たく見上げる彼の瞳に、ジューメは口角を上げるように笑う。

「オレは、助けてくれと懇願した覚えはない。お前たちが勝手に治療しただけだ」

「だよなぁ? まぁ、あんまりあっけなく割られても、信用ならねぇ。そうこなくっちゃあな」

 楽しそうに言うジューメに舌打ちをし、いつの間にか自身の前に膝をついて、見上げるように顔を覗き込んでくるユーへ視線を向けた。彼はわずかに肩を震わせるが、モジモジと手を動かし、目を上げる。

「えっと、名前を聞いてもいい? なんだろう、ずっと……兵隊さんって呼ぶのも、なんかイヤだし……あ、ボクはウィユ=オスキュリート。こっちはヴェント=ラミティで、こっちはジューメ=エンファー!」

 兵は、全く、無反応だった。それにユーはがっくりと肩を落とし、立ち上がると、トボトボとジューメとヴェントに近づいていく。

「……ミール=フェーブル」

 それは、聞こえるか聞こえないかの声量だったが、ユーは顔を上げると勢いよく振り返った。それから再び彼の前に座り込み、顔を上げる。

「ミールさん! えと、ボクはみんなからユーって呼ばれてるよ。ウィユって、言いにくいでしょ?」

「ユー、あんまり心を許すな。一応、お前の命を狙ってるやつらなんだぞ」

 ジューメはそう言って、ユーの体をヒョイと持ち上げた。そのまま空を見上げ、深く息を吐き出す。

 朝からは煙ザコに襲われ、かと思えば龍と戦い、会話をし。気が付けばすでに、太陽は山の向こうに傾きつつあった。

「ヴェント、魚を採れるか」

「え? うん、たぶん」

「じゃあ、近くに川があるから、お前は魚を採ってくれ。オレは獣を狩りに行く、ユーはこいつを見張ってろ」

 そう言ったジューメを、信じられないと言わんばかりに目を見開き、ヴェントは凝視した。ユーはキョトンとし、ミールは何も言わず、ただ三人を見ている。

「こんな怪我だ。……わざわざ動いて、傷口開くほどバカじゃないだろ。それに、ユーを相手になら特に」

 ミールは視線を逸らすことなく、無表情のまま、こちらを見ていた。なおもヴェントは心配そうに顔を歪めるが、ジューメはそんな彼の背を軽く押す。

「……大人しく、していろよ?」

「……は、自分の体の状態ぐらい、てめぇが一番わかるさ」

 舌打ちと共にそっぽを向く彼に、ジューメは口角を上げ、ヴェントと共にその場を後にした。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。