↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第二章『いろんな世界のラスボス様』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/92

90.魔法学校のラスボス様⑦


 よくよく考えてみれば、この世界に来てからほとんどの時間を学校の敷地内だけで過ごしていたわけです。特にその点について不満があるわけではないですけど、一つの世界内での行動範囲がこれだけ狭いというのは結構珍しいパターンだったのかもしれません。


 もっとも、そのパターンも今日これから崩れ去ることになるようですが。



『よし、全員ドラゴロウにしがみついたな? 途中で力尽きた奴はそのまま落としていくから死ぬ気で引っ付いているがよいぞ! 魔法使いの強さは握力の強さに比例すると言っても過言ではないからな。これならば良い鍛錬になるであろう!』



 今日は楽しい遠足の日。

 クラス一同、参加生徒と乗り物を兼ねるドラゴロウさんの脚や尻尾に掴まって、羽ばたきに伴う揺れと高空特有の強風に必死に耐えておりました。


 一人だけ身体強化を使えないわたしは、比較的安定した背中の真ん中というポジションを譲っていただきましたが、両手の握力だけで尻尾の先端にぶら下がっている何人かは生きた心地がしないでしょう。一般的な遠足という行事についてよく知らないのでイマイチ自信はありませんけど、普通はもっと死の恐怖とは縁遠いものではないかと愚考する次第でございます。


 ちなみに、我ら一年ヒポグリフ組の皆が遠足に行くと知らされたのは、今朝の始業の鐘が鳴ってから。あえて言うまでもないことですが、心の準備などあるはずもないですし、荷物の準備などについても当然同じ。更に付け加えるなら学校側の許可や、集団ボイコットする形になる他の授業への配慮も皆無でしょう。



「遠足ってどこに行くんでしょう? サヤさんは先生から何か伺ってたりは?」


「いえ、それが全然さっぱりでして」


「どこか風光明媚な観光地などでしたら素敵ですね。お弁当の用意がないので、近くに美味しい食べ物屋さんなどあると嬉しいのですけど」


「どうでしょうねぇ。期待に水を差すようで申し訳ないんですけど、うちの神様がそんな普通の観光地に生徒を連れて行ってくれるとはとてもとても……」



 質問をしてくれたソフィさんには申し訳ないですが、目的地についても一切不明。我々が乗っているドラゴロウさんですら、凄まじいスピードで宙を飛んで先導するラメンティア様を必死に追いかけているだけなので行き先を把握してはいないでしょう。


 なお、いくら空高くとはいえ人間を何十人もぶら下げたドラゴンが飛んでいたら、常識的な世界に住む普通人の皆様を驚かせてしまいそうなものですが、それについては学校に張ってあったのと同種の認識阻害だか改変だかの結界をツルギ様が使ってくれているらしいので一安心。

 いえ、あまり安心できる状況ではないのですけど、とりあえず話に聞くヒコーキとか何とかいう機械に未確認飛行物体として撃墜される心配だけはなさそうです。



「ようやく高度を落とし始めた、かな?」


「どこでしょうね、ここ? 少なくとも食べ物屋さんはありそうにないですけど」



 そうして周りの皆と励まし合いながら必死に耐えること数十分。我がクラスは見事脱落者を出さないまま、本日の遠足最初の目的地に辿り着いたようです。



 ◆◆◆



「なんだか、寂しい光景ですねぇ……」


 ドラゴロウさんが着陸したのは、枯れ木ばかりがまばらに生えるどこかの山奥。

 わたし達が出発した魔法学校の周辺と比べても明らかに動植物が少ないですし、見るからに寒々しい光景ばかりが広がっています。一般的な感性をしていたら、わざわざ好んで訪れたい場所ではないでしょう。



『くっくっく、そう思うのが素人の浅はかさよな』


「いやまあ、ラメンティア様が目的地に選んだ以上は何かしらの理由はあるんでしょうけど、わたしにはちょっとよく分からないですねぇ」


『ふむ、まあ未だ魔法を扱えぬサヤであれば気付かずとも無理はない。他の者は何か気付かぬか?』



 この口ぶりからするに最初に魔法学校を訪れた時と同様、魔法使いの皆さんにはわたしとは違う光景が見えているのでしょうか?



『はい、先生! あそこに古びた洋館みたいのが建ってるのがボンヤリ見えます!』


『うむ、よく気付いたなドラゴロウよ。他の者はどうだ?』


「うーん、あの辺りだけ視界がぼやけて見えるような……?」


「えっ、どこどこ? 全然分かんない」



 流石、才能面においてはクラスでもピカ一のドラゴロウさん。

 他の皆さんが首を傾げながらも必死に目を凝らしている中で、明らかな違和感を見つけ出したようです。わたしには見えないものの、どうも少し離れた位置にそこそこの大きさのお屋敷が建っているらしいのですが……。



『まあ結界術の見破り方については後でツルギや他の教師共にでも聞くがよい。それより本題に入るが、これを見よ!』



 そう言ってラメンティア様が胸元から取り出したのは、細かい文字が書かれた数枚の紙束と、見知らぬ誰かの人相書きが載った別の紙。顔の下に記されている金額は……恐らくですが、この人物の首に懸かった懸賞金と思われます。



『くくく、今日は早くに目覚めたので校長のジジイから聞いていた魔法警察だかの本部を冷やかしに言ってな、そこのカギの掛かった書類棚の中にこの捜査資料があったのだ。容疑者の潜伏先だとかそういう感じのやつ』



 ははあ、わたしにもようやく本日の遠足の主旨が読めてきました。

 本来は部外秘に当たるであろう捜査資料には、例の暗黒の魔法使いとやらの一人だという人物に関する情報が事細かに書かれています。


 これまで普通人と魔法使いを合わせて十人以上も殺害、更には三人もの捜査官を返り討ちにした凶悪犯だそうで。魔法界隈では極悪人として名が知れている人物なのか、何人かのクラスメイトは見るからに怯えているようです。


 潜伏場所をほぼほぼ特定できていたにも関わらず未だ逮捕できていないあたり、荒事慣れした魔法使いの専門集団であろう捜査機関においてすら、生半可な戦力では容易く迎え撃たれてしまうと考えられているのでしょう。




『というわけで、遠足の最初の獲物がコイツな。今日の昼飯は懸賞金で豪遊するぞ! ああ、それと今回は貴様らに任せて悪は手を出さぬようにしておくから。作戦なども自分達で考えるがよい』



 教師として生徒の自主性を重んじて任せる。

 言葉にするとそれっぽく聞こえますが、これは単に生徒に無茶ぶりをして反応を愉しみたいだけでしょう。仮にここで殺人犯から逃亡を図ろうとしたら、その時は魔法使いの犯罪者より遥かに恐ろしい悪の神様に何らかのペナルティを喰らうのは確実。しかも『最初の獲物』と言っているあたり、この一人だけで終わるつもりもなさそうです。



「じゃあ……とりあえず、作戦会議からですかね?」



 気は進みませんが、こうなった以上は仕方ありません。

 さっさと事を済ませて、せめて美味しい昼食を頂けるよう頑張りましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。