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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯


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09.軍隊を襲って兵隊さんからカツアゲしよう!


 粗末な農具や包丁ばかりとはいえ、仮にも武装した人間がざっと二百人以上。

 あちこちの村から強引に集められた面々が領主様のお屋敷に押しかけたら、どう考えても穏当な対応は望めそうもないでしょう。ちなみに亡くなったお父さんが生前言っていた通りなら、この国で反乱に加わった人間に対する刑罰は一律縛り首と決まっているはずです。



「やめておきましょうよ!? どう考えてもタダじゃ済みませんって!」


「今すぐ引き返せばまだバレずに誤魔化せますから!?」



 年配の皆さんはこれまでの人生で幾度か近隣の誰かが実際に領主に対する反乱に加わるのを見たことがあるそうで、その悲惨な末路まで生々しく記憶しているのでしょう。

 集団の先頭をズンズン歩くラメンティア様に思い留まるよう必死に訴えかけますが、このひねくれ者の神様にそんな忠告をしたら、ますますやる気を出してしまうに決まっています。



『おっ、何やらデカい屋敷が見えてきたな! ついでに隣にあるのは……ほう、領軍の施設か。少しは歯応えのあるヤツがいるとよいな!』



 わたしも初めて来ましたが、領主様の屋敷があるのは最寄りの集落、領都ということになっている小さな街から歩いて数分の郊外にありました。

 鬱蒼とした森に接するように大きなお屋敷が建っていて、その隣にはラメンティア様が言った通りの軍の施設らしき建物が幾棟か並んでいます。こんな立地になっているのは、誰かに襲われる心当たりが少なからずあって身の守りを固めるため……というのは、流石に邪推が過ぎるかもしれませんが。



「あ、ラメンティア様。向こうも気付いたようですよ?」


『くくっ、慌てて仲間を集めておるようだな』



 なにしろ、こちらは約二百人もの集団です。

 日が落ちてからは松明を掲げていたせいもあり、我々の接近は非常に分かりやすかったことでしょう。屋敷の近辺で警備をしていたと思しき兵隊さんが、大声を上げたり鐘を鳴らして仲間に注意を呼び掛けているのがよく見えました。


 領主側に露見する前に引き返したなら、さっき誰かが言ったように反乱を有耶無耶にできたかもしれません。ですが、こうなってしまってはもう手遅れ。反乱を成功させたらさせたで問題は山積みでしょうが、縛り首がイヤならば死に物狂いで立ち向かうしかありません。



『くかかかっ、ようやくやる気が出てきたようだな! では、悪に続けぃ!』



 見た限り人数においては若干こちらが多そうですが、普段から戦闘訓練などしている上にちゃんとした武器を持った兵隊が相手では、普通ならロクに太刀打ちできるはずがありません。


 ですが、今回に限ってはこちらが圧倒的有利。

 ここまでの村々を襲った時と同じように、真っ先に一柱ひとりで突っ込んでいったラメンティア様が、可哀想な領兵の皆さんを千切っては投げ千切っては投げ……あくまで比喩表現であって本当に手足や頭が千切れてはいないようですが、圧倒的な強さで蹴散らしているようです。


 というか、今更ですけど他の人達を連れて来る意味はあったんでしょうか?



『もっと死ぬ気でかかってこぬか! ほれ、サービスで攻撃を避けんでやるぞ?』


「な、なんだ、この女!?」


「突き込んだ槍の穂先が折れた!?」



 どうもラメンティア様はハンデとしてわざと攻撃を受けているフシがありますが、兵士さん達がいくら力を込めて剣や槍を振るっても武器のほうが壊れるばかり。本来は急所であるはずのノドや眼で攻撃を受けても痛みすら感じていないようです。これでは勝負になるはずがありません。



『おっ、こいつは結構持っておるな? 次のヤツは……チッ、ほとんど財布に入っておらんではないか。もっと計画的に給料を使わんか! さて、こっちのヤツはどうだ?』



 しかも敵兵を殴り倒した合間合間にしゃがみ込んでいると思ったら、気絶した人達の懐をまさぐって財布を拝借する余裕まである様子。その最中にも周囲の皆さんは必死に武器を叩きつけますが、虫でも払うように適当に殴り倒されて、次は自分のお財布を奪われるのです。


 ちなみに奪ったお財布は、次から次へとご自分の胸の谷間に押し込む形で収納しているご様子。財布一つのサイズなど高が知れているとはいえ、それも百人分以上となれば相当の重さと大きさになるはず。いったい、どのような仕組みになっているのでしょう?



「武器が効かない。この女、化け物だ!?」


「バラバラになって逃げろ! 俺達のカネまで盗られちまう!」


「こ、こらっ、逃げるな! お前ら、逃げるんじゃな……ぐぁっ!?」



 こんな状況では士気を保てないのも無理はありません。

 斬っても突いても一切の痛痒を感じない相手が圧倒的なパワーで襲い掛かってきて、その上いちいち律儀にお財布を奪っていくのです。逃亡を諫めていた指揮官らしき方が一発で殴り倒されて財布を奪われたのもあって、まだ無事な兵士の皆さんは散り散りになって逃走を始めてしまいました。


 最初に襲い掛かってから、ここまで五分そこらでしょうか。

 ただ倒すだけならもっと早くもできたのでしょうが、それでも凄まじい好タイム。

 わざわざ財布を失敬する手間が発生している分だけ時間のロスが発生していますが、それでもとんでもない早業には違いありません。巻き込まれないよう遠目で見ていただけですが、懐にしまってあるお財布を探して抜き取る手際が異常なまでに洗練されておりました。



『馬鹿め、一人も逃がすか! やられたザコは大人しくカネと経験値を置いていくのが業界の作法というものだぞ! 今回は貴様らが弱すぎて経験にはならんが、寛大な悪はカネだけで勘弁してやろう! どうだ嬉しいだろう? くかかかっ、そうかそうか感極まって泣くほど嬉しいか!』



 必死に逃げようとした兵士さん達も、恐るべき俊足で追いつかれては悪の神様の手にかかって次々と倒れていきます。言っていることの意味はイマイチ分かりませんが、とりあえず誰一人として身体とお財布が無事では済みそうもありません。


 ともあれ、こんな具合に領主の館を守る兵士は残らず無力化。外の騒動に気付いているのかどうかは分かりませんが、哀れな領主様の命運と財産は最早風前の灯火となってしまった模様です。


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