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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯


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08.近くの村に略奪に行こう!


 ご紹介が遅れましたが、わたしの地元の村の名前はカナイド村。

 そこから徒歩で半刻ほど進んだ先にあるのが、現在わたし達が仲良く向かっているお隣のリナトオ村。どちらも田舎の小村ではありますが、お隣は小さいながらも村の中に商店や食堂があったりして、まだ両親が健在だった頃は作物を売りに来たついでにお店を覗くのを楽しみにしていた覚えがありますね。



『くかかかっ、大人しくカネと食い物を出すがよい!』



 そんなささやかながらも美しい幼い日の思い出は、今まさに略奪の下手人側として参加している罪悪感に塗り潰されて、急速に薄れつつあるわけですが。



「なっ、盗賊だと!? というか、あいつらはカナイドの連中でねぇか!」


「お前ら、いくら暮らしが苦しいからってそこまで落ちぶれたか!」


「そうだ恥を知れ、恥を!」



 お隣の皆さんとは以前からちょくちょく顔を合わせる間柄とあってか、こちらの素性は一発でバレてしまったようです。ボロボロの農具や包丁を手に手に村人総出で押しかけたのを見て、極めて正当性の高い真っ当な抗議の声を上げています。



「ち、違うんだ……ワシらも好きでこうしてるわけじゃ……」


「何が違う! 言ってみろ!」



 長老様など今にも泣きそうな顔で自己弁護を計ろうとしていますが、神様云々の事情を知らないお隣さんにしてみれば、生活苦で食い詰めた連中が最後の手段に出たようにしか思えないでしょう。


 ですが、幸か不幸かお隣さんもすぐに事情を理解してくれました。



『こらっ、悪を差し置いて何を雑談なぞしておる! さっさと村中のカネと食料を集めぬか! 言うことを聞かないと、こう、だぞ!』



 まだ状況に理解が追いついていないお隣の村民を片っ端から捕まえては、殴るわ蹴るわの乱暴狼藉。正義感の強い力自慢たちがラメンティア様を止めようと掴みかかったりもしましたが、軒並み触れることすらできずに指先一つでダウンしてしまいました。

 デコピン一発で畑を二つ三つ横切るくらいの勢いで吹っ飛ばされていましたが、痛みに悶えて転げ回る元気はあるようなので命に別状はなさそうなのだけが救いでしょうか。


 

 その過程で逆らうだけ無駄ということが理解できてしまったようです。ここリナトオ村でも、先程の我が村と同じようにお金と食料が集められたのですけれど……、



『ショボっ! わざわざ悪が足を伸ばしてやったというのに、さっきと大して変わらんではないか!』


「そ、そんなこと言われましても……」



 このあたりの村の懐事情など、どこもかしこも似たようなものでしょう。

 畑や家畜が多い分だけ我らがカナイド村より僅かに多いものの、ここ数年の不作はどこも似たようなもの。この分だと、こちらも今年の冬越えは相当に厳しいものになりそうです。



『やれやれ、仕方ない。次に行くぞ、次!』


「あのぅ、ラメンティア様? 次というと、どちらのことで?」



 薄々感づいてはいましたが、両村の人々が怯えて聞けないようなのでわたしが代わりに質問などしてみました。すると、完全に予想通りの答えが返ってきました。



『もちろん、また別の村を襲うのだ。さあ、ここの連中も武器になるようなモノを疾く集めよ! 善は急げ……否、悪は急げだ!』



 そうしてお隣の皆さんも何故だか我々の仲間に加わって、さっきまでと同じくしばらく歩いて別の村へ。とはいえ、この近辺の集落の不景気具合については先程申し上げた通りなわけでして。



『少ない、次!』


『これしかないのか? 仕方ない、次!』


『まったく、ワンパターンにも程があろう!』



 有無を言わさず何人か殴って、蓄えを差し出させて、その量に満足いかないと襲った人達も仲間に加えて次の集落へ……という繰り返し。

 そうして夕方までに追加で三つほど村を襲撃……というか、ラメンティア様が単独で殴り込んでいるのを追いかけているばかり。わざわざ連れて来られた各村の人々が手を汚さずに済んだのはいいとして、その収穫はどこも芳しいとは言えません。



『まったくつまらん! この地方、悪が何かするまでもなくほぼ詰んでおるではないか!』



 神様ならぬ人間は水や食料を摂らねば持たないということで、現在は最後に襲った村の広場でここまで集めた食料をまとめて煮込んだモノをいただいている真っ最中。何故ここまで連れてこられたのか分からず怯えていた人々も、お腹に温かい食べ物を入れたおかげか今は僅かながらに安心した様子が窺えました。


 ですが、ラメンティア様は他の皆さんと同じ料理を一柱ひとりで十人前も二十人前も食べていながらご機嫌ナナメ。各村の蓄えがあまりに少なく、略奪のし甲斐がなかったと食べながらプリプリ怒っています。



『サヤよ、このへんに景気の良さそうな場所というか、カネや食い物を貯め込んでそうなヤツはおらぬのか?』


「そうですねぇ……心当たりがないこともないですけど」



 日照りや大水など自然由来の不作は仕方ないですが、村々の余裕がここまで少なくなった最大の要因は恐らく年々重くなる税のせいでしょう。そうして集めたお金を領内の治安や景気向上のため使ってくれるなら納得もできますが、そうしたお話を聞いた覚えは一切ありません。いったい、何に使っているのやら?



『ふむ、つまり税を集めておる領主のところならカネがあると? では、誰ぞそこまで案内せよ! これより領主の屋敷を襲撃するぞ!』



 昨晩この神様と出会ってからまだ丸一日も経過していないのに、何故だか領主に反旗を翻す反乱軍の一員に。あまりのスピード感に頭がクラクラしそうです。


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