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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯


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10/22

10.貴族のお屋敷に強盗に入ろう!


 領主様は屋敷のすぐ隣に兵舎を建てるくらい防犯意識の高い方のようですが、まさか百人を超える兵隊が残らずノックアウトされることまでは想定していなかったのでしょう。まあ先程の一方的な蹂躙を目の当たりにしたら、仮に百人が千人や一万人だったところで結果が変わったとも思えませんが。



『かかっ、さあ領主とやらはどこだ! 神をもてなす権利をやろう!』


「お、お邪魔しまーす……」



 大きな正門を前蹴り一発でこじ開けたラメンティア様……および、その後ろをコソコソついて行くわたし含むその他大勢。実質的には約一名が大暴れしているだけですが、客観的に見れば我々全員が反乱の徒に見えることでしょう。


 屋敷の外が過剰なほど守られていたのと対照的に、邸内には警備の人員らしき人影は見えません。生活の場に物々しい格好をした兵を置くのを嫌っているのか、あるいは賊がここまで侵入する可能性が完全に想定外なのか。


 ごく普通の使用人であろうメイドさんや下男さんの姿はチラホラ見かけますし、大勢の武装した人間が踏み入ってきたのを見て怯えていますが、幸いなことにラメンティア様も反抗の意思がなく武器も持っていない彼ら彼女らまで害するつもりはなさそうです。あくまで今のところは、という注釈が付くのが恐ろしいところですが。



『ほう? ここの主は美術品の収集が趣味と見える』


「ですねぇ。このツボとか、そこの壁の絵とか、多分すっごく高そうですし」



 屋敷内を歩いていると自然と目に付く数々の美術品。

 その数は明らかに単なるインテリアという風ではありません。ラメンティア様がドアノブを捻じ切って開けた部屋の一つなど、集めた美術品を展示するためだけのコレクションルームになっていたほどの道楽ぶり。


 ここいらの領民としては複雑な心境ですが、年々重くなっていく、なおかつ取り立てが厳しくなっていった税金の使い道は、領主様のコレクション趣味のために使われていたと見るのが妥当でしょう。半ば強制的にここまで連れてこられた各村の皆さんも、自分達の血と汗の結晶がこのような形で使われていたと知ってか苦々しい表情を浮かべています。



「いったいなんの騒ぎだ、騒々しい!」



 かなり広いお屋敷ではありますが、なにしろ二百人近くもの人数でお邪魔しているのです。ちょっと歩いたり話したりするだけでも結構な物音が響くでしょうし、先頭をノシノシ歩くラメンティア様など閉じている扉を見つけ次第に蝶番からドア板そのものを無意味に引き千切っているわけで。それはまあ気になって出てくるのも仕方のないことでしょう。



「な、なんだ!? 誰だお前ら!?」


『神だ!』



 見るからに高そうなガウンを着て、両手指に大きな宝石の嵌まった指輪を付けた肥満気味の中年男性。この成金スタイルを見るに、どうやら彼がこの屋敷の御主人にして近隣一帯を治める領主様なのでしょう。


 その領主様は出会い頭に悪い女神様に鼻面を蹴り飛ばされて、悲鳴を上げながら廊下に倒れ込んでしまいましたが。相変わらず暴力への躊躇というものがなさすぎます。



『おい、貴様が領主とやらか? ありったけのカネと食い物を寄越すがよい!』


「なっ、ご、強盗!? だ、誰か! 外の警備はどうした!?」


『馬鹿め、ヤツらなら全員死んだわ!』



 補足しておくと、先程倒された兵士の皆さんは誰一人として死んではいません。

 なので、これは単に領主様を怖がらせてからかっているだけでしょう。


 一人残らず意識とお財布を失ってはいますが、彼らには後で使い道があるからとラメンティア様が仰って、村々からお越しの皆さんにも独断でトドメなど刺さないようにと屋敷に突入する前に念を押していました。使い道の詳細については聞いていませんが、ロクでもない用途である点だけはまず確実と思われます。



『ほれほれ、早く溜め込んだモノをしまってある場所に案内せんか! 素直に従わんと酷いぞ!』


「ひ、ひぃぃ……」



 私欲のために村々に重税を課し、兵隊を使って厳しく取り立てていた領主様に思うところはありますが、この惨状を見ていると正直ちょっと可哀想になってきました。



「あの、ツルギ様……?」


『おや、どうかしたかいサヤ君?』


「ええ。これは、いくらなんでも流石に……」


『うん? ああ、そういうことか。いいよ、私に任せておきたまえ』



 領主様を蹴り転がすのに忙しいラメンティア様に直接何か言うのは怖いですが、この神様のお目付け役らしい喋る剣に注意してもらえば暴力の程度も多少はマシになるかもしれない……そう思っていた時期がわたしにもありました。



『こらこら、ラメンティア君や。少し待ちたまえ』


『む、どうした急に?』


『こういう小悪党は税金逃れの為だとかで、王家に納める用のお金をしまっている表向きの保管場所とは別の隠し収納とか作っている場合が多いからね。そこの本棚の裏とか、絵画の裏側の壁が怪しいと見た!』


『ほう、それは良いことを聞いた!』



 お目付け役って何でしょうね?

 

 共犯者による的確なアドバイスを受けたラメンティア様は、そこらの家具を片っ端から引っくり返し、壁や床に隠し扉でもないかと家のあちこちを殴っては大穴を開け、先程までにも増して破壊の限りを尽くしています。


 そうして、もう恥も外聞もなくわぁわぁ泣き出してしまった領主様が正直に脱税用の隠し金庫の場所を白状した頃には、立派だったお屋敷は廃墟も同然となっていたのでありました。


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