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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第二章『いろんな世界のラスボス様』

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83.賭博破壊録サヤ⑦


 当然ながら、かすり傷一つ負うことすらなく賭場を仕切っていた反社会的勢力の制圧完了。最後の対応で失敗したとはいえ、それでも途中まではラメンティア様を愉しませていた功績を認めてか、構成員の皆さんの首から下をブタの姿にするだけで勘弁してあげる穏当な形で決着しました。


 そのブタ化についても三日ほどで勝手に解けるようにしてあるそうですし、それ以外は致命傷にはならない程度の骨折や出血だけで済んだのは非常に幸運だったと言えるでしょう。



『で、あの後で連中のアジトに乗り込んで金庫の中身を根こそぎ奪ってきたわけだが』


「何かの権利書がほとんどかな? 土地建物に金融業者の債権に……ちょっとだけあった貴金属はともかく、他は売って現金化するのも大変そうですねぇ」


『とりあえず奪ってはみたが、ぶっちゃけ面倒が勝るな……ああ、そこの支配人。チップだ、全部くれてやるから適当に処分するなり経営するなり好きにしろ』



 ちなみに我々が今いるのは初日に荒らした健全なカジノのラウンジスペース。

 本日未明に裏組織を壊滅させて帰ってきた後、テーブル一つを占領して戦利品の品定めをしていたところです。その戦利品の大半は、扱いを考えるのが面倒になってカジノの支配人さんに丸投げしてしまう結果となりましたが。


 お金が欲しいだけなら最初から今日みたいに強盗をすれば済む話ですし、ここまでの数日間でわざわざギャンブルをやっていたのは過程そのものを愉しむのが主目的。とはいえ、運営組織の再起はどう考えても不可能でしょうし、そろそろこの世界ともお別れでしょうか。



『一応、あそこの連中とは別口の闇賭博の情報もないではないがな。たしかナントカ銀行だったか、表向きは真っ当な銀行が裏で密かに主催しているらしいが』


「ははぁ、世も末ですねぇ」


『ほれ、客の中にサヤのファンが何人かいただろう? どうせ大して広くもない業界だ。顧客層が被っているのはあり得そうだし、あいつらを探して口利きをさせれば参加自体は難しくなさそうだが……どうする?』


「あれ、わたしが決めちゃっていいんですか?」



 ここまで仮にもギャンブル勝負を繰り返してはきたものの、正直その面白さというのはさっぱり分かりません。自分の財産や命を本当に賭ける気なんて毛頭ありませんでしたし、真っ当に勝負していたのなら違った感想もあったかもしれませんけど、そこまでして彼らの価値観を理解したいとも思えません。



「ええと、じゃあ、ナシで」


『うむ、よかろう。悪自身は裏方に回ってサヤを矢面に立たせる試み自体はなかなか面白かったが、それについては他の機会に別の形でやればよかろう』



 というわけで、ギャンブルに明け暮れた日々はこれでお終い。そうなると自然な流れとして、次はどういう世界に行くべきかという話題になるわけですが……。



「ふわぁ……っと、失礼しました」


『おや、サヤ君寝不足かい? そういえば最近はずっと昼夜逆転の生活だったからね。私とラメンティア君はどうにでもなるけど、成長期の子の健康にはあんまり良くなかったかな』


『ふむ、ならば次は昼夜のメリハリをしっかり付けられる生活ができる世界を目指すとするか。言ってみた悪自身にもどういう世界なのかさっぱり分からんが、まあ大体の方針を立ててから毎度のゴッド直感任せに進めば、そういう希望に沿いつつ面白いことのある場所に出るであろう。多分な』



 わたしも最近知りましたが、うちの神様曰くのゴッド直感は特に何かの能力というわけではない単なる直感とイコールだそうで。とはいえ、それで毎回のように何かしら面白い出来事に巡り合うあたり、その精度は単なる勘と侮れません。

 恐らく、次の世界では昼夜のメリハリがきちんと付いた規則正しい健康的な生活を送れることでしょう。それがどんな意味合いなのかは全然分かりませんけれど。



『では、部屋でひと眠りして腹ごしらえをしたら出発するか』


「はい、分かりまし……あっ」



 この世界への未練という程ではないのですが、一つ忘れていることがあるのを思い出しました。後で聞こうと思っていたのですが、ちょっと反社のアジトに強盗に行くのに忙しかったものでして。



「ラメンティア様が言ってたギャンブルで二番目に大切なことは分かりましたけど、その上の一番目は何だったんです?」


『ああ、あれか。実を言うとサヤは既にそれができているのだがな。ふむ……そう考えると、そなたは意外と本当にギャンブラーに必要な資質を備えているのやもしれぬ』


「そうなんですか?」


『うむ、博打をやる上で一番大切で、なおかつ一番難しいことだ。ただ勝負に勝つよりも遥かに難しい。それはだな……』


「それは……?」



 また随分と持ち上げられたものです。

 わたしが無敵のギャンブラーでいられたのは、あくまで神のご加護によるインチキありき。自分に博才なんてモノが備わっているとは一切思えないのですけれど、



『まだ勝っているうちに止めて、それっきり潔くギャンブルから身を引くことだ。博打で破滅する奴にも色々いるが、根本の原因は大抵コレができぬせいゆえな』



 なるほど、納得。

 ギャンブルに魅力を感じておらず、なおかつ自分の才能なんてモノを欠片も信じていないからこそ、その一点だけに関しては確かに自信を持ってできると言えるのかもしれません。


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