68.ゲームの世界のラスボス様①
雪山のペンションを後にした我々が向かった次なる異世界。
その全貌はまだ見えてきませんが、とりあえずの第一印象としましては……。
「いきなり建物の中に出たから外観は分かりませんけど、お城……なんですかねぇ、多分? その割には妙に生活感がないというか、働いてる人も住んでる人も誰もいないのが気になりますけど」
異様なまでに広いお城と思しき建造物。
わたし達はその廊下を荒野の世界から愛用しているバイクで走っているのですが、さっきから生きている人間も死んでいる人間も誰一人として見かけません。
現役で使われている施設なら甲高いエンジン音を立てる乗り物に誰かしらの反応がありそうなものですし、もしかすると既に放棄された廃城なのでしょうか。
あちこちの窓ガラスや石材が砕けているのもそれらしくはありますが、一方で蜘蛛の巣が張っていなかったり埃が積もっている様子がなかったり。まだ違和感の正体は掴めませんが、全体的に微妙なチグハグ感を覚えます。
『一応は気配を感じるのでな。誰もおらぬということはないと思うぞ? 今はとりあえずそいつらの場所に向けて走っているところだが、っと。階段を駆け上がるから舌を嚙まぬよう注意しながら強めにしがみ付いておれ』
「おっと、これはどうも」
超絶的な感覚を有するラメンティア様が気配を読み違えるとも思えませんし、『そいつら』という言い方からしてこのお城には複数人の方がいるのでしょう。それが真っ当な住人なのか盗掘者の類なのかは確かめてみるまで分かりませんが。
「なんだか、お天気も悪いですねぇ。真っ黒い雲ばっかりで空が見えないから、今が昼なのか夜なのかも分かんないですし。あと雨も降ってないのにカミナリだけ鳴りっぱなしですし」
この天気が日常の光景なのか異常気象なのかも不明。
もし普段からこんな空模様が普通だとしたらお洗濯物の乾きも悪そうですし、雷鳴がゴロゴロ五月蠅いせいで夜に熟睡するのも難しそうです。それとも地元民には慣れっこだったりするんでしょうか。
『おっ、何やらデカい扉が見えてきたな? あのすぐ向こうにさっき言った者共がいるはずだ』
わたしの地元世界で見た帝城よりも何倍も広そうな城内を走ることしばし。
異様に長い廊下の先に、これまた異様に大きな金属扉が見えてきました。
扉の高さと横幅は、それぞれわたし二十人分から三十人分といったところでしょうか。こんなに大きいと日頃の出入りにも不便だと思うのですけれど、こういう大きなお城で暮らす人の考えというのはよく分かりません。
『では、突っ込むぞ!』
ただでさえ大きい上に頑丈そうな金属扉ではありますが、そんなものに怖気づくラメンティア様ではありません。
衝突しないようスピードを落とすどころかバイクの速度を目いっぱいに上げて、激突寸前に車体を傾けつつ強烈な横蹴り一閃。それだけで分厚い扉はメチャクチャに折れ曲がった上に支える蝶番が捻じ切れて、そのまま部屋の奥のほうへと吹っ飛んでいきました。
「あ」
そして吹っ飛んでいった扉の残骸は、部屋の中にいた方々へと見事に激突したようです。何名かの方々が向かい合う形で立っていたのがチラっと見えましたが、なにしろ扉のサイズがサイズですので誰も避けられずにまとめて薙ぎ払われる格好になったのでしょう。
『今の連中、どうやら武器を構えて争っておったようだな。立ち位置的に部屋の奥側にいた奴が城の主で、強盗がそいつを複数人がかりで襲っていた的な感じか?』
「あらら、それは物騒ですねぇ」
実際の事情は当人達に聞くしかなさそうですが。
もしラメンティア様の言う通りだったとしても、強盗被害者ごと諸共にやっつける形になってしまったわけですし、果たしてどうしたものでしょう。まだ息があるようなら、手当てとかしたほうがいいのかな……と、思ったその時でした。
『む?』
「あれ?」
倒れていた人達のうち何人かが、何やらキラキラ光ったかと思えばフッと消えてしまったのです。意識があるようには見えませんでしたが、もしかすると死んだフリをして様子を窺いながら何か不思議な能力で遠くに逃げる算段を立てていたのでしょうか。
『いや、今のは空間を操作してどうこうする系の能力とは微妙に違った気がしたが……むむ?』
なんともワケが分からない世界ですが、ここに来て更なる不明点が増えました。
いきなり消えてしまった皆さんとは別のまだ扉の残骸に埋もれている大柄な方が、さっきの人達のようなキラキラとはまた違う『ゴゴゴ……』みたいな重々しい謎の音と共に身体がボロボロと崩れ落ちて灰のように散っていき、そして……。
【ラメンティアは大魔王ギガダークをやっつけた!】
【50000ポイントの経験値を手に入れた!】
【10ギョールドを手に入れた!】
どこからともなく変な声が聞こえてきましたけど、何ですかねコレ?




