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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第二章『いろんな世界のラスボス様』

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54.世紀末世界のラスボス様③


 あらまあ、なんということでしょう。

 地平線の果てまで荒涼とした大地が広がるだけだった光景は、ほんの数十秒のうちに天を突くような高さの塔(後で聞きましたが、ビルという名称だとか)が無数に立ち並ぶ摩天楼へと変貌を遂げてしまいました。


 こちらは僅かばかりこういった出来事にも慣れていたからマシですが、村の皆さんの驚きようといったら、腰を抜かすわ目を回して気絶するわと実に大変なものでした。



『おっ、電気が点いたな? あの者らが発電機を動かすのに成功したらしい』


「火もないのに一斉に灯りが……事前に話は聞いてましたけど、こちらの世界は随分と進んでいたんですねぇ。ついさっきまで文明レベルが後退しまくってましたけど」



 わたしには具体的な理屈はさっぱりでしたが、在りし日のこの都市は電気なるエネルギーで動くカラクリを至るところで活用していたのだそうで。


 幸い、村の中にその手の専門知識をお持ちの方がいたとかで、バイク用の燃料を流用する形で電気を生み出す装置の起動にも成功したようです。物置小屋くらいのサイズの装置では流石に都市全部を賄うのは不可能だということですが、我々が新たな拠点としている塔のあちらこちらから一斉に光り出したのには正直かなり驚きました。

 もちろんラメンティア様がその他多くの建物と一緒に発電機なるカラクリ仕掛けも復元していたのが前提ではあるのですが、かつては人の手でこれだけのモノを全部生み出して運用していたというのだから大したものです。


 普通に階段を上ったらさぞや疲れたであろう高い建物の最上階にも、エレベーターという自動で動く箱に乗るとあっという間。

 村の皆さんによりますと、現在我々がいる建物は都市が滅びる前には富裕層向けのホテルとして使われていたそうです。予備知識のないわたしには何がどういう働きをするのか想像するのも困難ですが、他にも色々な設備が有効活用できそうだとのことでして……。



『おっ、メシが来たか! どれどれ、不味かったら承知せんぞ』


「ははは、ご安心くだされ! 食材はたんと創っていただきましたし、ホテルの調理場を使えましたのでな。存分に腕を振るわせていただきましたじゃ」


『ほほう、自信ありげではないか? おっ、これはさっきの種モミを増やしてやったヤツだな』



 さっきまでの村にはロクな調理器具すらなさそうでしたが、ここのホテルの設備はそれはもう大したものなのでしょう。多分。


 それに加えて、自分のお腹を満たす為という理由が動機の九割以上ではあるのでしょうが、件の種モミや村で細々と育てていた僅かな作物。それから鶏や豚といった家畜の類も、ラメンティア様の神力により近隣の道路を埋め尽くすような形で増えに増えまくっていました。アスファルトと言うらしい硬い素材で覆われた路面が、その過程でバキバキに砕けてしまっていましたが。


 また手刀で叩き割った地面からは豊富な地下水が溢れ出し、せっかく復活した都市の一部が盛大に水没しているほど。色々と非効率というか雑なのは否めませんが、少なくとも今は水と食料に困らなくなっただけで万々歳とすべきなのでしょう。



『ほう、なかなか美味いな。褒めてつかわす。ほれ、サヤも食え食え!』


「ええ、それじゃ遠慮なく……あ、美味しい」



 これでもし不味かったら神様の機嫌を損ねた村の皆さんは大変な目に遭っていたのでしょうけれど、潤沢な食料に便利な調理設備、それから料理をした人の腕が良かったおかげか大変に結構なお味です。特に野盗に奪われかけていた種モミから増やした穀物、お米をお肉や野菜と一緒に蒸し上げた品が絶品でした。



「なるほど、これは奪い合いになるわけですねぇ……」



 不謹慎ですが、さっきの野盗の気持ちも分かろうというものです。

 というか今更ではありますが、これだけの規模の都市を復活させた上に道路から溢れるほどの食料や水がある現状。あれだけ酷い目に遭わされた昼間の野盗がリベンジしに来るかは不明にせよ、これだけ目立つ状態というのは同じような悪党の興味を強く引くものとならないでしょうか。



『うむ、まず間違いなく略奪に来る連中はおるだろう。というか、気配からして既に都市のあちこちに偵察らしき者が入ってきておるしな。侵入してきた方角のバラけ方からして、それぞれ別集団のようではあるが』


「え」



 それは……もしかしなくても、かなり不味いのではないでしょうか。

 単なる移住者ならば共存の道もあるかもしれませんが、もし暴力によって食料や建物を独り占めしようと考える人達がいたら村人達に抵抗できるとは思えません。電気でピカピカ光っているこの建物が我々の本拠地であるのは、遠くからでも簡単に分かるでしょうし。



「ど、どうする……今のうちにここを捨てて逃げるか?」


「だけど、せっかく手に入った幸運をむざむざ捨てるなんて……」



 村の人々も、今更ながらにわたしと同じ危惧を持つに至った様子。

 見るからに不安そうな雰囲気ですが、経験上、彼らがこれから体験することになるのは更に想像を絶したものとなることでしょう。



『先に言っておくが全部の面倒を悪だけに丸投げしようなどとは思うなよ? 平和とは自ら勝ち取ってこそありがたみが分かるものゆえな』


「ええと……わたしはもう大体分かっちゃったんですけど、その心は?」


『くっくっく、その察しの良さは流石は悪の巫女だと褒めてやろう! 奪われるのが怖いのならば、それよりも先に攻め込んで制圧してしまえばよいだけのこと。者共、明日の日の出より近隣の武装勢力を片っ端から落としにかかるから覚悟しておくがよい!』



 罪のない村人を扇動して、強引に略奪の手勢としてしまうこの手口。

 なんだか生まれ故郷を思い出してほっこりする気持ちになりますねぇ。


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