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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第二章『いろんな世界のラスボス様』

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51.旅支度を整えよう!


 あそこから更に数分が経過しました。大して新しい情報が増えたわけではないですが、それでも一応お伝えしておきますと。



『おう、若造。貴様、歳はいくつだ? ほう、十七? まだまだ人生これからの若者をうっかり死なせておいて、その詫びがショボい御都合能力(チートスキル)を一つ二つというのは、ちと反省の気持ちが足りんのではないか? おら、もっと誠意を見せんか、誠意を!』



 この空間にいる五人のうち一名、わたし以上に状況を掴めずに戸惑っている風のお兄さんは、我々と違って本当の死人だったそうです。なんでもトラックなる大きな乗り物に轢かれたはずが、気付いたらこの空間にいたとかなんとか。


 その原因は本人の不注意などではなく、現在目の前で半泣きになっているカツアゲ被害者の女神様が、本来まだ死ぬべき運命でない人をうっかりミスで死なせてしまったせいなのだそうです。そして、それは同時にうちのラメンティア様にとっては絶好の強請りネタになってしまうわけでして。



「あのぅ、ラメンティア様? まあ聞く前からほぼほぼ答えが分かってはいるんですけど、そのお兄さんって知ってる人だったりします?」


『いや、全然知らんが?』



 全然知らない人の死の責任に対して『誠意』を要求して、それを片っ端から自分の懐に入れてしまうつもりでいるようです。まあ、らしいと言えばらしいのですが。



『ふむ、そろそろ権能(コイン)の出が悪くなってきたか? 今度はちょっと逆さにして振ってみるか……おっ、出た出た! なんだ、まだ隠し持っておるではないか』


『ひぃっ!? やめて、許してくださぃぃ……』



 食べると便利な能力が身に付くコインは、もう結構な量が辺りに撒き散らされています。明らかに落とし主の女神様の体積より多い気がしますが、コインのように見えるのはラメンティア様の不思議パワーで加工したからに過ぎず、本来は明確な形のない神の権能だからこそなのでしょう。

 

 種類によっては常人には害になりかねないとのことなので、一応無断での拾い食いは自重していますが、さっきのは能力云々をさておいても実に結構なお味でしたし、できればもうちょっとお代わりを頂きたいところですねぇ。



『ふむ、これだけ振り回して出ないとなると、今度こそ本当に打ち止めか。これに懲りたら、今度からは人命を尊重して注意深く運命をなんかこう良い感じにやるのだぞ』


『は、はいぃぃ……』



 妙にフワッとしたアドバイスはともかく、ようやくカツアゲの時間も終わりのようです。

 手持ちの能力を一つ残らず奪われた女神様は目を回したまま憔悴していますが、ここに来るちょっと前に圧倒的暴力で壊滅させられた神々の軍勢に比べたら、これでも相当にマシな被害でしょう。というか、あれからまだ半刻経っていないのにビックリですよ。



『ふむふむ……「超健康体」? ほう、病気にならなくなるのか。じゃあ、これとあと「毒無効」あたりも一応持たせておくか。おい、サヤ。この二つをやるから食っておけ』


「はい、どうもです。ちなみに、残りのはどうするんです?」


『無論、悪が全部食う。わざわざザコい神由来のスキルなど取り込まずとも大抵のことは素で出来る悪であるが、そのうち気が向いたら使ってやろう。ありがたく思うがよい!』



 ラメンティア様はそう言って山積みのコインをガシッと鷲掴みにすると、遠慮の「え」の字もなくモリモリと口に運んでいきました。元々が強すぎて戦力増強という意味では大した意味はないそうなのですが、まあ純粋に嗜好品として美味しいですし食べたくなるのは当然のことでしょう。



「あのー……俺はどうすればいいっすかね?」


『あぁん? 貴様なんぞ知るか! おら、帰れ帰れ!』



 食べている途中で本来補償を受けるべき立場のお兄さんがおずおずと声をかけたりもしていましたが、おやつタイムを邪魔されたのに腹が立ったのかラメンティア様の蹴りを喰らって、そのままパカっと開いた空間の穴に落ちていきました。


 いったいどこに行ってしまったのやら。

 事故死しただけでも気の毒なのに、なんとも運のない人ですねぇ。



『今の若造なら、現世に蹴り返してやったからな。今頃は魂が元の身体に戻って生き返ったはずだぞ。さっきの蹴りに悪の復元力を僅かばかり込めてやったのでな、元の死体がミンチになっていようが問題なかろう』



 前言撤回。

 実はすごく運が良い人だったのかもしれません。

 死体の状況次第ではお医者さんが腰を抜かすかもしれませんけど。


 それとラメンティア様の実年齢を知った今だと、一歳児が相手を若造呼ばわりするのに奇妙なものを覚えますが……そのあたり指摘して機嫌を損ねたら怖いので、あえて黙っておくとしますか。



『ふぅ、喰った喰った! ケーキではなかったが、悪の甘味欲も満たされたし良しとするか! 悪に美味しく食べてもらったことを感謝するがよい!』



 元々、この場所には旅支度を整えるためだけに寄ったのです。

 言語面以外の能力についての実感はまだありませんが、用事が済んだ以上はこれ以上長居する必要はありません。実質的には、これから行く次の場所こそが、わたしの異世界旅行における最初の目的地ということになるでしょうか。



『気が向いたらそのうちまた来てやるから、今回減った分の権能をしっかり補充しておくのだぞ。じゃあな!』


「お、お邪魔しました~」



 強盗被害者の女神様としては二度と来てほしくないでしょうが、そのあたりはラメンティア様の気分次第なので安心しろともするなとも言い切れません。

 わたしも一応は巫女見習いになったことですし、ボスの機嫌が良い時にそれとなく行き先を提案して再訪を考えぬよう誘導するとかしておくべきですかね?



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