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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯


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05.山を下りて村に行こう


 まさかの人違いならぬ神違い。

 どうりで生贄の要・不要などで認識が食い違ったわけですよ。



『馬鹿者! この悪が地方ローカルのマイナー神のはずがなかろう!』


「ひぇっ、ごめんなさい! ごめんなさい!?」



 この山の神と勘違いされていたと知ったラメンティア様は、それはそれは怒っているご様子。もしかすると今度こそ本当に殺されてしまうのではと思いましたが。



『……だが、まあ勘違いとはいえ一度は受け取った生贄だ。ほれ、軽い気持ちで飼い始めたペットを面倒見切れなくなって捨てる飼い主とかクソダサいしな。見かけたらボコる』


「ええと……つまり、どういうことです?」


『とりあえず、当面のところは飼ってやるから泣いて感謝せよということだ。して、娘よ。そなた、名前はなんという? 特になければ適当に「ああああ」とかになるが』


「いえ、名前ありますのでそれは勘弁してください!? ええと、申し遅れましたが名前はサヤといいまして、年齢は今年で十二になります」



 今更も今更ですが、わたしの名前はサヤと申します。

 年齢は十二歳。髪は黒髪のおかっぱ。

 特徴といえばそれくらいの普通の村娘……いえ、よく考えたら生贄として実質追い出されたようなもので帰る場所もないですし、もう『村』すら付かないただの娘なわけですが。


 ああ、そうそう名前といえば。



「あのぅ……ラメンティア様の名前は伺いましたけど、そちらの、その、剣の方はなんとお呼びすればいいでしょうかね?」


『ああ、こやつか。この剣の名前は……そうだな、ナマクラちゃんとでも呼んでやれ。くかかっ、悪が許す!』


『こらこら、許すな許すな。まったく、流れるように変なあだ名を付けるんじゃあないよ』



 ええと、結局どうすれば?



『これからサヤ君を連れ歩くとなると私達の地元に来る機会もあるかもだし、同名の別人と混同しそうなのはよろしくないか。かといって、無駄に大仰な銘で呼ばせるのも仲良くなる上ではイマイチだし……それじゃあ、サヤ君。私のことはツルギとでも呼びたまえ』


「ええと……では、ツルギ様とお呼びしますね」



 剣だからツルギ。

 覚えやすくて実に結構です。



『私のことはラメンティア君のお目付け役というかブレーキ役というか、まあ大体そんな感じと思ってくれたまえ』


「はい、どうぞよろしくお願いします!」



 まだ一晩だけの付き合いですが、どうやらツルギ様の言葉はラメンティア様も渋々ながら受け入れていたように思います。もし神様を怒らせた時は庇ってもらえるよう、普段からなるべく仲良くしておきたいところです。



『む、もう夜明けか。ほとんど一晩中喰い続けていたようだな』


「あら、もうそんな時間ですか……ふわ」



 生贄にされたと思ったら徹夜での調理と食事。その際食べたモノの正体についてはさておいて、朝日を見て時間の経過を意識したせいか疲れと眠気が一気に押し寄せてきました。



『ふむ、サヤよ。そなたの住んでいた村というのはどちらだ?』


「それなら、山を下りて道を少し進んだ先ですけど……」


『では、まずはそこを目指すとするか。案内せよ』



 いったい何の御用でしょうか。

 わたしの家で軽く休憩して、ついでに旅支度を整えるとか?


 大して物が残っているわけではないですが、それでも横になって寝ることくらいはできるでしょうし、村の皆さんも昨日の今日で諸々の片付けを全部済ませているということはないはずです。


 果たしてペットなのか召使いなのか現在の立場は自分でもイマイチ判然としませんが、すぐ隣に本物の神様がいる以上は村の人達も強く文句は言えないでしょう。


 自分を生贄にしようとした人達と顔を合わせるのに若干の気まずさはありますし、信仰対象の山の神様をペロリと平らげてしまった件はどう誤魔化したものかも分かりませんが、ちょっと村に入って余計な真似をせず出て行けば深く追求を受けることもないだろう……なんて。


 そんな平和的かつ穏当な展開になると思っていられたのは、ある意味幸せだったのかもしれません。わたしは悪の神たるラメンティア様のことを、まだ全然理解できていなかったのです。



『ふむ、思った通りのシケた村だな』


「シケたって……いえ、その通りとしか言えませんけど」



 村に入るや否や素直な感想が聞こえてきました。

 様々な自然環境の悪化であるとか……結局、あのイノシシの神様が本当に関係していたのかも分かりませんが……あとは年々重くなる税であるとか。そういったアレコレに苦しみ続けた村の雰囲気が明るいはずもないでしょう。


 それでも生きている以上は働いてご飯を食べないといけません。

 農村の常で住民の皆さんは朝早くから活動を始めるのが習慣になっています。まだ日が昇り始めて間もない早朝ですが、すでに家から出て田畑や家畜の世話に精を出している見知った顔が多々いました。


 そんな村中の人々に聞こえるほどの大声で、



『では……さあ、ありったけのカネと食い物を出すがよい! くかかかかっ、大人しく出さねば家と田畑を片っ端から焼き払ってくれるわ!』


「んなっ!? ちょっ、ラメンティア様!?」



 この悪の神様は、一発で眠気が吹っ飛ぶようなことを言い出したではないですか。

 

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