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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第一章『さだめを破壊すラスボス様』

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46.債務者を苦しめよう!


『結局、この世界で一番強かったのはサヤの地元の山におったデカイノシシであったな』


「へえ、あのお肉……じゃなくて、神様って思ったより凄かったんですねぇ」


『まっ、こいつらと比べて精々二割か三割増し程度。悪にとっては誤差みたいなもんだがな』


 まだ生き残っている神々の心を完膚なきまでに圧し折って、ラメンティア様の気分もすっかり晴れたようです。今は地上に降りてきて、地に額を擦りつけながら許しを乞う神様達を前に雑談タイムといったところでしょうか。



『そもそも悪があの山におったのも、やって来たばかりの世界でとりあえず一番強そうな気配を辿ってみてのことであったのだ。振り返ってみるとパッとしないド田舎のマイナー土着神にしては不自然なほど強かったし、もしかすると目の前のこいつらが信仰の主流になるのと引き換えに地位を追われた古い神話の主神格とかだったのかもしれんなぁ。まあ、今となっては確かめようもないが』



 単なる偶然かとも思っていましたが、ラメンティア様と出会えた理由がそのあたりにあるのなら一応はキッカケをくれたイノシシの神様に感謝しておくべきでしょうか。死体を解体して美味しく頂いてしまったのに、感謝も何もないという気もしますけど。



「それでラメンティア様。話は変わりますけど、神様の数が一気に減った上に生き残った方々も力を失っちゃったみたいですし、この世界ってこれから大丈夫なんですかね?」


『ああ、そんなことか。まあ悪としては別にこの世界がどうなろうが知ったことではないのだが、多少は知った顔もできたことだし袖振り合うも何とやらか。ちとサービスして後始末をしてやろう』



 神々の権威が地に落ちたのは半分自業自得みたいなものですが、そのせいで何も事情を知らない世界中の人々が割を食うというのは好ましくないでしょう。一応、極端な悪天候などを多少マシにするくらいのお仕事はしていたようですし。


 我が上司の悪の美学的にも、そういった形で人々を苦しめることになるのは本意ではなかったゆえか、きちんとアフターサービスをしてくれるということで。もう少し具体的には、さっきから出っぱなしの白蛇が何やら口をモゴモゴやったと思ったら、ペッ、と唾を吐き出しました。


 そうして吐かれた唾がひとりでに動いたと思ったら、見る見るうちに筋骨を備えた人型に。否、正しくは神型と呼ぶべきでしょうか。この姿はなんとなく見覚えがあるような……?



「ええと……たしか、名前は脳筋様でしたっけ? もしかして生き返らせてあげたんですか?」


『生き返ったというか、言ってみれば神のゾンビみたいなものだな。ああ、そもそもゾンビが分からんか? このジャンルも色々と奥が深くてバリエーションも多々あるのだが、簡単に言うと生き物らしい自我がないまま悪の命令通りに動く人形のようなものだな』



 そうして説明する間にも、蛇は更に唾を吐いては丸呑みにされた神々のゾンビ? ……を、次々と生み出しておりました。


 そうして再生された神々は、姿こそ先程までとそっくり同じですが、そこはかとなく目が虚ろですし意味のある言葉を喋ることなく不気味な呻き声を上げるばかり。これ、ちゃんと動くんですかね?



『元々こいつらが持っていた力の七割ほどは悪が吸収してやったのでな。元々持っていた力の三割ほどしか発揮できなくなっておるが、まあ十分であろう。おい、貴様ら。今後は人間共が勝手に滅びたりせんように適当に世話を焼いてやれ。あまり手伝いすぎると自立心が損なわれるかもしれんからな。適当な塩梅を見計らって……という判断はゾンビには難しいか?』



 ゾンビ神の皆さんは、それぞれ『あー』とか『うー』などと呻いていますが、あれは了解の意ということで合ってるんでしょうか。ラメンティア様の命令通りに動くなら頼もしくはありますが、ちょっとばかり不安が残るような気もしますね。



『ふむ……ならば、ゾンビ共の監督役にこいつらを使ってみるか。おい、ソルなんとかとやら。失った権能を返して欲しいか?』


『なっ、さっきは不可能だと言ったはずで……ぐあぁ!?』


『さっさと聞かれたことに答えんか。あと言葉遣いな?』


『は、はい……返して欲しいですぅ……』



 さっきの話の通りなら、ツルギ様によって破壊された権能は決して元通りにならないはず。それとも先程の説明は神々を絶望させるための嘘や誇張が入っていたのでしょうか。



『いや、ツルギの性能については言った通りだ。だが……とうっ!』


『ぎゃあっ!?』


『ほれ、ツルギで刺すより前に悪がこいつらの手やら足やらを適当に齧っておったろう。その時に先んじて奪っておった権能の一部だけは破壊を免れたという寸法よ。ちなみに、今のはそこの雷神の権能だな』



 果たして、今の説明をするのに神々にカミナリを落とす必要はあったのでしょうか? いやまあ、必要がなくても楽しいからという理由だけでやるのがうちの飼い主様なのですけど。



『当然、元々持っておった能力より少なからず力は落ちることになるだろうが……貴様らがどうしても頼むなら? 優しい悪としては権能の貸与を考えてやらぬでもないぞ? レンタル料は少々高くつくことになるかもしれんが、これからも神を続けていくための必要経費と思えば安いものであろう? んん?』



 権能の貸与なんて芸当ができることも驚きですが、ここで注目すべきはレンタル料とやらでしょう。世の高利貸しが泣いて逃げ出すような邪悪な笑みを浮かべていますし、とても安く済むとは思えませんが、そもそも借りなければ神としての立場すら怪しいのです。神々としても怪しいのは百も承知でしょうが……まあ、最初から選択の余地はないのでしょうねぇ。



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