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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第一章『さだめを破壊すラスボス様』

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35/61

35.根拠のない言いがかりを付けに行こう!


 望まぬ公開露出を強いられた帝国兵の皆さんの心の傷が心配ではありますが、それ以外については概ね穏便に済んだように思えます。



「ではフケバトブ王、こちらの書類に署名を。我が国に関しましては現在皇帝の座が空位となっておりますので、代理として現職の大臣全員の署名をもって代えさせていただきますがよろしいですか?」


「は、はいっ、それはもう……」


「では、今この時より我がウスラデカイ帝国と貴国の間における不可侵条約の締結および即時発令ということで」



 フケバトブ王国にとって特に大きな成果としては、帝国との無期限での不可侵条約の締結でしょうか。帝国側がこれから新皇帝の選出やら地盤固めやらで、吹けば飛ぶような小国に構っている暇がないという事情もあったにせよ、ごく短い協議だけであっさりと決定してしまいました。



『まっ、いざとなればこんな約束など簡単に反故にされるのだろうがな!』


「ラメンティア様、あんまり正直に言わないであげてくださいよ……」



 それも間違ってはいないのでしょうが、とりあえず王国側としては数年くらいは安心していいのではないでしょうか。もう遥かな過去のようで誰もが忘れかけていましたが、フケバトブ王国はこれから様々な改革・改善を控えている先行きに希望を持てる状況なのです。


 不可侵条約の締結と一緒に、これまで少なからず負担となっていた定期的な贈り物などの風習も廃止が決定していました。気休めとはいえ当分は帝国からの干渉を意識しないで済むならば、存分に国内状況の立て直しや発展に注力できるというものでしょう。



『じゃ、国王ヒゲ。もう貴様らに用はない。その顔もそろそろ見飽きたから駄賃を持ってさっさと帰るがよい! シッシッ』


「ひどい……ですが、その、そういうことで我々はこれで失礼いたします」



 態度こそ最悪ですが、ラメンティア様の言うお駄賃とは例の帝国兵の身代金。その権利を丸々譲られたとなれば、多少の雑な扱いくらいは我慢してもお釣りがくるはず。王様も内心はホクホクでしょう。

 あまりに金額が多いので一度に全部支払うのではなく数年がかりでの分割払いとなるようですが、それだけ資金に余裕ができたのなら今後の王国の未来は明るいものとなってくれそうです。



「それで、ラメンティア様。わたし達はこれからどうするんです?」



 王国の皆さんをこうして見送ったということは、このまま当分は帝国のご厄介になるのでしょうか。それとも次はまたどこか他の国に殴り込んでメチャクチャにするとか?



『ううむ……この世界で一番デカい国がここのようだからな。その中の一番調子に乗っておった者はこのザマであるし』


「だぁ? あぅ、きゃいっ」


『くかかっ、赤子になって人間的にはだいぶマシになったがな。ともあれ、一番の大物の後で他のザコ共をチマチマ相手して回るというのも些か芸がない』



 一番大きい国の一番偉い人を既にどうにかしてしまったのです。

 ラメンティア様曰くの殴って楽しい「調子に乗っている人」で、これ以上の相手というのは世界のどこを探してもいないのではないでしょうか?


 そうして殴り甲斐のある相手がいないとなれば、うちの神様もしばらくは暴力へのモチベーションが上がらず大人しく過ごしていてくれるのではないか……なんて、内心の密かな望みは一瞬にして潰えることになったのですが。



『ふっ、サヤは分かっておらぬな。王や皇帝と同じくらい調子に乗るのは、必ずしも国を運営するような立場の者だけではないのだ。おい、帝国の。ちと尋ねるが、この国でだな――――』



 帝国高官の皆さんから何やら話を聞いていたラメンティア様は、程なくして次なる獲物を定めたご様子。いつものように嗜虐心に満ちた邪悪な笑みを浮かべておりました。



 ◆◆◆



 で、それから一刻ほど後のこと。



『ほう、ここが帝国で最大の神殿か!』


「色んな神様を祀る神殿が近くに固まってるみたいですねぇ」



 目的地は帝城と同じ都の中とあって、移動時間はそれほどかかりませんでした。

 お城から出してもらった馬車に揺られることしばし、我々が到着したのは帝国最大規模の神殿群。恐らくは世界最大でもあるのでしょう。


 大理石造りの神殿が狭い範囲にいくつも立ち並び、建物前にある見事な出来の神像が各神殿がどの神様を祀っているのかを示す看板のような役割を果たしているようです。それだけでも相当の見応えがありますし、厳かな宗教施設というより一緒の観光名所みたいな感じのようですね。



『あちこちから遥々訪ねてきた風な参拝客も大勢並んでおるし、そいつらの財布を当て込んだ屋台や露店なども結構あるようだな』


「食べ物飲み物に、あとは護符なんかもあるみたいですよ。神官の人達が忙しくしてるのは、多分皇帝さんの葬儀の準備ですかねぇ?」



 実際には死んでいないわけですが、それでも表向き皇帝陛下が崩御したとなれば大々的なお葬式をやらないわけにもいきません。そうした冠婚葬祭に宗教関係は付き物ですし、帝都に本拠を構える神殿の方々はさぞやお忙しいことでしょう。


 そんな時に更なる混乱を招くことに罪悪感もあるのですが……悲しいかな、ただの一ペットの身には飼い主様の方針に異論を挟む権限などないのです。



『これだけの参拝客が引きも切らずに押し寄せるとなれば、さぞ多くの寄付金を貯め込んでおるに違いない。城の連中も言っておったが、ジジイの時の皇帝も神頼みに縋るためか相当のカネを神殿に入れて自分の為の祈祷やら何やらさせておったというしな』


「それは、まあ、結構お金がありそうではありますけど……」


『そしてカネがあって権力と仲良しこよしの宗教家というのは、裏で博打やら色事やら退廃的な遊びに耽っておる生臭坊主だと相場が決まっておるものだ。うむ、特に証拠などはないが、ここの連中もきっとそうに決まっておる!』



 またひどい決めつけもあったものです。ここの神官の皆さんの実際の素行がどうあれ、今回はそういう言いがかりでゴリ押すつもりなのでしょう。神殿への殴り込みとなると、一国の王や皇帝をボコボコに叩きのめす以上に罰当たりかもしれません。



『というわけで、有象無象の凡神ぼんじん共を崇める生臭坊主に、真に偉大な神の威光というものを教え込んでやるとするか! さあ、付いて参れ!』



 そういう神様間の序列みたいなものは存じませんが、うちの上司が他の神々を恐れる様子は一切ありません。人ならぬ神様に天罰が下ることがあり得るのかどうかは知りませんが、他の神々の怒りを買わなければいいのですけれど。


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