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ラスボス様は破壊したい!  作者: 悠戯
第一章『さだめを破壊すラスボス様』

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28/60

28.侵攻進行チルドレン


 今現在の我々は、極めて悪質かつ挑発的な宣戦布告をした上でウスラデカイ帝国に攻め入った侵略者。その経緯について思うところは多々あるものの、まあ客観的にはそう見られても文句の言えない立場であるはずです。



「うん? なんだ、あの……いや本当に何!?」


「あんなに子供ばっかり連れて大変そうだなぁ」



 わたしも経験がないので想像にはなりますが、自国を侵略しにきた他国の軍勢に対する目線というのは本来なら相当に厳しいものとなるはずです。

 四方八方から恐怖心や敵愾心を向けられて、いつ誰に攻撃されてもおかしくないのが当たり前。そのせいで苛烈な対応に出てしまい、またも互いの敵意と憎悪が増していく負の連鎖……みたいなものが、恐らくは定番コースということになるのでしょう。



「ええ、はい……お代として物資を幾らか譲りますので、どうか町の皆さんの中で子守りのお手伝いができる方の手をお借りできればなぁ、と」


「ああ、うん、それは構わないけど……」


「よく分からないけど、お嬢ちゃんも大変だね」



 しかし数千人もの幼児のお世話で四苦八苦している集団となると、そもそも敵国の軍隊だとすら認識してもらえなかったようです。それならそれでいったい何の集まりなのか気になるところでしょうが、例えばなんらかの理由で隣国から亡命してきた難民集団とか……いえ、だとしても子供の割合が多すぎて無理があるのは変わりませんか。


 ともかく、現在のフケバトブ王国軍に帝国の民間人を攻撃する余裕など皆無。

 ヒラの兵卒からトップの王様まで総出で幼児のお世話にてんてこ舞いです。

 王国軍の大半を占める成人男性よりは、まだしも女子供のほうが警戒されにくいだろうとの打算も込みとはいえ、わたしの如き小娘が現地の町の方々に子守りの手を借りられないかの交渉役を務めざるを得なかったほどの混乱ぶりでした。


 我々はこうしている今も一応は帝都に向かって進軍中。

 心を鬼にして元敵兵だった子供達をそこらに放って進めば半日もかからず辿り着く道程ですが、明らかに自活能力のない年齢の幼子を放置するのは流石に罪悪感がありますし、それ以前にラメンティア様が彼らも一緒に帝都まで連れて行くよう厳命しているので逆らうわけにもいきません。



「帝国軍の皆さんの物資が潤沢で助かりましたよ、本当に……」



 帝都までの道沿いの町や村で都度お手伝いの人手を募り、子供達の食事の用意をお任せしたり、元々の大人用の衣服を素材に大量の子供服に作り直したり。

 一々そんなことをしていたものだから、侵攻は遅々として進みません。

 流石は精強無比で知られる帝国軍だけあって、鹵獲した潤沢な物資を対価としての交渉がスムーズに進んだのだけが数少ない救いだったでしょうか。



「ええと……これで全員にお洋服が行き渡りました? 迷子になった子もいない? それじゃあ皆さん、町の人達にちゃんとお礼を言いましょうね」


「「「うん、ありがとうございました」」」


「はい、よくできました。それじゃあ、次は半刻くらい歩いた先にあるはずの村まで歩いて、今日はそこで野営ですかね? おトイレに行きたい子は、無理に我慢しないで早めに近くの兵隊さんに言うんですよ?」


「「「はーい」」」



 その場の流れで行く先々の集落での交渉役なんて引き受けてしまったせいか、何故だかわたしが全体の進行管理みたいな仕事をする羽目になってしまいました。

 他の人達よりも見た目の年齢が近いおかげか、子供達もわたしの言うことは案外素直に聞いてくれますし、王国の兵隊さん達は歩き疲れた子をおんぶしたり抱っこしたりでかなりの気力体力を消耗しています。こういう役割分担も仕方のないことではあるのでしょうが……。



『おっ、ようやく追いついてきたか! サヤよ、二千人ほど追加だ。よきに計らえ』


「またですか、ラメンティア様!?」



 我々が侵攻初日に遭遇したのは、強大なる帝国軍全体からしてみれば総戦力の一割にも満たないごく一部。宣戦布告を受けてから僅か半日ほどで動員したという点を考慮すれば驚異的な数ですが、帝国上層部からしてみれば、その先鋒たる軍団は突然一切の連絡を絶って行方知れずになってしまった形になるわけで。


 そうなれば帝都で指揮を執っている皇帝さんや軍部のお偉いさんが、新たな戦力を編成して二の矢三の矢を次々と繰り出してくるのは自然な発想でしょう。その追加の軍団もラメンティア様が見つけ次第に幼児に変えてしまったので意味はない……いえ、子供のお世話で王国軍の進みは遅くなる一方ですし、完全に無意味ではないのかもしれませんけれど。



「サヤ殿、新たに増えた分の子供らの名簿ができました……」


「王様もご苦労さまです……うわっ、いよいよ万の大台に乗りましたか」



 おんぶしていた子にヒゲを引っ張られている王様が持ってきたのは、王国軍で面倒を見ている子供達の名簿です。なにしろ人数が人数なので、一人ずつ名前を聞き出して管理するのにも凄まじい労力を要します。


 いっそ普通に戦争したほうが、まだしも気楽だったかもしれません。

 帝都に近付くにつれ子供達の人数はどんどんと増え、衣食のお世話をするための時間も比例して増えていく一方。テントや寝袋は大人だった彼らが持参した物を使い回せましたが、野営の準備と撤収だけで半日仕事です。現地の民間人に助力を願うのにだって限界はありますし、帝都へ向けての進軍に費やせる時間は日増しに減る一方でした。


 ですが、ようやく。 



「あ……あれ、あの遠くに見えてきたのが帝都じゃないですか!?」



 本来ならば五時間そこそこで到着するはずの道程を進むこと約五日間。

 我々はようやくゴール地点であるウスラデカイ帝国の都へと辿り着いたのです。


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