19.神罰を落とそう!
そして数分後。
場所は先程までと同じ玉座の間。
さっきより増えた顔ぶれは、ラメンティア様がわざわざ王国各地から身柄を攫ってきた領主の皆さんだそうです。ご自慢の俊足であちこちの領地を走り回り、領主さん方がお住まいのお屋敷やお城に殴り込んで、相手が状況を理解する間もなくヒョイと担いできたのだそうで。
用意させた地図を頼りに駆け回り、一人あたり往復で十秒弱。
全部で十五人を攫ってくるまで三分間しかかかりませんでした。
ちなみに国内の領主は全部で十六人いるそうですが、欠席の一名はわたしの地元の領主さん。今頃、ブタに変わりつつある身体で必死に街道を走っていることでしょう。
「なっ、ここは王都の……!?」
「馬鹿なっ、私は屋敷にいたはず!?」
王都に来た直後のわたし同様、最初は皆さん高速で揺さぶられすぎて意識が朦朧としていたようですが、時間の経過に伴って自然と己が身に起きた異常事態に気付いたのでしょう。ですが、異常がそれだけなら比較的マシ。これから彼らに襲い来る災難に比べたら、いつの間にか王都に連れて来られた程度はなんということもありません。
「……諸君。混乱する気持ちは分かるが、どうか静粛に」
「こ、これは国王陛下! ご挨拶が遅れ申し訳ございません」
「誠に失礼ながら我々が何故ここにいるのか……陛下は何かご存知でしょうか?」
混乱しているとはいえ、流石は領地持ちの貴族の方々。
自らの上司たる王様が目の前に出てきたら、内心の動揺を押し殺してキチンと臣下の礼を取ったのは褒められるべき自制心。「静粛に」と言われたにも関わらず、あまり静かにできていないのはご愛敬ということで。
「諸君に伝えねばならぬことがある。信じ難いのは百も承知だが、これから言うことは全て真実だ。そう心して聞いて欲しい」
「は、はぁ、それはもちろん陛下のお言葉を疑うなど……」
王様の表情があまりにも悲壮なものだったせいでしょう。
ワケも分からず連れてこられた領主さん達も、どうやら愉快な話ではなさそうだと予感しているご様子。赤字が積もりに積もって国家の財政状況がとうとう破綻したのか、あるいは軍事力に天地の差がある大国から宣戦布告でもされたのか。
大体、そんな感じの想像をしていたものと思われます。もしその程度の災難だったら、彼らの心情もずいぶんと気楽だったのでしょうけれど。
「わ、我が国はこれから……こちらの御方、偉大なるラメンティア神に国の全権を献上し、そのご指導を賜れることに……なった。なりました。これは非常に光栄で栄誉あることなのだ、です……」
「はて、全権? ええと、陛下?」
「神というのは何かの比喩でしょうか?」
今にも泣きそうな王様に対し、事の重大さを理解しきれていない領主の皆さんは明らかな困惑顔。それは当然、言葉通りに呑み込むのは難しいでしょう。まあ仮に呑み込めずとも、これから無理矢理に受け入れさせられることになるわけですけれど。
『くかかかかっ、というワケで悪こそが神の中の神! 偉大なる悪神ラメンティアである! 領主共よ、我が手足となって馬車馬の如く働く権利をやろう!』
「なっ、いきなり何を無礼……な、がぁ!?」
『フンッ!』
あまりにも高圧的な物言いに対し抗議の声を上げようとした貴族さんが、セリフを言い終えるよりも早く頭にゲンコツを落とされて強引に沈黙させられました。辛うじて死んではいないようですが、この流れを見て同じように抗議できる胆力をお持ちの方はいらっしゃらなかったようです。
『神に逆らうと、このように神罰が落ちるわけだ。理解したな?』
神罰って、思ったよりフィジカル頼りなんですねぇ……。
痛みがリアルに想像しやすい分だけ、抑止力としてはかえって有効かもしれません。実際、ここから先は一気に話が進み始めました。




