ななじゅーなな
先輩方が交代で灰汁とりを体験され、パルム先輩が下準備された糸こんにゃくをメルティ先輩が鍋に入れて…。
「あとは落し蓋をして…」
ガシャンガシャンっとすごい音にビクッとしてしまった。
「あのなぁ…。そんなテンプレみたいなボケを二人もするか!?」
アトラ先輩が怒ってるから何かと思ったら…。パルム先輩とヴィオラさんが、鍋の蓋を床に落としたっぽい。
落し蓋…ね。
「あはははっ…」
「アルジェが壊れたのだ! 二人のせいなのだ!」
「いえ、そうではなくて…。あははっ…僕も初めて習った時に同じことを考えたので…。実行まではしなかったんですけど…」
「普通はやらんだろう。 二人は責任持ってその蓋を洗えよ!」
お二人は落とした蓋を洗いながらアトラ先輩と揉めてる。
「アトラ、言い方があるでしょ? 初めてなんだから!」
「そうですよ、先輩。優しくしてくれてもいいと思います」
「限度があるだろ…。パルムは先輩とはいえ、料理に関してならこちらのが先輩だからな?」
「普段からアトラは誰も先輩扱いしないけどねー。 で、結局落し蓋ってなんなの?」
「アルジェ…頼む。 もう面倒見きれん」
「はい、任されました。 落し蓋というのは煮込んでいる具材に直接乗るように蓋をしてしまうというもので、今回は専用のこういったものがあります」
見せたのは穴が空いた、サイズ変更も可能な落し蓋。当然、映り込みしない特別仕様。
「蓋なのに穴空いてるけど、いいの?」
「見ててくださいね」
実際に蓋をして見せて説明。
「こうすると具材が煮崩れしにくくなり、水分が減っても全体にしっかり味が染みるんです」
「鍋の中に落としてしまうから落し蓋…」
「その理解で正解ですヴィオラさん」
「色々と手間があるんだね」
「料理とはそういうものだ。普段からみんなが食べているものもそれなりに手間暇かかっているんだ。アルジェに感謝するんだな」
「「はーい…」」
「僕は楽しくてやってるので大丈夫ですよ。美味しいって食べてもらえるのが一番嬉しいですし」
「天使がいるわぁ…」
「これからもちゃんといただきますって言うのだ。アルジェに言うのだ!」
美味しいと言ってもらえるのが一番ですし…。
「いい香りがしてきた…。 いつもありがとう、アルジェちゃん…」
「はいっ! もう少し煮詰めたら完成なので、次はデザートの準備にいきましょう」
「「「デザート!?」」」
「ものすごく簡単なものですけどね」
「ではここで一旦休憩入ります! 休憩の間、配信には5期生のデビュー曲のMVを流しておきますので、そちらをご覧になりお待ちください。 みなさんも少し休憩してくださーい」
紲さんのナレーションに、先輩方も一旦座るなりして休憩。
スタッフの方が飲み物とかを出してくれた。
「音声も映像も一度止まっているからゆっくり休みなさい」
「アトラ、配信でしからなくてもよくない!?」
「あれはしかるでしょう…。アルジェちゃんが笑って和ませてくれて正直助かったわ」
「先輩達も僕と同じ事を考えられたんだと思ったらおかしくて…。ごめんなさい」
「謝らなくていいわよ。助かったんだから」
副社長ちゃんはもうアトラ先輩ではなくなってお疲れの様子…。
「アルジェちゃん…ごめんなさいね」
「いえいえ。僕こそごめんなさい。笑ってしまって…」
「いいのよ。私も本当にお料理はダメだから、失敗ばかりなの」
「でもヴィオラさんの切ってくれた人参、いいサイズでしたよ。きっと美味しく味がしみると思います」
「そうだといいのだけど…」
大丈夫です。僕もはじめは失敗ばかりだったし。
肉じゃがは火を止めて今は味を染みさせている最中。
食べる前にもう一度軽く温めればちょうどいいと思う。
「アルジェちゃん、デザートって何を作るのぉ…?」
「プリンです。混ぜて蒸したら冷やすだけなので本当に簡単なのですけど…」
「プリンってそんな簡単に出来るものなのぉ〜?私、甘いもの好きだから〜そうなら嬉しいのだけどぉ」
「はい。手間があるのは裏漉しするときだけですかね」
「うらごし…?」
「そろそろ休憩開けまーす! 大丈夫ですか?」
紲さんの声に、みなさんすぐに準備を始める。ほんとプロ。




