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引きこもりの僕が男の娘ヴァーチャルライバーになった話 ~スカウトされた大手事務所には〇〇しかいませんでした~  作者: 狐のボタン


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ななじゅーよん



エレベーターが止まったのは25階。

降りたところは窓すら何にもなく、薄暗い廊下みたいな場所で、鍵のかかった扉を二つも抜けてやっと窓のある明るい所へ出た。


「こちらの階にニューホープの事務所と今回手配したキッチンスタジオもありますので、この階に限ってなら自由に行動していただいて構いません。他の階への移動は許可できませんのでご了承ください」

「会員証あっても…?」

「申し訳ありません。そちらは商業エリアのみに限られたものですから、オフィスエリアに関してはなんの権限もありません。信じられないのでしたらそちらにあるエレベーターを利用しようとなさってみてください」

メルティ先輩はこちらにある別のエレベーターにカードを近づけたけど何も反応しないみたい。

あの会員証ってエレベーターを使う時にも必要なんだ…。ひろみ姉さんのマンションのキーカードと同じだ。


「閉じ込められた…」

「人聞きの悪い事を。貴女方の安全のためにそちらの代表がどうしてもと言うからこちらも特例として許可したのです。…お帰りの際にはしっかり地下駐車場へお送り致しますから」

「わかった…」

メルティ先輩は納得したのか、それ以上は何も言わなかった。僕ならメイドさんが怖くて何も言えないと思う。


一切ニコリともしないメイドさんは、淡々とこの階にある施設の説明をしながら案内してくれた。

この25階はニューホープだけのものだそうで、事務所やカフェとかサロン?もあるといわれて、まずはそのサロンに向かう。


「衣装やスタイリストも待機させてありますので、そちらで準備をしてください。終わり次第、別のスタッフがスタジオへご案内します」

「メイドさんはいなくなっちゃうのぉ?」

「別の仕事がありますので…」

メイドさんって忙しいんだなぁ…。



サロンって何かと思ったら、僕は紲さんと二人で個室へ案内された。部屋の中は、ドラマとかで見る楽屋みたいな感じ?

鏡があって、お化粧したりする人もいるのかもしれない。ヴァーチャルライバーの事務所なのに必要なのか?とか色々と疑問はあるけど、女の人しかいなかった会社だし、別に顔出ししてなくてもお化粧くらいはするか…とか色々と考えてしまった。


僕は紲さんも一緒だからいいけど一人だったら緊張してつらかったかも。このビル、なんか普通じゃなくて怖いし…。

「アルジェさん、契約書も確認しましたし、社長ちゃんにも確認しました。本当にギリギリで無茶を言われたそうなんですが、親会社からの要請なので社長ちゃんも断れなかったそうで…謝っておられました」

親会社とかあるんだ…。あの社長ちゃんでも頭の上がらない相手がいるってこと?怖すぎる。

「サインだけですよね? 大丈夫ですよ」

「いえ、それが…」

「失礼しますね〜」

部屋をノックする音に紲さんとの会話が止められ”後ほど詳しく説明します”と。何を言おうとしてたのかすっごく気になる…。


部屋に入ってきたのは、衣装ケースを手に持ったオシャレなお姉さん。

「あら、久しぶりね?紲ちゃんの担当の子って…」

「アルジェさんです。異動になったと言ってたけど、まさかここに居たとは…」

「衣装制作とか、そのプロモーションの撮影にもこっちのが都合がいいのよ〜」

「アルジェさん、こちら私の同期で元同僚の眞野です」

「眞野詩織よ、早速着替えましょうか。 サイズのデータはもらってたから大丈夫だとは思うけど…」

ケースから取り出され、広げられた衣装は凄く見覚えのあるもので…。アルジェの最近お披露目した新衣装がそのままリアルになったやつ!?



アッという間に服を脱がされて、ふわふわヒラヒラに…。髪までしっかりと銀色になった。かつらではなく、なにか謎技術みたいにスプレーで染められた。

この為にここ数ヶ月、髪を切らないように言われてたんだと初めて知った。


それにしても…まさかアルジェの衣装をリアルに着る日が来るとは。

「スレンダーだとは思ったけど、まさか本当に男の娘だったなんてね…。びっくりしたわ」

「眞野…」

「わかってるわ。これでもニューホープの社員なのよ?タレントに関する守秘義務くらい理解してるわよ。それにしても似合いすぎじゃない?アルジェちゃんがそのままリアルに出てきたみたいだわ…」

「ええ…絶対に似合うとは思っていましたが、予想以上でした。眞野の腕も良いんでしょうが…これは皆さん喜ばれそうです」

「衣装販売用のプロモーションに本人を起用したらだめ?」

「ダメです! 顔出しできないんですよ?」

「勿体ないわね…。うちのモデルより似合ってるのに。仕方ないわ、一日愛でるだけにしておくわ」

「撮影した場合、すべてチェックしますからね!」

「はいはーい」

なんかもうこの扱いにも少し慣れてきた…。会社でも基本は女の子っぽい服を着てるし。

タンスにそれしかないんだもんなぁ。実家から着慣れた普段着を持っていこうとしたのにこよみに止められて…。

業者の人も出入りするから普段から気をつけてないと駄目だとか言われて。

もう先輩たちにもバレてるのになんの意味があるのだろう?



着替えた後は眞野さんにスタジオへ案内してもらい、入った部屋の設備と、中にいる人の姿にビックリした。

だって…先輩方もみんなキャラの衣装そのままの姿だったから…。

「百歩譲って尻尾はわかるけど、顔映さないのにケモミミいる!? 正直キツくない?私のケモミミとか…」

「パルム先輩なんてまだ良い方なのだ! 身体に包帯ぐるぐる巻されたのだ…」

「ソフィリナはマミーだもんね…。エロ可愛いよ…?」

「そういうセリフはちゃんとこっちを見て言うものなのだ! もうお嫁に行けないのだ…」

「嫁に行くアテもないだろうお前は! それにくらべ我はカッコイイだろう?やはりドラゴン娘はこうでなくてはな!」

皆さんすごい…。キャラがリアルに出てきたみたい。特にドラゴン娘のマリー先輩は翼とか尻尾がゴツゴツしてて本物みたいだ。


見惚れてたら紲さんが説明してくれた。

「各タレントの衣装を公式に販売することになりまして、今回はそのお披露目も兼ねてるんですよ」

「今までは無かったんですか?」

「ええ、ファンの方が手作りした衣装でコスプレイベントにでておられたりとかはあったのですが、ずっと公式から出してほしいという要望は根強くあったので…。ようやく販売の目処が立ったところなんですけどね」

フィギュアドール用の小さなものとはまた違うもんね、どちらも作るのは大変そうだけど…。

再現度はどっちもすごく高いからプロってすごい。


「アルジェちゃん可愛い…もう持って帰りたい…」

部屋に入った僕に真っ先に気がついて、トテトテと寄ってきてくれたのはメルティ先輩。走ると耳と尻尾が揺れてるのリアルだなぁ。

「メルティ先輩もそのままメルティ先輩で素敵ですね。狐耳が似合っててすごく可愛いです」

「ほら…尻尾もふわふわなの…」

後ろを向いてくれて…確かに狐の大きな尻尾がふわふわと今も揺れてる。絶対柔らかいやつだ…。


「うう…こんな衣装着るってわかってたら痩せておいたのにぃ……」

「エセルはそれがいいんだって。 私のがキツイでしょ…。寄せようが何しようがキャラには遠く及ばなかったんだよ!?だれだよ、エルフは巨乳っていうイメージ作ったやつ!」

「別にそんなイメージないよぉ…。ピノだけでしょ…。しかもママに無理言って大きくさせたの自分でしょぉ〜」

「そうだった…キャラくらい盛ってやろうと思ったのが仇になるなんて」

すご…。エルフのお姉さんと猫耳のお姉さんだ…。



「うんうん。大丈夫そうね! 我ながらいい腕だわ」

眞野さんは皆さんの衣装を見て満足げ。全部一人で作られたんだろうか…。

この中だったら僕の衣装が一番普通に市販されてそうな部類。

絶対に売ってないのはソフィリナ先輩のマミー姿とドラゴン娘のマリー先輩かな。

マミーの包帯っていうなら薬局とかにありそうだけど、装飾とかもあるから特別っぽいし。


パルム先輩は大きなケモミミと尻尾に、ゴシックな衣装は最近お披露目された新衣装。

ピノ先輩はちゃんとエルフなとんがり耳もついてて、結構露出のあるドレスみたいな服。ちょっと目のやり場に困るくらい。

エセル先輩が一番露出があって、なんかもうすごい…。


「これ結構きつい…胸ゆるめたらだめ?形崩れそう…」

「ヴィオラは男の娘なんだから駄目でしょ。 その胸私に分けて」

「ピノ先輩は…ああ…」

「憐れむような目で見るな! くっそ……ってアルジェちゃん!?」

ピノ先輩の声にみなさんが一斉にこちらを見てくるから、恥ずかしいやら緊張するやらで…。


「…すっご…アルジェちゃんがアルジェちゃんだ」

「ピノ、語彙力どこやった。 でも気持ちはわかる」

「アルジェのアルジェがいるのだ!」

「ソフィリナお前もか!」

「我といい勝負だな! ふはは!」

「いってーのだ! マリー、羽が邪魔なのだ! 動くと当たるからはずせなのだ!」

「なにおー! ドラゴンのアイデンティティを!」



揉めてるソフィリナ先輩とマリー先輩を残し、みなさん集まってこられて…。

「うわーうわー可愛いねぇ〜! アルジェちゃんだぁ」

「可愛いでしょ…うちのアルジェちゃんは…」

「メルティ先輩がドヤるのもわかる気がします。写真撮ってリスナーのみんなに自慢したくなりますし」

「それはだめ…!」

「わかってますって。でも身内だけで記念撮影くらいしません?折角ですし」

パルム先輩の一声にみなさんノリノリで…。


……記念撮影っていうからみんなで一緒に撮るかと思ったのに…。

「どうして僕だけ撮られてるんですか!?」

「「まあまぁ…」」

「よいではないかぁ〜」

「待受にしよ…」

えー……。

近くに来てくれて気がついたのは、エセル先輩もピノ先輩も衣装の下に肌色の全身スーツみたいなのを着てた。元の肌色に近いから近くで見ないとわからないくらい。どちらにしろ目のやり場に困るのは変わらない。セクシーがすぎるのでは?

きっとファンの人は喜びそう。


あれ? そういえばこよみはどこいったんだろう。服のデザインしたのこよみだから、気になると思うんだけど…。

キョロキョロしてたら、ガラス張りの向こう…スタッフさんのいるところでガラスに張り付いてた…。

こちらに来るの許されなかったんだ…。








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