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引きこもりの僕が男の娘ヴァーチャルライバーになった話 ~スカウトされた大手事務所には〇〇しかいませんでした~  作者: 狐のボタン


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ろくじゅーよん



会社に住むために引っ越す事が決まり、必要最低限のものだけ私物を運んだ。

服はもう此方にあるし、持ってきたのはパソコン関係の物とか、お母さんが持たせてくれた包丁と鍋くらい。まるで嫁入り道具だよね…。でも実際に使うから有り難いのだけど…。


引越し業者に依頼するまでもないくらいの量だったから、休みの日にひろみ姉さんがお父さんの車を借りて手伝ってくれたから一日で引っ越しも終わった。

「ありがとうひろみ姉さん」

「かまわんさ。でもな?時々でいいからうちにも顔を出してくれよ」

「うん。そうするよ、先輩が姉さんと同じマンションに住んでるから、帰るときに同行してくれるって言ってくれたし」

「そうか。まだお前は未成年だからな、しかもその見た目だ。私としてもその方が安心だ」

あまり嬉しくない評価だけど、実際に狙われたんだから何も言えない…。


「それよりこよみの説得はできたのか?」

「ううん…。ひろみ姉さんもいないのに、僕まで家を出ちゃうから寂しいみたいで…。お母さん達が説得してくれてるけど、拗ねてるみたい。メッセージに返事もくれないし」

「まぁ、あいつもいい加減兄離れする時期だろう。何時までも兄にベッタリなのもな」

そうなんだよね…。両親もそれがあるからこそ僕の引っ越しに賛成してくれところもあるし。

早くにひろみ姉さんが家を出た上に、両親は共働きだったから二人でいる時間が多かった分一緒にいるのが当たり前になっているのかもしれない。


「お前が早く彼女でも作れば落ち着くんじゃないか?」

「彼女とかよくわからないし、難しいかな…。それに逆効果になりそうな気もする」

「…癇癪起こして暴れそうではあるな」

だよね…。大切な家族で妹だからこそ心配になるよ…。


「ああ、それとな」

「うん?」

「うちの仕事用にと渡してあったPCだが、よかったらそのまま使うといい。あって無駄にはならんだろう」

「いいの?ひろみ姉さんの会社の仕事辞めちゃうのに」

「あれは私の私物だからな。新しいのを買って余っていたやつだから好きにしたらいい」

「ありがとう。そういうことなら…」

ゲームをしたりとかには使わなくても、動画の確認とかに使えるし、あって困りもしないから嬉しい。


「ま、こよみの事は私も気にしておくから、お前は仕事をがんばれ。忙しくなってきたんだろう?」

「うん。案件が増えてきたし、レッスンも増えていくから」

「まるでアイドルだな?」

そう言って笑ったひろみ姉さんは手を振って帰っていった。



さてと、部屋に運んだPCのセッティングしなきゃ。

会社には最新機材の揃った配信部屋があるから、自室で配信する事はまず無いだろうけど、何かのきっかけで使う可能性もあるからいつでも使えるようにはしておきたいし。


部屋に戻って荷物の整理と、PCのセッティング。

他は携帯ゲーム機とか、少量の本くらい。必要なものはみんな揃ってる部屋だし、こんなものだよね。

キッチンにはお母さんのくれた包丁と鍋もおいておく。いつも使い慣れていたものと同じやつだから嬉しい。

こちらに正式に引っ越すことになって一つ変わったのは、マネージャーの紲さんが部屋に泊まらないことだろうか。

元々紲さんも会社に自室があるから近くにはいる。

それにこの部屋の鍵は持ってるから、用事があれば来てくれるし。もう一人鍵を持ってるのは社長ちゃん。ま、これは当然だよね。このビルのオーナーは社長ちゃんだし。



片付けも終わり、休憩していたら来客が…。

誰だろう?紲さんなら鍵持ってるはずだから態々チャイム鳴らさないよね。


対応に出ると、まさかの紲さんだった。

「アルジェさん、お引っ越しは済みましたか?お手伝いはいらないと言われていたので…」

「はい。本当に大した荷物でもなかったですし、部屋までは姉も運ぶのを手伝ってくれて、もう片付けもすみましたから」

「そうでしたか。 お疲れのところ申し訳ありませんが、お時間があればこれから打ち合わせよろしいでしょうか?少し急ぎのものがありまして」

「もちろんです。鍵持ってるんですから入っ来てくれれば…」

「いえ。正式にこちらに引っ越された以上、こちらはアルジェさんのご自宅でありプライベート空間です。一時でも仕事を忘れたい、のんびりしたいなんてこともある筈です。合鍵は、あくまでももしものために預かっているに過ぎませんから」

そっか…部屋に泊まらなくなったのもそういう意図が。

「ありがとうございます。気を使って頂いて」

「いえいえ、打ち合わせは会議室に行きますか?キッチンエリアも空いてましたけど…」

「お茶淹れますから入ってください。それも駄目ですか…?」

「アルジェさんの許可が頂けるのでしたら…」

そんなに堅苦しく考えなくても…と思うけど、気を使ってくれているのだから黙っておこう。


紲さんを招き入れて、お茶とお菓子を用意。

そのまま打ち合わせへ。

「以前に少しお話したシラチャソースのメーカー様とのお話が先程正式に決まりましたよ」

そう言って紲さんは僕がやるべきお仕事の内容をPCで見せてくれた。

「限定パッケージの発売ですか」

「ええ。そのため、アルジェさんにはパッケージ写真などの撮影していただかなくてはいけないので、そちらの予定が組んであります」

「わかりました。…このオマケでカードと、小物がつくっていうのは…?小物ってなんですか?」

「こちらはフィギュアドール用の物になります。ミニチュアのシラチャソースだったり、フライパンやおお料理ののった皿、カトラリー等ですね。アルジェさんの作られたカレーが小物で再現されますよ」

すごっ…。あの時に撮影した写真からって事だよね?確かに紲さんは何枚も撮影してたけど…。まさかこんな形で活用されるとは。


「後はこちら、アルジェさんのフィギュアドールの新衣装になります」

「少し前にお披露目した衣装ですね。もうできてるんですか?」

「はい。市販用はあっという間に予約定数が埋まってしまい、今は再販の調整中になります」

新衣装はデフォルトのシンプルな衣装と違い、ふわふわひらひらした…それこそイベント初日にリアルに着ていたような衣装。それが完璧に再現されてる…。

お安い買い物でもないのに、予約が埋まるのもすごいな。実際先輩方のも同じようなものらしいし…。


「後はレッスンについてですが、同期のお二人とのデビューシングルの曲とダンスが仕上がりましたので、そちらのレッスンを重点的にして頂きます」

そうなんだよね…。MVも作るからダンスも覚えなきゃいけなくてすっごいプレッシャー。

「講師の方からも覚えが早くて教えがいがあると報告されてますのでご心配されずとも大丈夫ですよ。ダンスと歌は別撮りですし…」

「そうなんですか?」

「ええ。ライブイベント等になりますと同時にこなす必要がありますが、まだ少し先の話ですから」

ああ、ニューホープが巨大ドームを貸し切って、年に一度の一大イベント…。当然僕も参加するからそれまでには何とか…。

会場限定のフィギュアドールやグッズとかも多数あるから、それらのお仕事もあるし、ここから先はしばらく過密スケジュールだなぁ。

それもあったからひろみ姉さんの会社のお仕事は辞めたわけだし…。




「新しいスケジュールはスマホの方へ送っておいたので、いつでもご確認ください」

「ありがとうございます。忘れないように気をつけます」

「私からもご連絡しますから、あまり気を張らないようにしてくださいね。私達マネージャーはその為にいるんですから」

「本当にお世話になります」

一人だったら把握できなくてパニックになりそう。


打ち合わせが終わって部屋を出ていく紲さんと一緒に僕も手荷物をいくつか持って部屋を出る。

「どこか行かれるのですか?買い出しなら私が…」

「いえいえ。キッチンで料理をしようかと思ってるだけなので。これは自前の包丁です」

剥き出しで持ち歩けないからケースに入れてから鞄へと仕舞って持ってきた。


「なるほど。皆さんもアルジェさんの作られるお料理を毎日楽しみにしておられますからね」

「作ってる側としては嬉しいですよ。作り甲斐がありますから」

「本当にニューホープで一番嫁にしたい子に選ばれただけのことはありますね」

あったなぁ…。ピノ先輩が個人的にSNSでアンケートを取ってたんだけど、まさかの一位だったと教えてもらった。ちなみにご本人は最下位だったと泣きつかれたっけ…。

妹にしたい人の一位がメルティ先輩で、姉にしたい人の一位はパルム先輩だった。お母さんにしたい一位はエセル先輩で、妙に納得してしまったっけ。


「あ、そうでした! もう一つご報告がありました」

「はい?」

「社長ちゃんから、実写でのお料理配信の許可が出ましたよ」

「本当ですか?良かったぁ」

パルム先輩達から是非やろうって誘ってもらってたんだけど、社長ちゃんの許可が無いとできなかったから。



「場所や機材はこちらで厳選したものをご用意致します。映り込みとかの心配のないもので揃えますから、使い慣れない物もあるかもですがご了承ください」

「そうなんですね…」

「やはり使い慣れたものがいいですか?」

「ちょうど母から引っ越し祝にと包丁や鍋を持たしてもらったので、使いたかったなーと」

「嫁入り道具ですか?」

僕も思ったけど。実際に言われちゃうと複雑だ…。









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