ごじゅーに
スコープを覗き、巨大ゾンビへと向かって引き金を引く。
大きな音はしないけど、あれだけ巨大なゾンビが後方へと吹っ飛んで倒れた。
まさか一発で倒せるとも思えないけど、どうなんだろう?
案の定、何事もなかったかのように起き上がってきた。
でもこれ…。ノックバックがあれだけ大きいなら、ダメージが少ないとはいえ後退させるだけでも意味があるのでは?
先輩達が戦う時間を稼ぐためにも、七体いる巨大ゾンビを順番に撃っていく。
相変わらず起き上がってくるから、あまりダメージそのものはないのかもしれない。
コメントをちらっと見ると、よく観察したら弱点があるかも?っていうのが目についた。
「なるほど、弱点ね。ありがとう。探してみるね!」
せっかくズームできるんだからじっくり見てみるのも有りだよね。
大きな敵っていうと、ゲームなら弱点が光るとか、後は目が弱点なんて可能性もあるけど…。
ただ、今回散々見慣れたゾンビと違いがないんだよね…。本当にただただ大きいだけ。
「全然わかんない…。一か八か目とか撃ってみていい?」
コメントのみんなもそれらしい弱点はわからないって。
僕と同じように目かも?って意見があるくらい。
いくら巨大ゾンビとはいえ、目をピンポイントで狙うというのは難しい。
相手も動いてるし、距離がある分タイムラグも発生する。
何度か狙って外し、ようやく当たったと思ったらとんでもない事が起きてスコープから目を離してしまった。
「爆発したよ!?すぷらったーだよ!!」
ゲームとはいえ結構な映像が流れた気が…。
コメントにも”エグい””ぐろい”なんてのが流れてるくらいだ。
普段からFPSゲームに慣れている先輩方なら気にならないのかもだけど…。
「ナイス!! アルジェちゃん」
「他のもお願い!」
下で戦っている先輩達から声がかかるけど、それどころじゃ…。
”爆発したように見えたけど、大量のゾンビじゃなかった?”ってコメントが。
「もしかして目を撃つと小さいゾンビに分かれちゃうってこと?」
”もう一度撃ってみて。確認するから”
と言われて、仕方なくまたスコープを覗く。
今度は二発で撃ち抜けて、僕もよーく見てみた。
「うわ…ほんとだ!」
飛び散った破片だと思ってたのは全部小さなゾンビで。
「メルティ先輩! 目を撃って巨大ゾンビを倒すと大量の小さなゾンビになってしまうんですけどどうしましょう!?」
「そっちのが倒しやすいから撃てるなら撃っちゃって…。でも増えすぎないよう気をつけてくれると助かる…」
「わかりました!」
ここから戦況を見つつ、先輩方に余裕が出来たら撃つ。
それまではノックバックさせておくに留めたほうがいいね。
でも、なにも巨大ゾンビを狙っていたのは僕だけではないわけで…。
当然、他の人も狙う場所というのは似たような位置を弱点と予想する。
結果、残り五体いた巨大ゾンビが一斉に爆散。凄まじい数のゾンビが溢れかえった。
なんとか援護しようとするものの、数が多すぎる…!
一気に前線が押し戻されてるのはどうしたら…。
アルザード達も頑張ってくれてるけど数が多過ぎて焼け石に水状態。
援護射撃をしながら、どうしようかも悩んでいたら嫌な声が響き渡った。
ゾンビのグォォ…っていう唸り声が。
波が引くようにゾンビの群れが引いていき、先輩達も何が起きたかわからずといった様子。
そんなみんなの目の前で、あり得ないことが起こり始めた。
ひと塊になるように集まったゾンビは気持ち悪いうねり方をして、まさかの姿に。
「警戒して…! 不用意に近づかないで…」
メルティ先輩の声にみんなも動かず。
巨大なドラゴンゾンビへと姿を変えた敵は、ボロボロの翼を羽ばたかせて空へと飛び上がり、拠点内の先輩達が集まるところへ急降下。
咄嗟に撃ちはしたけど、大したダメージにはならなかったみたい。
先輩達は!?敵の影になって見えない!
僕を含め、援護のためにと高い位置に陣取っている遠距離組から攻撃がくり返されるも悠々と飛び続けるドラゴンゾンビ。
旋回したドラゴンゾンビは少し距離を取るとまたUターンして真っ直ぐ拠点へとむかってくる。
ちょうど僕の真正面だから、スコープを覗き、ドラゴンゾンビの顔を狙う。
何発か撃ち込むも怯みもしない。しかもまだまっすぐこっちに向かってくる!?
「アルジェちゃん逃げて!!」
誰の声がわからなかったけど、その声を最後に見えていた景色がグルンっと回転。
あとは真っ逆さまに落ちていく…。
空だけは星がキラキラとやたらキレイだった。




