ラムちゃんのふわふわデー
ここはふわまるずが暮らす、ふわまるタウン。
今日は、なんだかぽかぽかした空気が漂っています。
おやおや、あの子はいったい何をしているのかな?
ラムちゃんは、今日も特に予定がありませんでした。
でもそれで、ぜんぜんかまいませんでした。
「ふわ~……」
広場のまんなかで、ラムちゃんはのんびり空を見上げました。
雲がゆっくり流れています。
「あの雲、ふわふわだな~……」
しばらくして、ポチが走ってきました。
「ラムちゃん、何してるの?」
「……くもをみてた」
「雲?」
「……あの雲、綿あめみたい」
ポチは空を見上げました。
「……ほんとだ」
「おなかすいてきた」
「雲見てておなかすくの!?」
「……うん、すく」
ふたりは、ひーくんのお店へ行きました。
「ひーくん、綿あめある?」
「綿あめはないけど、ふわふわのパンケーキならあるよ!」
「「それにする」」
ふたりの声が重なりました。
パンケーキは、ふわふわでした。
ラムちゃんはひとくち食べて、目を細めました。
「……ふわふわ」
「おいしい?」
「……ふわふわ」
「それしか言わないの?」
「……ふわふわにしか言えない」
ひーくんが嬉しそうに笑いました。
パンケーキを食べ終わって、ラムちゃんはまたふわふわ歩きはじめました。
ポチがついてきます。
「ラムちゃん、次どこ行くの?」
「……さんぽ」
「どこまで?」
「……きもちいいところまで」
「それ、どこ?」
「……あるいてたらわかる」
ラムちゃんのさんぽは、ゆっくりでした。
花屋のまえで立ち止まって、お花のにおいをかいで。
「……いいにおい」
橋のうえで立ち止まって、川の音を聞いて。
「……いい音」
坂道のとちゅうで立ち止まって、風に吹かれて。
「……きもちいい」
ポチはそのたびに立ち止まって、一緒に感じました。
言われてみると、たしかに全部よかったのです。
やがてふたりは、ライくんの畑のそばまで来ていました。
ライくんが水やりをしながら、顔を上げました。
「あれ、ラムちゃんとポチ。どこ行ってたの?」
「……さんぽ」
「どこまで?」
「……ここまで」
ライくんは笑いました。
「じゃあ、少し休んでいく?」
「……うん」
三人は畑のそばに並んで座りました。
風がふわっと吹いて、葉っぱがゆれます。
日差しがぽかぽかして、あたたかい。
ラムちゃんはしばらくして、ぽつりと言いました。
「……ここが、きもちいいところだった」
「ここに来るつもりだったの?」
「……きてみたらわかった」
ポチはなんとなく笑いました。
「ラムちゃんって、なんかすごいね」
「……ふわっとしてれば、ふわっとたどりつく」
「それ、どういう意味?」
「……わからない」
三人はそのまま、しばらく何も言わずにそこにいました。
風の音と、水の音と、遠くの鳥の声だけが聞こえていました。
それで、じゅうぶんでした。
ふわまるタウンには、ふわっとしている子がいます。
ふわっとしていると、ふわっといい場所にたどりつくことがあります。
—おしまい—




