ギンタのきかなかったひ
ここはふわまるずが暮らす、ふわまるタウン。
今日は、広場にのんびりした空気が流れています。
おやおや、あの子はまた、ヘッドフォンをしていますね。
ギンタは、今日も音楽を聴いていました。
ヘッドフォンをつけて、少しだけ体を揺らしながら、広場のベンチに座っています。
世界は音楽でいっぱいでした。
そこへ、ポチが走ってきました。
「ギンタ!」
「……」
「ギンタってば!」
「……」
ポチはギンタのまえに立って、大きく手を振りました。
ギンタはようやく気づいて、ヘッドフォンを片耳だけ外しました。
「あ、ポチ。なに?」
「今日みんなでひーくんのお店でごはん食べるんだけど、来る?」
「うん」
「じゃあお昼に広場に集合ね!」
「うん」
ギンタはまたヘッドフォンをつけました。
お昼になりました。
広場にみんなが集まってきました。
ポチ、ライくん、ミーちゃん、ころん、ルナ。
でも、ギンタがいません。
「ギンタ、来ないね」
「呼んできたんだけど」
ポチは首をかしげました。
ギンタを探しに行くと、さっきと同じベンチで、同じように音楽を聴いていました。
「ギンタ!広場に集合って言ったじゃん!」
ギンタはヘッドフォンを外しました。
「え?」
「ごはん!みんな待ってるよ!」
「……ごはん?」
「そう!今日みんなでひーくんのお店でって、さっき言ったじゃん!」
ギンタはしばらく考えました。
「……ひーくんのお店、今日お休みなんじゃなかった?」
「え?」
「そう聞いた気がする」
「誰から!?」
「……誰だっけ」
ポチはひーくんのお店へ走りました。
ひーくんはエプロンをつけて、元気よくお鍋をかき混ぜていました。
「ひーくん!今日お休みじゃないよね!?」
「え?やってるよ!今日はシチューだよ!」
「よかった……」
広場に戻って、ギンタに言いました。
「ひーくんのお店、やってたよ」
「あれ、そうなんだ」
「誰からお休みって聞いたの?」
ギンタはまた考えました。
「……聞いてないかも」
「じゃあなんで!?」
「なんとなく、そんな気がした」
みんなはしばらく静かになりました。
「なんとなく……」
ポチがつぶやきました。
ライくんが穏やかに言いました。
「まあ、ギンタが来てくれればいいんじゃないかな」
「そうだよ!行こう行こう!」
ルナが体を揺らしながら言いました。
ひーくんのお店に着くと、シチューのいいにおいがしました。
「来た来た!今日は多めに作ったよ!」
「またーーー!」
みんなが笑いました。
ごはんを食べながら、ポチがギンタに言いました。
「ギンタ、ヘッドフォンしてると、ほんとに何も聞こえてないの?」
「うん」
「じゃあ、次から大事な話のときは外してね」
「うん」
ギンタはそう言って、シチューをひとくち食べました。
「……おいしい」
それだけは、ちゃんと聞こえているようでした。
ふわまるタウンでは、ギンタに何か伝えるときは、まず目の前に立つことが大事です。
「あまり、みんなの声が聞こえてないけど、まっいいか……。シチュー、おいしいし」
—おしまい—




