ユキとルカのうたがっせん
ここはふわまるずが暮らす、ふわまるタウン。
今日は、広場のほうから歌声が聞こえてきます。
おやおや、ひとりじゃなさそうですよ?
ユキとルカは、歌仲間でした。
どこでも歌って、いつでも歌って、歌うことが大好きなふたりです。
ただ。
「ねえルカ、わたしの歌ってどう思う?」
「すてきだよ!」
「ルカの歌は?」
「たのしいよね!」
ふたりはにこにこしていましたが、実はどちらも、心の中で思っていました。
わたしの方が、うまいんじゃないかな。
その日の午後、ユキが言いました。
「ねえルカ、うたがっせんしない?」
ルカは目をきらきらさせました。
「するする!」
「じゃあ広場で」
「審判は?」
「……誰かに頼もう」
審判を探しに行くと、ぽかりがカフェの前でのんびりしていました。
「ぽかり、うたがっせんの審判をやってほしいんだけど」
「え、私?」
「お願い!」
「……まあ、いいか」
ぽかりは、のんびりと引き受けました。
うわさを聞きつけて、みんなが広場に集まってきました。
ポチ、ライくん、ジロウ、ミーちゃん、ころん。
「うたがっせんだ!」
「どっちが勝つかな」
「たのしみ~」
まず、ユキが歌いました。
マイクをぎゅっと持って、胸を張って、元気いっぱい。
みんなはしばらく静かになりました。
ポチがそっとライくんに耳打ちしました。
「……今日も音、あってない」
「……うん」
「……でも元気はある」
「……うん」
ユキが歌い終わりました。
「どうだった!?」
「よかった!」
みんなが拍手しました。
ぽかりはメモに何か書きました。
次に、ルカが歌いました。
目をとじて、楽しそうに、のびやかに。
ユキよりは音が合っていましたが、途中で歌詞を忘れて、ハミングになりました。
「んんん~♪んんん~♪」
でも、気持ちよさそうでした。
ルカが歌い終わりました。
「どうだった?」
「よかった!」
みんながまた拍手しました。
ぽかりはまたメモに何か書きました。
「「どっちが勝ち?」」
ふたりが同時に聞きました。
ぽかりはしばらく考えました。
「……ユキちゃんは、元気がありました」
「うん!」
「……ルカちゃんは、気持ちよさそうでした」
「うん!」
「……どっちも、よかったです」
「「そういうことじゃなくて!」」
ふたりはしばらくぷりぷりしていました。
でも、みんなが「もう一曲聴きたい!」と言いはじめました。
「「え?」」
「だってたのしかったから」
ポチが言いました。
「どっちが勝ちかより、また聴きたいって思ったよ」
ユキとルカは顔を見合わせました。
しばらくして、ルカが言いました。
「……じゃあ、一緒に歌う?」
「……それ、いいかも」
ふたりは並んで、もう一曲歌いました。
音はやっぱり、ところどころはずれていました。
歌詞も、途中でばらばらになりました。
でも、なんだかとても、楽しい歌になりました。
みんなが体を揺らして、ころんが踊りはじめて、ジロウがうれしくて転がりはじめました。
歌い終わって、ユキが言いました。
「……勝負、どっちが勝ったんだろう」
ルカは少し考えてから、言いました。
「……わからないけど、たのしかった」
「それでいいか」
—おしまい—




