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ふわまるずのおはなし2  作者: 空野 翔


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2/12

ちあきのうんどうかい

ここはふわまるずが暮らす、ふわまるタウン。


今日は、広場にいつもと違う空気が流れています。


おやおや、なにやら準備をしている子がいますよ?




ちあきは、キックボードを丁寧に拭いていました。

ヘルメットをかぶって、ひじあてをつけて、ひざあてもつけて。


「よし」


安全装備は、完璧です。


「ちあき、何するの?」


ポチが覗き込みました。


「うんどうかい」

「うんどうかい!?誰と?」

「……ひとりで」


ポチはしばらく考えました。


「ひとりのうんどうかい?」

「秋だから」

「……そっか」



ちあきのうんどうかいは、こんな内容でした。


一、キックボードで広場を三周する。

一、坂道をゆっくりおりる。

一、橋をわたる。

一、花屋のまえを通って帰る。


「……それだけ?」

「十分だよ」


ちあきはゆっくりうなずきました。




まず、広場を三周。

ちあきはキックボードに乗って、ゆっくり、ゆっくり進みました。


ポチが横で走りながら言いました。


「もっとスピード出せるんじゃない?」

「これでいい」

「でもチーターじゃん」

「ゆっくりがいいの」


ポチはそれ以上言いませんでした。




三周終わりました。


「つぎ、坂道」


ちあきはキックボードを押しながら、坂道のてっぺんへ。

ゆっくり、ゆっくり、おりていきます。



そのとき。

コロコロコロ――。


「いっくよーーー!」

ジロウが勢いよく転がってきました。


「わあっ!」


ちあきはとっさにキックボードごと、道のわきへ避けました。


「ジロウ!!」

「ごめんーーー!」


ジロウはそのまま坂道をくだって、広場のほうへ消えていきました。




ちあきは、しばらくその場で深呼吸しました。


「……びっくりした」

「大丈夫?」


ポチが駆け寄ってきました。


「大丈夫。ヘルメットあるから」


ちあきはヘルメットをぽんと叩きました。


「つぎ、橋」




橋をわたるとき、風が気持ちよく吹いてきました。

川がきらきら光っています。


ちあきはキックボードをゆっくり止めて、しばらく川を見ました。


「……きれいだね」

「うん」


ポチも並んで川を見ました。


葉っぱが一枚、川の上をくるくる流れていきます。


「秋だね」

「うん」




最後に、花屋のまえを通りました。


ココナが声をかけてくれました。


「ちあき、どこ行ってたの?」

「うんどうかい」

「え!?うんどうかい、ここらへんでやってたの?」

「広場と坂道と橋」

「……小さいうんどうかいだね」

「ちょうどいい大きさだよ」


ちあきはそう言って、キックボードをゆっくり進めました。




広場に戻ってきて、ちあきはキックボードを丁寧に止めました。


ヘルメットを外して、ひじあてを外して、ひざあても外して。


「……おわった」

「お疲れ様!どうだった?」


ポチが聞きました。


ちあきはしばらく考えてから、言いました。


「楽しかった」

「それだけ?」

「十分だよ」



空が高くて、風がひんやりして、気持ちのいい秋の午後でした。


チーターだからって、速くなくていい。


キックボードに乗ってるからって、別に速くなくていい。


自分のペースで、ゆっくり進めばいい。


まっいいか。



—おしまい—


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