イザベラのとくいなこと
ここはふわまるずが暮らす、ふわまるタウン。
今日は、ルミエのお店のまえに、なんだかきれいな飾りつけが増えています。
おやおや、誰がやったのかな?
イザベラは、おしゃれが得意でした。
毛並みを整えるのも、色を合わせるのも、飾りつけをするのも、ぜんぶ得意でした。
でも、それをあまり人に言いませんでした。
得意なことは、黙ってやるものだと思っていたのです。
その日の朝、ルミエが困った顔をしていました。
「お店のショーウィンドウ、なんか寂しいのよね」
「そう?」
イザベラはショーウィンドウを見ました。
帽子が一つ、スカーフが一本、小物がいくつか。
並んではいますが、たしかに、なんとなく寂しい。
「……少し、やってみてもいい?」
「え?いいの?」
「気に入らなかったら元に戻すから」
イザベラはお店の中を見て回りました。
帽子の色、スカーフの質感、小物の形。
頭の中で、ぱぱっと並べ方が浮かびます。
「これをここに、これはこっちに……」
しばらくして、ショーウィンドウが変わりました。
ルミエが見て、目をまるくしました。
「……すごい」
「どう?」
「ぜんぜんちがう!なんでこんなにきれいになるの?」
イザベラは少し照れました。
「色を合わせただけよ」
「そんな簡単じゃないよ!」
そのとき、通りかかったポチが立ち止まりました。
「わあ、きれい!」
「そうでしょ!イザベラがやってくれたのよ!」
「えっ、イザベラが!?」
ポチがイザベラを見ました。
イザベラはすました顔をしていましたが、耳が少し赤くなっていました。
うわさはすぐに広まりました。
ぽかりがやってきました。
「イザベラ、うちのカフェもお願いできる?」
「カフェ?」
「なんかテーブルの上が寂しくて」
「……見てみるわ」
ぽかりのカフェに行くと、たしかにテーブルの上が寂しい。
イザベラはルミエのお店から小さな花びんを借りてきて、ドライフラワーを一本さしました。
「えっ、これだけ?」
「そう、これだけ」
でも、テーブルがぐっと雰囲気を増しました。
「……すごい」
ぽかりがぽわぽわした顔でうなずきました。
次にサクラがやってきました。
「イザベラ、ミーちゃんの部屋も……」
「ちょっと待って、順番に」
イザベラはそう言いながら、なんだか楽しくなってきていました。
夕方、レオくんがやってきました。
「イザベラ、今日すごく忙しそうだったね」
「そうね」
「楽しそうだった」
イザベラは少し考えてから、言いました。
「……楽しかったかも」
「得意なことって、やっぱりいいよね」
レオくんはたてがみをなでながら言いました。
「……あなたもね」
「ぼくのは、たてがみだけど」
「それで十分よ」
帰り道、イザベラはふわまるタウンを見回しました。
ルミエのショーウィンドウ、ぽかりのカフェのテーブル。
ほんの少し変わっただけなのに、町がすこしだけ、きれいになった気がしました。
得意なことは、黙ってやるものだと思っていたけれど。
誰かのためにやるのも、悪くないかもしれない。
—おしまい—




