Ch6- Gaspards./ガスパール家(4)
待機部屋に戻る前に、彼女は一度足を止め、表情を整えた。さっき起きた何かのせいで手足は重く、頭痛もまだ残っている。それでも、どうにか平静を装った。
このクソ漫画は、時間が経つほどどんどんややこしくなっていく。自分の知る原作の流れは、すでにずれ始めていた。まだ一日しか経っていないのに。カエレンという人間は原作には出てこなかった。少なくとも、エイミーが読んだ225話分には登場していない。今の時点は152話。つまり、残る知識はおよそ70話分。あまりにも少ない。それなのに、このペースで変化が続けば、その大部分さえすぐに役に立たなくなるかもしれない。
いちばん厄介なのは、エイミーにはそれをどうすることもできない点だった。なぜなら、変化を引き起こしているのはほかでもない彼女自身なのだから。カエレンがここにいる理由も、おそらくエイミーが自分の能力を予見だと申告したせいだ。
そして、さっきの会話。彼は遠回しどころか、ほとんど隠す気もなく、エイミーとザイドを近づけようとしていた。
ここまでくれば、もう確定だ。彼の狙いは、明らかに自分だ……。
「適応するか、死ぬか」エイミーは自分に言い聞かせるように囁き、扉を押し開けた。待っている1年生たちのもとへ戻りながら、次に何が来ても対応できるよう気持ちを固める。
[ずいぶん大げさですね。まあ、完全に的外れでもありませんが]
待機場所へ戻ったエイミーは、目の奥で脈打つ頭痛を抱えながらも、落ち着いた表情を崩さなかった。そのまま部屋の隅へ移動し、柱にもたれて短く目を閉じる。さっき見えたもの――あるいは何だったのかもわからないもの――のせいで、思った以上に消耗していた。何時間もパソコン画面を見続けたあとに似ている。ただし、その10倍くらいひどい。
[大丈夫ですか?]
肩掛け鞄の中から、本が低く尋ねる。
「大丈夫じゃない」エイミーはほとんど聞こえないほどの声で返した。「今のは……きつかった」
[休めるうちに休んだ方がいいでしょう。今日の予定は、まだまだ終わりそうにありません]
それには反論できなかった。エイミーは柱に沿ってずるずると床に座り込み、膝を抱えて、後頭部を冷たい柱に預けた。この位置なら、あまり目立たずにほかの1年生たちを観察できた。
すでに査定を終えたピンク髪の少女アルバは、近くの長椅子に座って制服の上着の裾をいじっていた。何度も扉の方へ目をやっている。表情には不安がはっきり浮かんでいた。タレンと、エイミーがまだ名前を聞き取れていない銀白色の髪の少年は、別の扉の近くで小声で話している。
扉の開く音に、エイミーは視線を向けた。査定を終えたステラが出てくる。顔は赤く、髪も少し乱れていた。まるで走ってきたか、かなり力を使ったかのようだ。彼女はすぐにアルバを見つけると、友人のもとへ急いで行き、隣に腰を下ろして、声を抑えながらも身振りたっぷりに話し始めた。
「リサンダー・ナイトフォール」ヴァンハイム教授が呼ぶ。銀白色の髪の少年は、タレンの横を離れ、自信に満ちた足取りで前へ出た。
その後も、残った生徒たちは一人ずつ査定へ呼ばれていった。エイミーは隅に留まり、体力を温存しながら観察する。タレンは査定から戻ると、なぜかひどく動揺しているようだった。褐色の肌から、血の気が引いて見える。最後の生徒――濃い紫の髪と同じ色の瞳を持つ細身の少女――は、何も読み取れない穏やかな表情で戻ってきた。
やがて1年生たちの査定がすべて終わり、教授たちが部屋へ戻ってきた。ヴァンハイム教授が中央に立ち、その両脇をカエレン、リリエンヌ、ドレイクが固める。
「基礎評価は完了した」ヴァンハイムが告げた。「結果と各自の専門訓練計画は、明日の朝までに確定する。今から諸君には、2年生との顔合わせを兼ねた導入授業に参加してもらう」
「では、ついてきてくれ」ドレイク教授が一歩前に出た。「2年生が待っている」
1年生たちはリリエンヌ教授の後ろに列を作った。エイミーはその最後尾につく。歩き出すと、カエレン教授が自然な足取りで彼女の隣に並んだ。
「ミス・ステイク」
ぎゃあああ、また来た! もう頼むから放っておいて!
「はい、先生」
「運命を追う者にとって、最も重要な資質は何だと思いますか?」
エイミーは小首を傾げた。沈黙が二人の間に伸びる。返答がないと見ると、カエレンが口を開いた。
「直感です」温度のない笑みを浮かべて、彼はそう言った。
この変人、今度は何を言い出す気……? それにしても、なんでこんなに気味が悪いの……?
「ミス・ステイク。私の直感が、あなたについて何と言っているか知りたいですか?」
「何でしょうか、先生」
「あなたは嘘をついています」
彼は、エイミーにだけ届く低さで言った。
「何について、どのように嘘をついているのかまではわかりません。ですが、感じるのです……興味をそそられると同時に、いささか不穏でもあります」
[はい、詰みましたね。短い付き合いでしたが、なかなか楽しかったです、エイミー。残念ながら、物事には終わりがあるものですので]
「……」
「あなたは、見た目以上の力をお持ちですね?」
「……」
え……?
[え……?]
「ひとつ、忠告を。力を隠せば隠すほど、周囲はあなたが何者なのかを疑うようになります。まして今は、そういう時代ですから……」
エイミーが返事をする前に、彼はもう前へ出て、ヴァンハイム教授の隣を歩いていた。残されたエイミーの背筋を、不穏な感覚が這い上がる。
[……あなた、つくづくすごいですね。行く先々で妙な誤解を拾ってくる才能があります。あなたのような方に世界を救わせるのは、拍子抜けするほど簡単か、とんでもなく難しいか、そのどちらかでしょう]
「……」
[あの方が、自分の勘がどこまで当たっていて、どこから外れているのか知ったら面白いでしょうね]
エイミーは今のやり取りを、いったん頭の隅へ追いやった。
今はただ、歩き続けるしかない。




