禿げ散らかった皇子は、龍の珠をとる
梨杏。
僕を軽々と抱え、アパート外の路地に避難した。
ゆっくりと立ち昇る黒煙。
「ぼやか?」
誰かが、呼んだのか、サイレンを鳴らした消防車が、駆けつける所だった。
「火鼠の皮衣は、役に立つな」
そう言いながら、僕から、奪ったスニーカーを指差す。
火鼠なんて、こんな時代にない。
何処かで、聞いた単語。
「火鼠」
そうだ。
かぐや姫の求婚者が、手に入れられなかった燃え尽くされる事のない、皮。
梨杏は、皮のスニーカーを指差すが、
そんな代物ではなかった。
裸足の僕を抱えたまま、立ち昇る黒煙を見上げる。
「あぁ・・・火事か」
はっと、気付いて、裸足のまま降りる。
また、賠償金とか、お金がかかるんだろうな。
廊下での出火は、僕らのせいではないけど、
騒ぎで、飛び起きた奴らは、ベランダから、大きな声で、喚いていた。
「ヤバ・・・」
隣で、声を上げる兄貴。
先に逃げていた兄貴は、ベランダから叫ぶ奴らを見つけると、忍足で、逃げ出す所だった。
「待って!」
すかさず、肩を掴む僕。
「兄貴。何やった?」
「いやいや・・・・」
兄貴は、頭を掻いた。
かぶっていたズラが、ずれている。
兄貴は、悪事が、バレる度に、頭を丸める。
何度も、髪を剃っている物だから、
本当に生えなくなっていた。
「兄貴。また、何かやったの?」
「いいから、離せ!」
「もう、やだよ。何回目?今回は、火事まで」
「いや・・・今回は、また、別だろう」
「なんだよ」
兄貴は、捕まるまいと、僕の手を払う。
「だめです!」
僕の手を払おうとする兄貴を梨杏が、押さえ込んだ。
「兄弟は、争ってはいけません」
「何言っているんだよ。離せ!」
梨杏に、倒された奴らが、僕らの前に立ちはだかった。
「なぁ?朔。お前、何をしたか、わかるか?」
1人が言った。
「あの・・・。すみません。兄貴が何か、したんでしょうか?」
2人は、顔を合わせる。
「何かしたなんて、もんじゃ・・・」
1人が、梨杏に抑え込まれたままの兄貴のポケットを弄る。
「何もないよ!」
どこを探しても、目的の物は、見つけられない。
そのうち、1人の男が、僕らに気づいた。
「ふ・・ん。朔の妹か?」
「いえ・・そうじゃないんで」
「嘘つけ」
そう言いながら、僕の顎を掴む。
「物を渡すまでの、人質としようか」
「だから、持っていないって」
梨杏の拘束が、緩んだので、兄貴は、立ち上がり叫ぶ。
「勘違いだよ。よく探せ」
「そういう訳には、いかないんだ。直接、弁明してもらおうか」
僕は、手首を抑え込まれた。
また、梨杏が、助けてくれる。
そう思って、梨杏を見て、ギョッとした。
「あれ?」
また、梨杏は、あの日、初めて逢った時のように、崩れ落ちていた。




