追いかける火鼠の衣。炎を呼ぶ。
「まずい」
兄貴の様子からして、また、何かしでかしたんだろう?
「警察?」
兄貴が首を振る。
警察なら、まだ、まし。
時間をかけて、話をしたら、釈明できる事もある。
だけど。
兄貴と来たら。
厄介な事に首を挟みすぎる。
何度、
命の危険に晒された事か。
危うく、男娼にされそうになった事。
何回ある?
「逃げる?」
兄貴が、窓に手をかける。
僕は、咄嗟に傘を手に取った。
「傘?」
傘の柄を引っ掛けて、外側から、窓を閉める魂胆。
兄貴は、足が早く、
とっくに窓の外。
「こいつ!」
ドアが開けられた瞬間、その真ん前に、立ちはだかったのは、梨杏だった。
「え?」
案の定、飛び込んできたのは、黒スーツの奴らだった。
金融。
あぁ!また、サラ金に手を出したか。
そう思いながら、
梨杏と逃げようと手を取った。
なのに、
自分から、向かって行くか?
「手伝いできそうです!」
「止めれ!」
女の子に敵う訳がない。
逃げた方がいい。
梨杏を助けなくちゃ!
奴らを倒す為に、消化器を持ち上げた瞬間。
梨杏の足蹴りが、奴らに命中した。
裸に近い、梨杏の姿に、にやけていた2人は、事も、簡単にその場に、
伸びた。
「えぇ?」
僕は、口をあんぐり開けた。
「簡単です」
そう言いながら、梨杏は、裸足のまま、僕の足元を見ていた。
「その草履。履きたい」
「これ?」
僕は、窓から逃げようと持っていたスニーカーを、差し出した。
そういえば、裸足だった。
外に倒れていたのに、何も履いていなかった。
「これは、必要」
「だよな・・・歩くのに、裸足では、痛いよな」
「いいえ・・・」
梨杏は、廊下をさした。
「火鼠が、現れました」
「火鼠?」
黒い煙が、流れ込み、火事だと思った。
誰かが、廊下に火を放った様だ。
「予定通り、窓から逃げます」
梨杏は、そう言うと、窓ガラスを蹴破り、僕の腰に手を回した。
「怖くない。怖くない」
「え?待って!」
ボヤ騒ぎに、オンボロアパートの住人が、廊下に飛び出してくる。
「ちょっと!」
女の子に、僕を抱えるのは、無理!
抵抗しようと、身を捩るが、
梨杏は、簡単に僕を抱え上げると、外へと飛び降りていた。
「きゃー」
僕は、恥ずかしげもなく、梨杏に抱きつき、悲鳴をあげていた。
あとで、僕は、後悔する事になる。
はて・・・。
ところで、火鼠って、言った?




