この世は、行き辛く楽しむ事が何もない。by 朔
「あいつ・・・」
上手くいかない。
借金が、どうしても、無くならない。
むしろ、増えていく。
物事がうまくいかなくなったのは、親父が、あの女を連れてきてからだった。
顔だけの女。
飾っておくには、良かったんだろう。
母親になってくれると思って喜んだのも、束の間。
子供を置いて、親父の所に転がり込んできた。
「やっぱり」
親父は、見る目がない。
母親も、愛想を尽かして、出て行った。
次から次へと、女が、変わる。
自分もだった。
親父に似たのか。
仕事も女も、続いた事がない。
結局、
サラ金から、借りる金が増え、
返す為に、つまらない仕事に手を染めた。
「霜月 朔」
女が、呼んだ。
「はいはい」
喜んで、ついていくと、激しくビンタされた。
「あんた、あんな事言って・・・女と一緒に住んでいるんだって?」
「いやいや・・・あれは弟で」
「嘘つかないでよ。あんな男がいると思う?」
「いや!本当に、弟で」
「もう、下手な嘘つかないで!お金もない、嘘つき、これきりね」
「あの・・・」
結局、繰り返す。
弟、霜月 奏。
地下アイドルで、稼ぐ。
綺麗な顔は、母親に似たんだろう。
顔だけの女。
息子は、それを受け継ぎ、綺麗な顔の少年となった。
借金取りが、自宅に遅かけた時、奏の顔一眼見た、借金取りが、提案した。
女装。
奏は、その辺の女性とは、違った。
自分の胸が、とくんとなったのを覚えている。
奏みたいな女性がいたら・・・。
そんな事を思う事もある。
小さい時、母親が帰って来ないと、
奏は、自分の布団に潜り込んで、寝ていた。
可哀想な弟。
舞台に立った奏は、誰よりも輝いて、眩しかった。
ダンスのセンスもあり、
その世界で、奏を知らない輩は、居なかった。
誰も、
奏が、男だとは、知らなかった。
ある日。
ライブ会場に、
不思議な男が来た。
また、奏の追っかけかと思った。
来る日も、来る日も、
現れ奏の事を聞いてくる。
「誰?あいつ」
他のメンバーに聞いた。
「管理人って・・」
「管理人?」
アパートの大家か?
やたら、細くて、物陰にいたら、気が付かないほど、オーラのない奴だった。
その内、その男の事は、忘れていた。
何も、楽しい事がない日々。
微々たる金の為に、プライドを削る日々。
ヤケクソで、酒を飲み、女に振られた帰り、自宅で、見たのは、不思議な目をした少女と奏の姿だった。




