どこから来て、何処にいくの?君は、アンドロイド
「何?」
ヤバい。
兄貴の目が、宙を泳いで、僕に止まった。
「え・・っと、あの。美里がほら・・・」
慌てて、メンバーの美里の名前を出す。
ユニットのリーダーで、男っぽい。
兄貴も認めてる僕の女の友人。
「行く所、ないから、預かってって・・・」
もはや、何を言っているか、わからない
彼女は、真っ直ぐに、兄貴を見つめている。
その瞳孔は、開いたままで、生きているのか、死んでいるのか、わからない表情。
だが、兄貴をまっすぐ見つめる瞳の奥には、何らかの意識が働いている様に見えた。
「なぁ・・・気付いているなら、何か言えよ」
僕は、彼女の腕にしがみついた。
「ん?」
そうだ、彼女の体温は、僕らより、めちゃくちゃ、低い。
「冷え性?」
「何言ってんだ?」
兄貴が、僕の背中を叩く。
「女の子、連れ込んで?いつから、そんな男になった?」
「いや・・・そうでなくて」
しまった!
兄貴は、とてつもなく、やきもち焼きだった。
男女問わず、美里以外の、誰かが、近づくのを嫌がる。
美里自身、兄貴の元かのと言う事で、多目に見られているが、
本当に、やきもち焼きだ。
僕の一挙一動を、把握していないと気が済まない。
「そうでなくて・・・えっと」
話す事が、しどろもどろ。
自分で、何を言っているのか、わからない。
その時、僕の手にしているTBが、幾つもの、光を放っている事に、僕は、気が付かなかった。
あの時から、始まっていたんだ。
僕と兄貴とのやりとりをじっと、聞いている少女。
感情があるのか、ないのか。
その時だった。
「いい加減にしろ!」
兄貴が、僕に手を挙げた瞬間だった。
叩かれる!
そう思った。
兄貴は、すぐ、手を挙げる。
言葉で、勝てないとこうだ。
商売道具の僕の顔なんて、関係ない。
振り上げた兄貴の手を掴んだ奴がいた。
「とめ!」
んんんん?
変な日本語が、部屋中に響いた。
「止めて」
はい?
僕と兄貴が顔を合わせた。
「手を下ろしな」
言葉を発したのは、あの無表情な少女の口だった。
「傷つけては、イケナイ!」
少女は、兄貴の腕を掴んだまま、ギリギリと押し上げた。
「ばか!離せ!痛いだろう!」
「はい」
急に手を離したので、兄貴は、床に体を嫌というほど、叩きつけられてしまった。
「え?」
少女は、ゆっくりと、僕を見つめると、微笑んだ。
「ようやく、話すという事ができました」
少女は、髪をかきあげると、後ろで、一つ束ねると頭を下げた。
「最初に会った人。お世話になります。お手伝いする」
「誰?」
「あなたの助っ人です」
それが、僕と彼女との初めての出会いだった。
彼女は、その時、兄貴と僕の会話を聞いて、学習したらしい。
僕らの言葉というものを。
どこから来たのか・・・。
あとで、わかった事だが、
彼女は、アンドロイド。
僕が、拾ったのは、何処からか来た、
アンドロイドという、
男でも女でもない、
無機質な人形だった。




