かぐや姫の禍が今。
梨杏。
いい響きだと思った。
思うという表現が合わないかもしれない。
アンドロイド。
プログラミングされた感情。
過去に起きた間違いを修正すべく、降り立った地。
幾つかのルールが刻み込まれていた。
決して、主人を傷つけてはいけない。
それが、任務遂行する次の順に、遵守すべき事だった。
一番最初に、プログラミングされた内容は、目的を達成されるまで、同じではなく、
状況によって、上書きされ、梨杏は、自分の行動を決定していく。
誰かに、命令されるでもなく、
状況に応じて学習していく。
当初、ぎこちなかった行動も、
状況を読み取り、今や、行動は、予測されないままになっていた。
だが、
そうそう、梨杏だけに、任務を任された訳でもなかった。
「行動する者は、少なく。静かに」
であったが、
課された課題は、不死薬と言うだけあって、
どこから、情報が漏れたのか、
その永遠の薬を求めて、
知り得た者達が、我先にと探し出す事態になっていた。
予測不能。
まして、
その騒ぎの原本が、日本人なら、誰もが知るかぐや姫と言う事なら、尚更だった。
「ふじの山から、立ち昇る煙」
それを知らない者は、いない。
恋破れた帝が、かぐや姫の置いていった薬を、捨てさせたという。
あのおとぎ話。
それが、現実となって、舞い降りた。
そのきっかけは、
時の帝の後継者問題であった。
「継ぐべきものは、寝所の奥深くにいる」
どこからか、漏れた話。
時を超え、
生き続けて居る者がいる。
それは、あの時代から。
時を超えて。
あのかくやが、渡した薬が、その者に、
永遠の時間を与えていた。
富士の山に捨てたとされていた薬は、
寝所の奥に、存在し続けていた。
その一部が、どういう事か、
行方をくらましていた。
梨杏は、奏を落とさぬよう、
しっかりと抱えて走り出していた。
「奏!」
朔の声が、まだ、耳に残る。
生身の体で、柵は、梨杏に抵抗していた。
敵うはずなく、柵は、一撃で、地面に伏していた。
「ダメだ・・・連れていっちゃ!」
柵は、絶叫していた。
「そんな事をしたら、殺される!」
動き出したアンドロイドに聞こえる訳はない。




