御伽話は、信じられない。
不死薬。
そんな物が存在するなんて、誰も信じられなかった。
「龍さん」
周りからは、そう呼ばれていた。
街金。
そう言われていた。
高利貸し。
とも言う。
高額で、引き受ける仕事もあった。
その中で、妙な依頼があった。
「運んで欲しい」
闇バイトではなく、
身元がはっきりしている奴に任せたい。
しかも、家族もいない奴がいいと。
裏がある。
依頼先は、身元を明かさなかったが、長年の経験から、
バレたらマズイ、そこそこ身分のはっきりしている人。
と言うのは、わかった。
だが。
まさか。
皇室に関わっているとは、思わなかった。
「まさかだよな」
龍さん。
もとい、鷺山 龍一郎は、思った。
「辞めた方がいい」
仕事仲間の中国人が言った。
「面倒な事になる」
「だけど・・・」
高額な取引だった。
「処分するだけの話だ」
ほんの小瓶、一つを処分して欲しい。
との依頼。
誰もいない所で、処分。
できれば、
火山口。
条件は、何も聞かない事。
「どこが、厄介なんだ?」
たかが、小瓶、1つを処分するだけの事ではないか。
「火山口と言うのが、ひっかかる」
処分するなら、どこでも良くないか。
そう思いながら、引き受けた。
朔。
あいつなら、家族も他にいないし、
万が一、不味くなったら、消す事もできる。
「指示された場所で、処分しろ」
何の薬かは、言っていなかった。
不死薬。
そんな薬があるのか。
長い間、ある所で、保管されていた。
とっくの昔に、処分した事になっていたが、結局、捨てる事もできず、
長い間、保管されていた。
「持っていては、まずい」
何も言わず、朔に任せた。
金に、困っている。
弟を喰い物にしている。
そう聞いていた。
事もあろうか。
処分する途中で、事故にあった。
交差点で、大型トラックが、突っ込んできた。
「まさか・・・」
そのまさかだ。
気付いた時、
薬も、朔の記憶も、
綺麗に消えていた。
「あの薬は、何なんだ?」
中国人に聞いた。
「知らない方がいい」
「もう、巻き込まれているんだ。一体、何なんだ?」
龍一郎の家も、不審者の数撃を受けていた。
「あれは、不死薬だと」
半笑いしながら、彼は言う。
「昔、空の向こうから来た奴が置いていったそうだ。日本人は、美化したおとぎ話になっているが」
「おとぎ話?」
「かぐや姫だと」
不死薬。
その伝説ともなった薬。
龍一郎は、信じられない顔で、中国人を見ていた。




