一つくらい、間違いはある。
怒りで、震える。
滅多に、僕は、怒らない。
てか。
表に出さない。
長い間、地下アイドルとして生活してきたせいか、
感情を押し殺すのが、当たり前になっていた。
だけど。
突然、僕らの前に現れて、
梨杏から助けるふりをして、未知の世界に、押し込むなんて、やり方。
許せなかった。
「奏・・・」
兄貴が制する。
「ワザと戦わせているんだよ」
僕は、兄貴に言う。
「変だろう?ワザと、こんな竹林に連れて来た上、変な弓矢まで、準備しているなんて」
「だから、嫌だったんだ。京都なんて」
「どうして、嫌だと思う訳?記憶もないのに」
「・・・ただの、予感だよ」
「予感?兄貴は、本当は、記憶を失ってないんでしょ?」
「そんな事は・・・」
兄貴は、何か、隠している。
「記憶があっても、なくても、お前の兄貴である事に変わりはないし」
「ずっと、兄貴は、トラブルが、絶えないし。いつも、何かに追われていた。それは、変わらないんだなと」
「俺って、そんな兄貴だった?」
「うん・・・いつも。僕は、振り回されてばかりで」
「そうだったか・・・」
記憶がないふりをしているのか。
元々、そんな性格だったのか。
ただ、トラブルの中心には、いつも、兄貴が居た。
「ただ・・・もしかしたらって」
僕に見せていた、いい加減な兄貴は、仮の姿で、記憶を無くしたって言う兄貴が、
本当の姿なのかもって。
そう、あって欲しいと言う思いなのか。
訳のわからない世界で、
気味の悪い火の玉に、思っていた。
何かあっても、
必ず、そこに兄貴が居る。
「・・・だから、本当は、何か、知っているんじゃって」
「いや・・・」
兄貴は、首を振った。
「期待させたみたいだけど、本当に、何もわからない」
「本当に?」
「本当?」
だとしたら、この爺様が、美里を利用し、何か、僕を試そうとしている。
「ふん」
鼻を鳴らす。
「そう簡単に答えを教えるか?」
「そういう事なら」
僕は、弓矢の先を爺様の鼻先に突きつけた。
「これだけの、事そしたんだ。一つ位、間違いがあってもいいよね」
僕の手から、矢は、放たれた。




