記憶が怪しい借り物か。
こんな風に、手を取って、逃げ出す事があった。
まだ、小さかった頃。
家に大人達が居なくなって、兄貴と無銭飲食した。
事情を理解してくれて、
酷い目には、合わなかったけど。
僕も兄貴もどん底の生活していた。
金銭トラブルが尽きなくて、イヤイヤながら、
こんな仕事してるけど。
兄貴は、優しかった。
今も同じく。
無限に広がる竹林。
蒼い空は、どこまでも、広くて。
走っても走っても、
同じ所に戻ってくる。
「あいつ・・・」
爺様は、笑っていた。
あのポンコツ外車は、そこにあり、
運転席で、爺様は、戻ってきた僕らを見て笑っていた。
「美里?」
美里を送り届けたら、帰る。
その筈だった。
「ごめん・・・奏」
「何が?」
お前また、嘘をつくのかよ。
「本当に、癌なんだよな」
「それは、本当」
「この爺さん、本当は、何なんだ?」
「私の祖父に変わりはない」
「ここは、一体、どこなんだ?」
答えらえずに、俯く美里。
その時、矢に撃ち抜かれ、地面に堕ちていた塊が飛び掛かってきた。
僕を庇う兄貴。
兄貴の背に、歯を立て、食い下がる。
「落武者?」
長い髪を纏め、まるで、その姿は、公家の様だった。
目は、赤く、恨みにこもった顔だった。
「!」
「離せ!」
叩き起こそうとすると、何やら呟く。
口が離れ、地面に落ちる。
「や・・・く」
「何?話せる?」
僕は、聞き取ろうと体を傾けると、兄貴が、すかさず、蹴りを入れて、
その塊は、竹林の向こうに消えて行った。
「これは・・・」
「この竹林は、怪しい」
真っ直ぐ、僕らを見つめる爺様。
「いい加減・・・説明してくれますか」
震えるほど、僕は、頭に来ていた。




