もしかしたらって、思うけど言えない。
竹の宮。
昔。
何とか、修学旅行に参加した事があった。
あの時。
熱を出して、兄貴が迎えに来てくれた事があった。
金もないのに。
どこからか、借りて。
新幹線で、迎えに来た。
「その分、働いてもらうから」
そう言った。
僕ら、頼るのは、2人きりだった。
あんな事があったから、
京都に行くなって言ったのか。
「だからか・・・?」
兄貴に聞いたけど、
記憶のない兄貴には、反応がなかった。
「京都に行くなって、言っただろう」
「何となく」
ロクでもない兄貴は、つまらない男になった。
「何があったか、思い出せないの?」
「何か、あったの」
他愛のない会話。
「この辺、ずっと、竹林なんですね」
僕は、運転する爺様に話しかけた。
京都に、こんなに、竹林があるとは、思わなかった。
人気は、少なく、
観光地でもなさそうだ。
窓から、見える景色は、切もしない。
「いや・・・とっくに、竹林は、終わっている」
「だって・・・?」
景色は変わらない。
いや・・・。この景色。
さっきと同じだ。
「同じ所、回っている?」
景色が、変わらないのは、同じ場所を、何度も、回っているせいだった。
「爺様。もしかして」
美里が、気づいて、声を挙げた。
「同じ所を?」
「静かに」
梨杏?
何かが、来る。
車は、スピードを挙げた。
梨杏だったら、
そんな事は、無駄なのに。
「僕を降ろして」
梨杏だったら、阻止できる。
「そう言うんじゃない!」
「巻いているんだよ」
兄貴が言った。
「梨杏から?」
「違う」
美里が呟く。
「何?」
僕は、振り向く。
「見るな!」
爺様が叫ぶ。
「何の事?」
僕が、振り向こうとした時、車は加速した。
もう、十分に巻いたと言うのか、
車は、急に向きを変えると竹の壁に向かい、突進していった。
「ぶつかる!」
美里も僕も、思わず、目を閉じた。
その瞬間、竹の壁は、消え、車は、頭から吸い込まれて行った。
生暖かい胎内をすり抜ける様な感触。
竹林とは、異なる光のトンネルを抜ける感覚。
「美里。君の実家って?」
美里は、首を振る。
「違う。初めて・・・爺様?」
美里は、運転席の爺様の横顔を見つけていた。
「本当に、爺様なの?」
その時、爺様の顔を赤く照らす物があった。
人魂の様な、
赤く燃える塊。
「まずい・・・ついてきたか」
爺様は、急に車を止める。
振り向き美里に言う。
「弓を撃て!」
「どこにあるの?」
「トランクだ」
一つと思った火の塊は、幾つにも、分かれ迫っていた。
「降りれない!」
「僕が行く!」
弓を撃つ?
僕が。
美里ができないと叫んだ。
今まで、弓なんて、撃った事もない。
ゲーセンで、アーチェリーならあった。
トランクに弓矢を積むなんて、なんて、爺様なんだ。
そう思いながら、トランクを開けた。
弓矢は、本当にあった。
「こんな物が・・・」
古くて、か細い、ボロボロの弓矢だった。




