血まみれの京都の夜
「疲れていない?」
僕は、隣の美里に声を掛けた。
自宅の届ける。
そう約束したけど、なかなか、美里は、自宅を教えてくれなかった。
記憶を失っている兄貴は、当てにならないし、何とか、美里を説得して。
辿り着いた。
京女だった。
意外。
実家は、裕福と聞いていた。
人前で、踊るなんて・・・と言われたそう。
美里は、人を惹きつける魅力もあるし、
普通にオーデション受ければ、いい所まで、行ったと思う。
思うに。
「あいつ・・・」
兄貴・・・だ。
しょぼい男に捕まったせいで、
人生のいい時期を奪われていた。
「最低」
「何が?」
荷物持ちとして、ついてきた兄貴は、呑気にアイスコーヒーをゴクリと
飲み干すと、携帯を忙しく、動かしていた。
「結局、ここに辿り着いたか・・・」
「なんだよ」
本当は、兄貴を置いてきたかった。
てか、
龍さん達に、マークされていたのは、兄貴だし、
あの不思議な男女も、梨杏の事が心配で、現れてきただけで、
兄貴が居ない方が、
安全が保障されるって、訳だ。
だが、
「1人でなんか、いれない。だめだ」
兄貴は、大声で、拒絶した。
「だめだ!だめだ!京都なんて、行くな!」
「京都って・・・兄貴、記憶は?戻った」
「わかんないけど・・・行っちゃいけない気がする」
「いけないって・・兄貴。美里が、心配だから、送っていきたいんだ」
「だったら、一緒にいく」
「だめだよ。兄貴がきたら・・・」
兄貴の記憶が、戻るのを待っている輩がいる。
「だめだって、言われても行く」
「すぐ、戻ってくるから」
「そういう問題でない。お前が行くのが、だめなんだ」
「どうして」
「よく、わからないんだ・・・。だけど、行っちゃいけないのは、わかっている」
僕が、京都に居た事は、一度もない。
反対しても、兄貴は、遠く離れて着いてきた。
「ごめんな」
奥の口から、思わぬ言葉が、溢れてきた。
「え?」
「兄貴のせいだよね。全部」
結局、自分の命を削る事になった。
「そんな事ないよ・・・奏のダンスを側で、見れて幸せだったよ」
京都の駅から出ると、雑踏に揉まれた。
美里の実家は、まだ、この先と言う。
駅を出た瞬間、軽い眩暈が僕を襲った。
碁盤の目の様な、地図が頭の中に浮かぶ。
人々の話し声。
そして悲鳴。
頭の中で、誰かが、話しかける。
「奏?」
僕の変化に気付いたのは、兄貴だった。
「どうした?」
僕は、地面へと崩れ落ちた。




