時が混在する街
京都。
僕が来て良かったのか。
美里の実家。
悩みながら同行する。
電車を乗り継ぎ、窓から、外の景色をぼんやりみている。
なんとなく、懐かしくもあり、心がざわめく。
「もう、いいよ」
美里が、申し訳なさそうに言う。
「うん。いいよ。見届けるから」
きちんと、美里が受け入れてもらえるか、確認してから、去りたい。
「けどな。ここで、別れた方がいいと思うよ」
横槍が入った。
兄貴。
お前か。
「お前との関係とか、何があったか、とか。色々、聞かれるだろう。大丈夫なの」
「あのさ・・・」
僕は、怒りが込み上げてきたけど、黙った。
今の兄貴に何を言っても、わからない。
別人格なのだから。
自分が、何をし、美里がどうして、苦しんでいるかなんて、わからない。
「そう言う事を言っているんでなくて」
僕の心をよんだのか、兄貴は、否定した。
「このタイミングでの、京都は、まずいぞ」
「何を言って・・・」
話しかけて、僕は、舌を噛みそうになった。
兄貴は、バランスを崩し、倒れそうになった。
平日の電車の中。
急ブレーキを掛けて、僕ら、乗客は、前の方に、転びそうになった。
「なんだ!置き石か?」
「飛び込み?」
「まさか?」
兄貴が、僕の目線を追いかけた。
「ほら!」
兄貴が、笑う。
「お前は、この地に入ってはいけない」
「なんでだよ」
何が、起きたのか、人々は、答えを求めて、外を見た。
先頭車両から、人々が、転がり込んできた。
「線路に人が・・・」
「飛び込みか?」
「違う!」
口々に叫ぶ人々。
どうやら、線路上に人が立っているらしい。
「女の子だよ」
「女の子?」
もしや・・・と思った。
薬を持って、どこかへ消えた梨杏。
あの薬は、偽物と言っていたっけ。
だけど、どうして、京都へ?
僕らは、東京で、別れてきた筈なのに。
「始まりが、ここだからさ」
「何か、知っているのか?」
違う。
兄貴は、記憶を失ったんじゃない。
「兄貴・・・記憶を・・」
過去の何か・・・。忘れていた記憶を取り戻したのか?
「記憶?失った訳でも、取り戻した訳でもないよ」
「何を言っているの?」
兄貴は、僕を先頭車両に、導きながら言った。
「クソみたいな人生だったけど、逆転できるって事に気がついたんだよ」
「どうしたの兄貴?」
京都に来るべきではなかった。
兄貴は、そう言った。
のに。
兄貴は、僕が、この地で、起きる事に、巻き込まれるのを、楽しんでいる。
そんな風に、見えた。




