巡る思いと時間
「待った!」
声を掛けたのは、龍さんの仲間だった。
「それは、こちらで、預かる」
「ちょっと!」
美里に、渡したい。
止められて、僕は、咄嗟に、手の中に隠した。
「味方ではないと言ったよね」
それは、わかる。
僕らを見張っているって。
「無くした薬を渡さなきゃならない。こちらも、危険な目に遭っているんだ」
「兄貴の事は、悪いと思っているよ」
兄貴は、知らんぷりだ。
美里を心配するそぶりもない。
薬を渡しそびれていると、美里が、再び、血を吐いた。
「渡せない。美里、飲んで」
渡そうとした僕の手から、薬の瓶が、吹き飛んだ。
「まじか!」
突然、立ち上がった梨杏。
瓶を手にし、窓へと向かう。
「梨杏?本当に、イカれたか?」
男女、2人が声を上げる。
「ダウンさせろ!」
1人が叫ぶ。
一向に気にしない梨杏。
窓から、飛び降り、それを追う龍さんの仲間。
「なんで!」
僕は、叫んだ。
美里の延命の薬の筈だ。
「いいから・・・」
そう言いながら、両手を口に充てたまま、突っ伏してしまった。
「大丈夫か?」
バカだと思った。
大丈夫な訳がない。
「自分が悪いんだよ」
兄貴が顔を上げた。
「自分のやりたい様に、生きてきたんだ。悔いは、ないだろう」
「何を言うんだ?」
それは、兄貴で・・・。
僕は、睨みつけた。
兄貴は、どこ吹く風。
僕らの事なんて、気にしない。
本当に記憶を無くしたのか、そのふりなのか。
「争いの元なんて、ない方がいい」
「それは・・・そうなんですけどね」
こほんと咳をする1人。
「確かに、持ち込んだ奴が悪いんですけど、そのせいで、一つの国の皇室が、揺れてんで」
持ち込んだ奴がいて。更に、その薬を盗んだ兄貴が居て。近い薬を持って、逃亡する梨杏がいて。
「ここ(地球)に、持ち込んだのが、間違いで」
「あなた達・・・ここ(地球)じゃないの?」
僕が、声を上げると困った顔で、僕を見つめた。
「そう・・・です」
何かを言いたそうに、していたが、言葉を飲み込んだ。
月が明るく、眩しい。
梨杏を追うにも、もう、追いつけない所まで、行っているに
違いない。
「薬を誰に届けようとしているのか・・・」
そう言いながら、また、別の瓶を取り出した。
「また・・・ある?」
「いいや・・これが、本物」
梨杏が、持って逃げたのは、偽物だと言う。
「誰が、そうさせているのか、黒幕を知りたいと思ってね」
「こっちが、本物に近い薬」
美里に、そっと渡す。
「少しは、延命できると思うけど」
僕らは、美里の延命の為に、本物を探す事になる。




