暴走
後から知った。
温暖化によって、長年、万年氷のの世界が崩壊し、何十年も前に行方不明だった、
探検家の遺体が見つかった話。
氷の世界から、現れたのは、それだけではなかったんだ。
後から、思えばね
梨杏の暴走も、全て、理由があった。
その氷の世界で、動きがあった。
陽良。
彼が来ていた。
その近くの、氷穴の中で、じっと、様子を伺っていた。
「不具合が、起きている」
少し、焦っている。
幾分、梨杏に似ては、いるが、まだ、人間に近い。
「焦る事もある?」
奥から、顔を出したのは、
「阿蘭」
女性だった。
何か、重和に事態が起きたらしい。
「力ずくで、連れ帰りますか?」
「そうしたいのは、山々だけど。また、同じ事を繰り返すんじゃ・・・」
「どうしても、ここに逃げてくる」
陽良は、ため息をつく。
「他にも、逃亡者がいる・・・。まとめて、強制送還しますか」
「役割を果たすのを見守るのが勤だから、歯がゆいな」
「・・・にしても、R8ー2026の人格形成は、失敗では?」
「ん?」
「初期設定に、戻ってしまったのでは?」
「というと」
「守護モードから、追跡モードに変わってしまったようだ」
「・・・となると」
「ますい」
2人は、顔を見合わせた。
「殺される?」
2人は、スーツウェアに着替えると、外へと飛び出していった。
* * * * * *
「犯罪者?って」
危うく、梨杏に捕まりそうになって、すり抜ける。
どうやって、ここに戻った?
龍さんの隠れ家に、置いて来たのに。
人間じゃない。
どこか、高度文明の世界から、現れた。
アンドロイド。
僕の味方だった筈?
なのに。
馬鹿、みたいな力で、飛びついてくる。
「兄貴!」
張本人の兄貴は、ベッドの上で、本を読んでいる。
「助けて!」
梨杏の拳から、逃げる。
「嫌だよ」
他人事の兄貴。
「誰のせいだよ!」
「いいじゃないか。可愛い女の子に追いかけられて」
「いや・・・そういう事でないんだ!」
掴められないと、察したのか、梨杏の口が、左右に開いた。
まずい。
高周波が、でる。
「奏!」
美里が、叫んだ。
「え?」
僕の持っていたタブレットを、指差す。
「これか!」
梨杏の操作パネルなんだろう。
美里が、コーラのボトルを投げつける。
「?」
キャップが外れ、タブレットに中身が、降り注ぐ。
「うわ!」
一瞬、ピンク色の光が、横に走る。
「お前・・・」
梨杏の動きが、ぎこちなくなり、また、脱力したように、床に倒れて、動かなくなった。
「アンドロイドだな・・・」
本を閉じながら、兄貴が言った。
「どこで、買ってきたんだ?秋葉原か?」
梨杏の両目が、見開いたままだった。




