女の子。持ち帰る。まずいだろう。いや、でも。
ちょっと、待て。
女装する僕は、今まで、たくさん、嫌な目に遭って来ただろう?
この街で、女の子が、どんな目に遭うか、
僕は、身を持って知っているつもり。
兄貴が、
「体を売れって!」
言ったのも。
僕が、男性と知った上で、女装した僕を好む輩がたくさんいる。
ちょっと、
歪んだ癖を持つ輩達。
こんな意識を失った女の子が、
そんな輩の毒牙にかかったらと、
思うと・・・。
「ねぇ!お姉ちゃん」
しつこく、飲み会帰りのサラリーマンが、絡んでいる。
2人。
見る所、
気が弱そう。
勝てる。
あ・・僕。
こう見えても、ボクシングやってて・・・。
細いけど。
マッチョ。
腕力、自信あり。
あんまり、筋肉つけると女の子に見えなくなるから、
「商品にならねえ!」
って、兄貴に言われるから、
ほどほどにしているんだけど。
「ねぇ!」
臭いサラリーマンが、女の子に触れようとした瞬間。
僕の拳が、炸裂した。
うんうん。
軽いジャブだったけど、
後ろに倒れた1人を見て、
もう1人は、持っていた鞄を投げ捨てて、飛ぶように逃げていった。
「あれ?落とし物!」
携帯を落として逃げて行ったので、追いかけたけど、
どこに行ったのか、
わからなくなった。
「まぁ・・・いいか」
女の子の頬を叩く。
「起きなよ」
ペチペチしても、薄く瞼を閉じたまま、
反応しない。
「困った・・・」
このままにしておく訳にも、いかないし、
裸に近い格好の彼女を、置いておくなんて、
この後、起きる事が予想できる。
「う・・・ん」
しばらく、悩む。
友人の女の子の家に、置いておくか・・・。
家には、兄貴がいるし。
う・・ん。
そうだ!
兄貴が、このまま、飲みに行くと言っていた事を思い出した。
大体、飲みに行くと、
女の所に転がり込む。
まぁ・・・。
彼女の所だな。
僕は、女の子を、とりあえず、連れ帰る事にした。
明日になったら、
女友達に連絡して。
引き取って、もらおう。
とりあえず、今晩だけ。
女の子の胸元が、魅力的で、少し、クラクラしたけど、
僕は、抱えて、近くのボロアパートに向かった。
下水とゲロの臭いの町外れに、
僕らの狭いアパートはあった。
今時、
こんなアパートがあったのかと、思うほど、
小さくて汚くて、倒れそうなアパート。
それでも、
母親との思い出が、染み込んだアパートが、そこにあった。




