路地裏に迷い込んだゲロにまみれたお姫様
「ふざけんな!」
そう言うよな。
でも。
結局、こんな顔にしたのは、兄貴のせいだろう。
すぐ、カッとなる。
どうしようない兄貴。
といっても、僕達。
本当の兄弟でもない。
保護者が、いないから、義父の連れ子だった兄貴 弦と一緒に住んでるだけで。
18歳になったら、
独立するつもり。
その位の金なら、稼げる。
「なのに!」
僕は、叫んだ。
「おいおい・・・なんだ?女の子が、騒いでいるぞ」
行き交う人が、僕らを見ている。
側から、見たら、痴話喧嘩に見えただろう。
僕の格好。
お店のガラスに映る姿は、ちょっと、萌え萌えしちゃう、
ピンクの似合う女の子だから。
僕。
女装して、地下ドルや、YouTubeで、投げ銭稼いで、
兄貴に、巻き上げられている、
可哀想な17歳。
今日は、大事なライブがあった・・・のに。
兄貴のパンチをもろに、喰らって、右目の周りに大きな痣ができてしまった。
「こんな顔で、行けるのかよ」
僕は、毒気づいた。
「ダメなら、体売れよ」
「はぁ?それが弟に、言う言葉?」
「弟?親父が変な女に、入れ込んで、連れてきたガキだろう?結局、俺に押し付けて、2人共、消えやがった」
お袋は、昔から、次から次へと男を変える。
精神的に、弱かったのか。
男がいないとダメな女だった。
「とにかく、眼帯しても、今日は、無理。僕のファンが騒ぐから」
「だったら、デートぐらいしたら?追っかけが、いるだろう?ラブホ行って、シャワー浴びている間に、いなくなる。いつもの、あれ、やろうぜ」
「とにかく、今日は、そんな気分じゃない」
この痣葉、明日には、下がってきて、頬の辺りが、黒くなるだろう。
昔から、
気に入らないと手を挙げる。
それなのに、
寂しくなると、
僕のベッドに潜り込んでくる。
僕らは、
親に捨てられた傷を舐め合って、生きている。
小汚い街。
路地裏は、誰かが、吐いた唾やゲロが、至る所にあって、
夜中過ぎには、
見慣れない酔っ払いが、あちこちにうずくまっている。
罵倒する兄貴を振り払って、
僕は、適当に、お茶する相手。(本当は、鴨探し)を探そうと、
割と人の居る、
路地裏に入った。
品のいい、クラブが、並ぶ細い路地で、
上品な客が、酒を楽しんでいる。
その中で、
この街に、似合わない少女が、電信柱を背に、座ってるのを見つけた。
見慣れない。
この街に合わない少女だった。
だって、
真っ白なワンピースを着ていて、
明らかに下着を身につけていない様子だった。
「え?」
体の線がくっきりと、浮かび上がり、
それが、行き交う人の目を引いていた。
「まじか・・・」
遠目に、顔を覗き込む。
まぁまぁ・・・。
目を閉じていて、
どこかのホステスにしては、まだ、若すぎる感じだった。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
どこかのおっさんが、声を掛けていた。
そうだよな。
そんな格好で、寝ていたら、餌食だろう。
かといって、助ける言われはないから、
僕は、スルーする事にした。




