彼女の価値
「美里?」
突然の吐血に、その場は、凍りついた。
「龍さん、僕が見ているから」
拘束を解いてほしい。
僕は、懇願した。
龍さんは、美里を引き渡すつもりだった。警察でもに所へ。
それまで、拘束していたが、突然の吐血に、僕は、凍りついた。
きっと、
今は、記憶もない兄貴も、知っていたら。同じだったろう。
「うっ・・・」
吐いた血液の塊に驚く事もなく、美里は、体を丸めた。
「そういう事か」
梨杏が、近づく。
「人は、誰でも、永遠の命を欲しがると聞いた、それ故か」
美里の拘束を外す。
「去るがいい」
「なんで?」
龍さんが阻止する。
梨杏が、龍さんの手を簡単に払い、ドアを開けた。
「罰する迄ではないだろう。もう、時間もない」
「梨杏。僕は、納得していない。どういう事なの?」
「人として、当たり前だ。自分の命が失くなる。だから、不死薬を求めた」
「美里?」
僕は、美里の顔を見た。
「病気だったの?」
そんな事、聞いていない。一緒にファミレスで、朝まで、話し合った。
何でも、僕の話を聞いてくれた。
あんな最低の兄貴と付き合ってくれた。
「美里。僕には言って」
「奏・・・あのさ。言わなくて、ごめん」
「本当なの?」
美里は、黙って、頷く。
「早く、行きな!」
梨杏は、冷たく背中を押し出す。
「待ってくれ」
まだ、話す時間が必要なんだから。
「癌だよ。進行性の。持って、3ヶ月」
「いつ?知ったの」
「2〜3週間前」
無情にも、梨杏は言う。
「知っていたからって、何もできないです」
「梨杏。酷いぞ。美里は、僕の大事な友達なんだ。そんな事言うな」
「本当の事を隠す必要はないです」
梨杏は、僕の前に立ちはだかった。
「関わる事ないです。あなたの友人は、他にもいます」
「そうではなくて、梨杏。知りたいんだ。どうしたら、美里を救う事ができるのか」
「病気で、死ぬか、失敗したから、奴らに殺されるかです」
「奴らって・・・・」
病院で、見たスーツを着込んだ兵士の様な人達。
「梨杏。お願いだ」
「お願い?それは、命令ですか?」
ふと、梨杏の目が、紅く光った気がした。
「そう・・・命令。梨杏、彼女を助けて」
僕が、そう言うと、梨杏は、兄貴の頭を片手で、抱えていた。




