歴史の奥底に流れる産物と監視者
「とにかく、ここから」
天井からの砂埃が、今、何が起きているのかを、知らせていた。
「もしかして、これって」
バラバラとヘルメットと盾で、ガードした軍人が突入してきた。
「これって、軍人?」
「いやいや・・・嘘でしょう。日本にそんな兵士なんていない」
「あります」
梨杏が、ひょいと兄貴を抱え上げた。
「長居は、無用です」
兄貴を押さえつけていた美里は、龍さんに後ろ手に確保されていた。
「あとで、話は、ゆっくり聞かせてもらう」
「嘘だろう?美里」
まるで、追い詰められた猫の様に、僕を威嚇する美里。
「あなただって、知ったら、欲しくなる」
不死の薬。
「そうかな」
死なないって、事は、苦しみから、逃れなくなるって、事だ。
兄貴の為に、採り続ける日が永遠に続くって事。
僕は、こんな生活にウンザリなの。
髪を長くして、毛先を巻く。
メイクしたり、ネイルしたり。
僕と言う存在の上を、塗り固めるようにして、奏という女性ができあげる。
「ここから、逃げる」
「うわぁ!離せ!」
理解できない兄貴が、梨杏の背中で、絶叫する。
「ここにいる!」
そんな事ができる訳がない。
背中に兄貴を背負ったまま、兵士達を撒き散らす梨杏。
「本当に、人間?」
そう思いながら、もしかしたら、あのタブレットが、原因で、途中で、止まってしまうんじゃないかと不安に駆られた。
梨杏は、あのタブレットと連動している。
という事は、
タブレットが誰かの手に渡れば、梨杏が、敵になると言う事で、
訳のわからない事に、巻き込まれたまま、命の危険に遭うって事で。
僕は、ポケットの中のタブレットを確認した。
未知の存在。
梨杏は、何処から来たんだろう。
突然、現れ、僕らの味方になる。
梨杏が、現れるのと、同時に、事件に巻き込まれる兄貴。
「早く!」
龍さんの仲間が、病室の出口で、叫ぶ。
追いつく兵士達を払いのけて、外に飛び出す。
「え?」
僕は、目を疑った。
病院の周りは、たくさんの救急車がいるだけの、ちょっと違う日常の風景だったのが、
まるで、何か、攻撃を受けたかの様な、半分、吹き飛んだ病院のある景色に息を呑んだ。
「何が、そんなに・・・」
「・・・だから、それ位、大変な事なんだ」
龍さんが眉を顰めた。
「全く、大人しく渡せば、可愛い弟を巻き込まないで、済んだのにな」
「弟?」
梨杏の背中で、兄貴がポツリと呟いた。




