君の正体と僕
嫌な臭いが、鼻をついた。
化学繊維の燃えた臭い。
天井まで、上がる白い煙。
嘘だろう。
そこに仁王立ちで、いるのは梨杏だった。
「なんで?」
頭の中で、最初にあった出来事が結びつく。
あの倒れていた時。
携帯電話だと思った。
タブレットなのか。
梨杏が、目覚める時、
必ず、タブレットが関係していた。
流れる見た事もない文字。
模様の様な、まるで、古代の楔形のような文字が、
並び流れていく。
見つかったらまずいような気がして、
僕は、自分の尻の下に、敷いた。
「ほんと!困った!」
梨杏の細い手首が、2人の男の胸を押さえている。
重くないのか、
簡単に壁際に押さえている。
「な・・なんなんだ?」
龍さんが呆気に取られている間に、事務所のドアが、音を立てて、閉まった。
「ぬ?」
やられた。
隙をついて、兄貴が、逃げ出したのだ。
縄で縛るとか、
通じない。
奴は、今まで、何度も、捕まり、打ち込まれても、
逃げ出していた。
何度も、何度も、僕は、身元引き受けに行ったんだからな!
「とんでもない、お嬢さんだな」
龍さんは、テーブルの下にあるブザーを押したのか、奥から、新たに何人か、飛び出してきた。
「手荒な事は、したくないんだ」
梨杏に手を離せと、命令した。
「女の子は、大人しくした方がいい」
「女の子?」
梨杏の細い眉が、狭くなった。
「何、言ってんですか?」
両手が塞がってるから、征服できると思ったのだろう。
「まじか・・」
更に、襲いかかる奴らは、梨杏の回し蹴りで、あえなく、ダウンしまった。
「はい。そこまで」
僕の首筋に、冷っとした物が充てられた。
「なかなか、逞しくていいんだけど。私達も、命がかかっているんでね」
龍さんの手に握られた刃物が、僕の首筋にあった。
「NO!」
梨杏の目が鋭くなった。
「何て事を!」
力の入った両腕が、2人の野郎の胸骨を折ったらしく、床に崩れていく。
「一体・・・何者なんだ?」
呟く。
「僕も、わかんなくて」
「なかなか、使えそうな女の子だな」
「使えるか、どうかは、僕は、わからないけど」
「解放しろ!」
梨杏が、龍さんに迫った。
「解放?するか」
その瞬間、梨杏が、笑った。
そう思った。
笑顔と思った、梨杏の口は、耳まで、裂け、
とんでもない音が、あたりに響き渡った。
その瞬間、窓ガラスは、飛び散り、あらゆるガラス製品が、破壊されていった。
「うわ!」
龍さんも、僕も、慌てて耳を押さえた。
梨杏の手が伸び、僕を抱え上げていた。
「梨杏?」
僕を抱え上げると、あの、恐ろしい声を発するのを止めた。
「なんて・・・」
周りを見渡しながら、龍さんは、呆然としていた。
「はぁ・・・」
梨杏。
君は、一体、何者なんだい?
僕を見つめて、ニコニコしている。
タブレットの中で、楔形の文字が、七色の光を放って、流れていた。




