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転生されたら淑女になった  第16話


第16:淑女の仮面、家族の絆



我が家の朝は、相変わらず静止画のように静かだ。

だが、その沈黙の中には、濃密な情報の往来がある。


(……父さん、左肩の動きがコンマ数秒遅いな。昨日の鍛錬の疲労か?)


(……いや、ルイ。これは古傷の「馴染み」だ。気にするな)


(……母さん。今日の紅茶、茶葉の開き方が芸術的だ。感謝するぜ)


『うふふ、ルイ。あなたの「心の調律」が上手くいっているから、より美味しく感じるので


すよ』


俺たちは、言葉という不確かな道具をほとんど使わない。

シニアとしての余裕は、相手を深く観察し、言葉の先にある真意を汲み取ることにある。俺にとって、この一家の沈黙は、どんなに雄弁な演説よりも心地よい「調和」だった。

俺は銀髪を整え、鏡の中の淑女に向けて小さく頷く。

完璧な所作。凛とした佇まい。

中身が67歳の叩き上げだとは、誰も思うまい。


(……さて。外の世界は、俺たちのこの静寂を放っておいてはくれないらしいな)


俺は、テーブルの上に置かれた一通の手紙に目をやった。

そこには、王国の紋章がこれ見よがしに刻印されていた。







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