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転生されたら淑女になった 第10話
第10話:アイドリングの涙
家に戻ると、暖炉の火が静かに爆ぜていた。
父ガルロと母エシスは、何も言わずに俺を迎えた。
俺は一言も発さず、ただ母の膝元に崩れ落ちた。
『……ルイ。お疲れ様でした。あなたは、よくやりましたよ』
母の思念が、柔らかい真綿のように俺を包み込む。
父は大きな手で、俺の背中を静かに叩いた。そのリズムは、俺がかつて愛したエンジンのアイドリングのように、確かで、力強い。
(……親父、お袋。……俺は、間に合わなかった。もっと早く、もっと上手くやれたはずなんだ……)
前世の翔一だった頃、俺は人前で涙など見せたことはなかった。
だが今、十五歳の淑女の体は、堰を切ったように熱いものを流し続けている。
それは悲しみというより、溜まりすぎた感情の「排熱」だった。
(……次は、もっと完璧に仕上げてやる。誰も、欠けさせやしない)
俺は母の香りに包まれながら、心の中で誓った。
道具を愛するように、人を、この世界を愛し抜く。
ナイスシニアの魂を宿した少女の夜は、こうして静かに、そして深く更けていった。




