第3話 武器屋で絡まれる
植物たちへの肥料を買いに、町に出た。
ついでに、『会話』スキルの応用を何か試せないかと思ったんだが……。
「そう簡単に、応用なんて思い浮かばないよな……」
「そりゃそうよ。私だって、たくさん考えたんだもの」
だよなぁ……ん?
立ち止まり、振り返る。
ルーフェンがきょとんとした顔で、立っていた。
「……なんでついて来てるんだよ」
「暇だから」
だったら俺に構うより、彼氏の1人や2人見つければいいのに。婚期逃すぞ。
「アンタ今、クソ失礼なこと考えなかった」
「ソンナコトナイヨ」
なんでわかるんだよ。それもスキルの応用か?
「顔に出やすいのよ、アンタは」
さいですか。
それ以上喋らず、商店の並んでいる武具商環通りへ向かう。
あぁ、のどかで平和な町だ。……人が少ないと、なお良かったんだが。
武具商環通りは、いつ来ても人で賑わっている。
人嫌いの俺にとっては、最悪だ。
けど昼間じゃないと店はやってないし……背に腹は代えられない。
できるだけ通りの端を歩いて、植物店に向かった……その時だった。
『たたかいたくないよ~』
『めんどうくさいよ~』
変な声が、聞こえた。
立ち止まり、声の聞こえた方を見る。
「……武器屋……?」
「え、何? アンタもついに、そういうのが気になるようになった?」
「いや、微塵も」
けど……なんだろう、今の声は。
む~と唇を尖らせるルーフェンと一緒に、武器屋に向かう。
店先には甲冑が飾られていて、そいつを見上げた。
「……君たち、戦いたくないのか?」
『やだ~』
『めんどっちぃ』
『ぼく、甲冑より剣むきのそざいなのに~』
……甲冑より、剣向き……?
「待ってくれ。君たちにも向き不向きがあるのか?」
『『『あるよ~』』』
揃って肯定された。
そ、そうだったのか。初めて聞いた。
念のため、武器屋の中に入る。
客は2人で、店主が1人。他には誰もいなかった。
「ちょっとディーレル、どうしたのよ?」
「いや、ちょっと気になることが……」
乱雑に剣が刺さっている樽に近付く。
数十本の剣は、ワーワーと戦いたくないとか、やる気出ないとか言っている。
でも……こいつだけは、違う。
そいつを手に取ると、まるで待ってましたとでも言うように、日の光でギラッと光った。
「お前は、戦いたいのか?」
『たたかうです~。めちゃめちゃやる気あるです~』
声からしたら、とてもそうは聞こえないけど……確かに、他の剣とは輝きが違う気がする。
樽に刻まれた文字には、『どれでも銅貨10枚』と書いてある。
安い。子供のおこずかい並みだ。
その剣を持って、高級な剣が飾られている所に向かう。
一本が金貨1000枚。物凄い額だ。
「お互いに聞くけど、相手に勝てるか?」
『ちょーよゆーです~』と銅貨10枚の剣。
『そこはかとなくむり~』と金貨1000枚の剣。
マジか。高い方の剣も、輝いて見えるんだけど。
もしかして、鉄の質の問題か……?
悪質な鉄を使っていたら、いくら外装は良くても脆いものになる。
逆に良質な鉄を使っていたら、高級な剣に勝つこともできる、ってことか。
…………。
「ちょっと、ディーレル。急に黙ってどうしたのよ?」
「……ルーフェン。俺、いいこと――」
「おいおい、うるせーよバカップル共」
急に、誰かに話し掛けられた。
振り返ると、そこには客として来ていた大男がいた。
見るからに輩だ。こういう奴らは、マジで人の話を聞かないから嫌いだ。
後、純粋に怖い。どうしよう、泣きそう。
固まっていると、ルーフェンが前に出て俺を庇った。
「うるさかったことは謝るわ、ごめんなさい」
「ケッ。女に守られてちゃ、世話ねーな、ガキ。……にしても」
輩の目が、ルーフェンに注がれる。
明らかに悪意のある、邪な目だった。
「おいネーちゃん。そんなガキ放っておいて、俺と遊ぼうぜ。悪いようにはしないからよ」
「お生憎様。下賤な男は興味ないの」
ちょ、ルーフェン。めちゃめちゃ強きだな……!?
輩は眉間にシワを寄せるが、直ぐに口角を上げた。
「いいねぇ。やっぱ女は強きじゃなくちゃ。余計屈服させたくなったぜ」
丸太のように太い腕が、ルーフェンに伸びる。
いくらなんでも、強引すぎるだろう。
咄嗟に、ルーフェンの腕を引いて輩から距離を取る。
目を丸くして驚くルーフェン。いや、俺だってやる時はやりますよ。喧嘩になったら、瞬殺だろうけど。
「い、行くぞ、ルーフェン。もう帰ろう」
「逃がさねーよ、ガキ」
しかし回り込まれてしまった。
くそっ。こんな狭い店なのに、なんて機動力だ。
店主に助けを求めようと振り返るが、カウンターの向こうには誰もいなかった。
クソが、逃げやがった。
輩が拳を鳴らして、首を捻る。
え、どうしよう、本当にどうしよう……!
2人並んで後退るが、そのせいで逃げ場が無くなった。
これ、マジでまずいやつ?
誰か、助け……!
「おい、貴様」
急に、俺と輩の間に剣が差し込まれた。
美しく磨かれた刃に、つい見惚れてしまう。
剣の持ち主の男は、鋭い眼光で輩を睨みつけた。
「神聖な武器屋でナンパとは、不届き千万。この騎士アスロが黙っていると思うなよ」
き……騎士……? なんでこの町に騎士が……?
騎士と輩が睨み合う。
ルーフェンはハラハラと2人を見るが、俺は俺で2人の武器を見ていた。
『あ〜、かてそうにないな〜』と騎士の剣。
『この剣ならよゆーかもー』と輩の斧。
……えっ??




