第4話 目指すべき先
……どうしてこうなった。
場所は変わって、武器屋の前。
騎士と輩の決闘に、何故か俺が見届け人として参加することになった。
なんで俺が……。
「下賤な輩め。僕が勝ったら、彼らに謝るんだ」
「おー、土下座でもなんでもしてやるよ。じゃ、俺が勝ったらテメェには全裸で腹踊りしながら町を一周してもらおうかぁ? ギャハハ!」
自分の勝ちを確信してるのか、輩は大笑いしている。
騒ぎに気づいたからか、徐々に人集りが出来てきた。
あー、もうしーらね。どうにでもなれだ。
ボーッとしていると、ルーフェンが俺の肩をつついてきた。
「ちょっと、どうするのよ。このままじゃ決闘が始まっちゃうわよ……!」
「知らん。2人とも、もう止まらないだろ」
だからコミュニケーションはクソなんだ。ちっとも話を聞こうともしない。
2人が、それぞれの武器を構える。
騎士は両刃の剣。多分、騎士に貸与される量産型だ。
対して輩は、巨大な斧。鉄の塊のような威圧感がある。
輩は不敵に笑い、斧を肩に担いだ。
「オラオラオラ! 行くぜオラァ!!」
猛牛のように突進しながら、斧を振り下ろす。
速い、あんな大斧を持ってるのに……!
騎士も想定外だったのか、一瞬だけ反応が鈍る。
けど直ぐに動き、寸前で斧を避けた。
目標を失った斧が石畳を粉砕し、深く抉った。
『あんまりらんぼーにしてほしくないかも〜』と大斧。
あ、武器でもそう思うことあるんだ。
騎士は剣を脇に構え、輩に向かって横薙ぎで攻める。
鋭い斬撃だけど、輩は余裕を持って避けた。
あいつ、素人目にもかなり強いぞ。
「ほらほらどうしたァ? そんななまっちょろい剣じゃ、俺には傷一つ付けられねぇぜぇ!!」
力に任せた振り下ろし。
避けきれないと察した騎士が、斧を受けようと剣を振るった──その時だった。
『あー……おれちゃうなぁ〜』
剣から、聞きたくない言葉が聞こえてきた。
剣と斧が衝突し、鈍い金属音が、辺りに響く。
次の瞬間。砕かれた刃が、散り散りになって地面に落ちた。
野次馬が息を飲み、小さく声を上げた。
おいおいっ、嘘だろ……! マジで折れたんだが……!?
このままじゃ騎士の負けが決定して、ルーフェンはあいつに拉致られ……!
いや、いやっ、駄目だろそれは!
剣、剣、剣っ。代わりになる剣ッ……あ!
手に持っていた剣に目を落とす。
さっき返しそびれた剣。これなら……!
「君、あの斧に勝てるか……!?」
『じゅっちゅーはっく、よゆ〜のよっちゃん』
よっしゃ!
騎士を呼び寄せようとすると、輩が斧を大きく振り上げていた。
あいつっ、とどめを刺すつもりか……!
「騎士! こいつ使え!!」
もうなりふり構っていられない。
騎士に向かって、剣を投げつけた。
回転しながら飛んでいく剣。
咄嗟のことなのに、騎士は躊躇することなく横に飛び、斧を回避しながら剣を空中でキャッチする。
曲芸さながらの動きに、観衆はどよめいた。
「ッ、この剣……!」
騎士は目を見開き、刃に目を向ける。
が、輩が追撃の斧を振るってきた。
「死ねッ、クソ騎士ィ!」
「フッ──!!」
剣が瞬き、再び斧と衝突する。
さっきのような鈍い破裂音が響く。
剣は折れていない。刃こぼれひとつなく、斧を受け止めていた。
「へっ。さっきの剣よりはまともみたいだ……な……?」
ミシミシ音が鳴り、輩の顔が曇る。
剣ではない。斧の方に亀裂が走り……弾けるように、砕け散った。
自分の武器が砕けて、硬直する輩。
騎士は一瞬で輩の足元に潜り込み、回し蹴りで脚を刈り取る。
倒れた相手の喉に、剣を突きつけた。
「……ま……参った」
お……おおっ。勝ったよ、あの体格差で……!
野次馬たちも大興奮で、拍手を送っている。
俺とルーフェンも、思わず拍手してしまった。
いやぁ、いいもん見せてもらったわ。生の戦いなんて、そうそう見れないからな。
輩は俺たちに謝罪をすると、人混みに紛れるように消えていった。
入れ替わりで、騎士が俺たちのところにやって来た。
「この剣、ありがとう。助かったよ」
「あ……その、ぅす」
人と話してこなかったから、こういう爽やかイケメンを前にすると萎縮しちゃうんだよな。
騎士から剣を受け取る。
一回使っちゃったからな。買い取らないと。
無駄な出費に肩を落とす。
が、騎士は剣に釘付けだった。
「失礼、少年。その剣はもしや、名剣の類いじゃ……?」
「あ、いや、ここの武器屋で、銅貨10枚で売ってて……」
「何っ、これが……!?」
やっぱり、見る人が見るとわかる逸品なんだな。
俺には、声が聞こえない限り全部同じに見えるけど。
騎士はじっくり剣を見つめると、何かを決めたように力強く頷いた。
「……すまない、少年。この剣を僕に譲って欲しい」
「え?」
「もちろん、タダでとは言わない。相応の金を出そう。と言っても、持ち合わせは多くないが……これでどうだ?」
懐から取り出した、小さな巾着袋。
開けると……ぎ、銀貨だらけ……!?
「30枚ある。少ないと思うが、どうだろう?」
「そ、そんな! 十分すぎるくらいと言うか、多すぎるというか……!」
「そうか、良かった。僕はアスロ。いつもは王都で騎士をやっているんだ。もし来ることがあったら、訪ねてきてほしい」
それじゃ、と爽やかに笑い、店主に銅貨10枚を渡し、手を振って去っていった。
残ったのは、銀貨30枚の入った袋。
銀貨1枚で、銅貨100枚と同じくらいの価値がある。
ど、銅貨10枚の剣が、銀貨30枚に化けちまったよ。
ずっと黙っていたルーフェンが、緊張の糸が切れたみたいに、深く息をついた。
「は〜……お、驚いたわね。まさかこんなラッキーが起きるなんて……」
「……いや、ラッキーじゃない」
頭の中に甘い痺れがある。
何かが分泌されてるような、フワフワとした感覚……心地いい。
巾着袋を握り締め、無意識のうちに笑いが込み上げてきた。
「ルーフェン、こいつは商売になるぞ」
「商売?」
「そうだ。俺のスキルで安くて良い物を買い集めて、高く売る。そうすれば、莫大な富を築ける」
まるで明るい未来が切り開かれた気分だ。
心が踊るっていうのは、こういう事を言うんだな。
「俺──商人になる」
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