生まれ変わる
白い魔法陣が部屋の中央に現れた瞬間、まばゆい光が室内を満たし、三人の若者を新たな世界へと送り出した。
同時に、その魔法陣はカイの魂を別の世界へと転生させていた――。
意識がゆっくりと浮かび上がる中、暗闇に微かな声が響き、続いて赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
赤子の泣き声。
「うわぁ… うわぁ… うわぁ…」
金髪に青い瞳の男が、茶色のチュニックに黒のズボンを身に着け、腕に抱いた新生児を優しく見つめながら穏やかに語りかける。
「ついに来てくれたんだね……私の子よ。なんて美しい……まるで母親そっくりだ。お前の名は“メイローナ”としよう。」
周囲に立っていた数人のエルフたちは驚愕の表情を浮かべていた。
そのうちの一人が心の中で叫ぶ。
「ありえない……この魔力…新生児だというのに……!“七聖騎士”にも匹敵するなんて……!」
金色の髪に金の瞳を持つ女性が、白いドレスを纏って柔らかく微笑んだ。
「ねえ、あなた……うちの子、本当に言葉にならないほど可愛らしいわ。メイローナ……って、古代の“魔女王”の名ではありませんか?」
男は赤子を見つめたまま静かに笑った。
「ああ。これほどの魔力を持って生まれたのなら、きっと強く育つ……そしていつかエルフ族の次代の女王となるだろう。」
赤ん坊の身体の中で、カイはゆっくりと小さな手を動かした。
泣き声は止み、その小さな瞳には大人の意識が宿っていた。
(転生……か。しかも今回は女……エルフ、だと?面白い。つまり……あいつら二人も転生しているはず。)
(待ってろよ、お前たち。できるだけ早く成長して……必ず会いに行くからな。親友たち。)
――二十年後
メイローナは白く柔らかな肌、長い金髪と輝く金の瞳を持つ、美しいエルフの少女へと成長していた。
目を覚ますと、身支度を整え、侍女に手伝われながら着替えを済ませた。鏡に映った自分を見つめながら心の中で呟く。
(……可愛くなりすぎてない? いや、マジで。あの二人に会ったら、どんな顔されるんだよ……恥ずかしすぎる……。しかも私はエルフ王族のお嬢様だし……くそ、可愛いって自分で思っちゃうのが一番キツい……。)
頬を赤らめていると、侍女が丁寧に頭を下げた。
「ご準備できました、メイ様。」
廊下を歩きながらメイローナは再び考える。
(セマに行くにはどうすれば……?もう二十年も経ったんだし、まずはお父様に旅の許可をもらわないと。あの二人、絶対待ってるよな。私の姿を見たら……どんな反応するんだろ……)
彼女は心の中でライドとダンの姿を思い浮かべた。
『うおっ、カイ、めっちゃ可愛くなってんじゃん!?』
想像した瞬間、彼女は現実に戻り、顔を真っ赤にした。
(ないないない!いやでももう二十年女の子として暮らしてるし……慣れてきてるのがやばい……どうしよう……)
そのままメイローナ――かつてのカイは王族の大広間へ進み、玉座に座る父、エルフ王の前で優雅に跪いた。
「父上。私はもう一人で旅ができる年になりました。どうか、世界を巡る旅の許可をお与えください。」
王は愛情のこもった眼差しで娘を見つめた。
「よかろう。我が愛しき娘よ。だが一つだけ条件がある。ひとりの従者を連れて行きなさい。」
銀髪を背に流し、青い瞳を持つ若いエルフの女性が一歩前に出た。
緑のトップスに黒いズボンとブーツを身につけ、深く頭を下げる。
「グエダと申します、メイ様。どうかお供させてください。」
メイローナは一瞬凍りつき、目を見開いた。
そしてそっと歩み寄り、優しく手を差し出す。
グエダがその手を取り、温かい感触が二人を包んだ。
「よろしくね、グエダ。」
二人が大広間を後にすると、歩きながらグエダが恭しく、しかし親しみを込めて尋ねた。
「メイローナ様。どちらへ向かいましょう?」
メイローナは歩きながら答える。
「セマの街へ行くわ。」
グエダは静かに頷いた。
「かしこまりました。すでに荷物と馬車の準備は整えております。」
二人は馬車に乗り、エルフの都を出発した。
しばらく進んだところで、森の中から盗賊たちが現れ、馬車を取り囲んだ。
グエダが外へ出ようとしたその時、メイローナが彼女を制した。
「待って、グエダ。私がやるわ。」
メイローナがゆっくりと馬車から降りる。
盗賊たちは身構え、頭領が怒鳴った。
「価値のあるもんを全部置いていけ!そうすりゃ見逃してやる、エルフども!」
しかしメイローナは微動だにしない――そして“殺気”を放った。
盗賊たちの全身が汗に濡れ、恐怖に震え上がる。
最悪の怪物に遭遇したかのように、誰一人として動けなかった。
近くで見ていたグエダは思った。
(この魔力……この殺気……私たちは彼女を守るためにいるのか……それとも、守られているのは私たちのほうなのか……?)
メイローナが殺気を収めると、盗賊たちはようやく自由を取り戻し、一斉に悲鳴を上げて森の奥へと逃げていった。
そのとき――
謎の男がメイローナの横に腰を下ろし、水の入ったボトルと大きな焼き肉を手にしていた。




