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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第三章

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97話 美人に待ち伏せされるシチュは嫌いではない

 

 試験会場となる森には五つのエリアがあり、特別試験官は期限内までに全てのエリアを回らなくてはならない。名称未定(アンノウン)組もまたこのルールに従い潜伏しつつエリア移動を繰り返していた。

 ちなみに五つのエリアはこうなっている。


 川辺エリア

 大樹エリア

 岩山エリア

 草原エリア

 廃墟エリア


 俺が最初に潜伏したのは大樹エリアだ。隠れるにはうってつけではあったが、双子ちゃんに見つかってしまったので以降は近づいていない。それから他のエリアを転々としつつ、俺は最後の五つ目のエリア――廃墟エリアへと向かっていた。


「敵の反応なし。わんさかいると思ったんだけどハズレだったかな」


 半ば崩れた壁が並ぶ町の跡。レンガは風化し、地面は草に覆われていた。かつてここには小さな町があったそうだ。しかし、魔物の襲撃で壊滅し滅んだそうだ。百年以上前の話である。

 もはや壁しか残っていない場所に運営のテントが設置されていた。森の中心であるこの廃墟エリアは、各エリアに近く、移動に適した場所だ。そのためテントでは、ギルド職員と回復師が常駐し、二十四時間怪我人の受け入れを行っている。


 テントに近づいたところで、見知った顔を見つけた。


「ラクっちじゃん! どしたの?」


 怪我人を抱えるグランノーツが、ノノンの声ではしゃいでいた。


「立ち寄ったから、ついでに顔でも見てみようかなって。そっちは忙しそうだな」

「これね。フェリちんがボコボコにした奴らじゃん」


 抱えられた二名は顔を腫らして気絶していた。


 どうやらフェリスは隠れるのが苦手らしく、行く先々で受験者に発見され、受験者を叩きのめすを繰り返しているそうなのだ。中にはトラウマになった奴もいるらしく、炎剣にもう会いたくないとリタイヤした者もいるのだとか。

 他にもルークと相対しリタイヤ。ブロンクにライザに、ギルに双子ちゃんと、受験者達にトラウマを植え付けリタイヤが続出していた。


「極めつけはシルク。一番犠牲者が多いんだよね」

「え、そうなの?」

「実力差に絶望する魔術師が後を絶たないって話じゃん。シルシルなりに手加減はしてんだと思うんだけど、他とは次元が違うっていうかさ。受験者達の間で攻略不可能って噂になってるらしいよ」


 それほどまでに圧倒的なのか。だが、シルクならあり得ない話ではない。

 あいつは本当に頼りになる魔術師なのだ。シルクが加入して以降、名称未定(アンノウン)はそれまでとは比べものにならないほど強くなった。ウチは近接系のアタッカーばかりだしな。遠距離担当は待ちに待った存在でもあったんだ。


「ちなみに俺は?」

「殺したい相手第一位って聞いたよ? マジうけるー」


 リタイヤどころか逆にヤル気にさせていると……。

 まぁ、試験的にはその方がありがたいんだろうな。俺は複雑だけど。試験が終わった後で胸ぐら掴まれないかな。お礼参りとかさ、たまに聞くし。割に合わないな。


 グランノーツは怪我人をテントの中へ運び込む。中では数人の受験者が回復師によって治療されていた。その中にはザインの姿も。


「ラ、ララララ、ラックス!」

「あ、うん、頑張ってるみたいだな」


 吐息が当たる距離まで接近され、血走った片目がぎょろりと俺を見つめる。

 俺はのけぞりつつ挨拶をする。


「きき、傷あるから癒やすぅううう」

「サンキュウ。助かるよ」

「な、仲間、助けるのは当然」


 森の移動でできた擦り傷を、ザインはキュアで癒やしてくれる。

 好きなだけ回復ができる環境なおかげか、ザインの機嫌が良い。もちろんなんとなくだ。


 仲間への挨拶も終わり、一人でテントを出た俺は敵の狙い通りだったことを察した。


「ようやく来たな。ラックス・サードウッド」


 単身待ち構えていたのは、ギルド本部でいちゃもんをつけてきた眼鏡剣士君だった。

 偶然、では無いんだろうな。最初から俺に狙いを絞って待ち構えていたと見るべき。あれだけ殺気を飛ばしてきた奴だ。その可能性は非常に高い。


 魔力の網にさらに二つの反応があった。

 テントの陰から、男女が逃げ道を塞ぐように姿を現した。どちらも剣と長杖を構え即戦闘に移行できる体勢である。


「ここは戦闘禁止区域だ。離れた場所なら相手してやる」

「逃げるつもりはないと?」

「一応、これでも特別試験官なんでね。あとはそうだな、イキり散らかした格下をたしなめるのも役目かと思ってね」

「ふっ、挑発のつもりか。後悔するのは貴様だぞ」


 怒らせるつもりで挑発したのだが、意外にも冷静な返しだ。

 相当自信があるとみて良さそうだな。つまり倒せるだけの何かがあると見るべき。正直、B級相手に負けるとは思えないが、警戒はしておくべきだ。


「場を変える。ついてこい」


 眼鏡剣士君が、背を向け歩き出す。

 俺も後方の二人を警戒しつつ彼らについてゆくことにした。



 ◇



 運営のテント群からずいぶん離れた位置で、三人と俺は相対する。

 眼鏡剣士君を守るように、若い女性剣士と男性魔術師が戦闘態勢でポジションを取っている。対する俺は即座に反応できる距離を保ちつつ右手には短杖を握っていた。


「改めて自己紹介させてもらう。俺はベンジャス・グレーバー。『勝利を約束された者達(ウィニングスパーダ)』のリーダーだ」

「剣士のラナッタ。覚えなくて結構です」

「僕は魔術師のレイクです」


 続けて例の男女も自己紹介をする。ただ、覚えるのが面倒なので、以後は美人剣士ちゃんと地味顔魔術師君と呼ぶことにしよう。


「我が『勝利を約束された者達(ウィニングスパーダ)』に所属する者は、いずれも貴族出身にして高名な剣士や魔術師の子女で構成されている。かくいう俺も子爵家の三男。だからなのか貴様のような品性の欠片もない、いい加減な男を見ると許せなくなってしまうのだよ」

「ずいぶんと志高いようで」

「とはいえそれでもS級の端くれ、実力のあるなしにかかわらず格上なのは疑いようがない。さらに現在は我らを審査する特別試験官という立場でもある。なんとも腹立たしい状況ではあるが、我らはこれを好機と捉えることにした」


 彼は口角を鋭く上げる。


「ラックス・サードウッドはなにかと悪評が多く一部の冒険者達にもひどく疎まれている。そんな男を倒せば『勝利を約束された者達(ウィニングスパーダ)』の名は確実に上がるはずだ。もしかしたら本部上層部にも喜ぶ者がいるかもしれないな」

「……」

「俺はすでにA級相当の実力を有している。足りないのはせいぜいランクくらいだ。加えてこちらには二名の仲間もいる。S級といえどバッファーごときに負けるとも到底考えられない。一方的な展開にはなってしまうが、狩られる狐と思って諦めて貰いたい」


 躱すと同時に、銀光が髪の一本を斬る。

 刹那に肉薄した眼鏡剣士君は、歯茎を剥き出しにし、笑みを浮かべていた。



【修正報告】

84話の新人ちゃん達のランクをD→Cに変更しました。

気づいた方教えてくださりありがとうございます!

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ドラゴンノベルス公式ページ
― 新着の感想 ―
ここまで話の出なかったグランさん、救護班にいたんですね。 自分が必死に上位のランクを目指しているのに、自分より上のランクをバカにする。……マゾかな? 一対三、どんな戦いになるか楽しみです。
思い上がったメガネキャラって90%位の確率で噛ませになる印象よね~ そもそも「個人」に対してSランクを与えている時点で気付けよ…
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