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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第三章

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96話 シスターの出張懺悔室・王都編Ⅱ

 

 冒険者パーティーのリーダーに認知されていない。相談者の告白にシスタークラリッサ脳裏にいじめの文字が過る。重い相談だと察した彼女は、これまで以上に緊張感を持って臨む覚悟を決めた。


 相談者は深く傷ついているかもしれない、言葉は慎重に。

 クラリッサはしばしの沈黙の後に、できうる限りの優しさを込めて相手に語りかけた。


「お話しできる範囲で構いません。貴方の悩みをお話しください」

「はい。自分はとある冒険者パーティーに所属しているのですが、そのパーティーのリーダーさんが自分の存在を忘れているようなのです」

「忘れている、とは?」

「加入させたことをです」


 クラリッサは相談内容が理解できず大量の疑問符を生み出した。

 は? は? 加入させた仲間を忘れる?

 どういうこと? この人も詐欺に遭ってる?? 詐欺が流行っているの?


 壁の向こうにいる相談者は、がさがさと枝葉がこすれるような音を鳴らし、話を続けた。


「彼は何も悪くないのです。自分の体質といいますか、固有の能力と申しますか、少々特殊な体質でして」

「体質、ですか?」

「これまでずいぶん苦労をしてきました。そのおかげで拾っていただいたときは、天にも昇るような気持ちでした。よりどころのない自分に居場所ができたのです。最初はそれだけで満足していました。ただ、不思議なもので、一度満たされると欲が出てしまうようなのです。近頃ではもう一度拾ってくれた彼に自分を見てもらいたい。そう思うようになってしまいました」


 なんだかよく分からないが、大変な人生を歩んでこられた方なのですね。クラリッサはそう思うと不思議と涙腺が緩み感情移入していた。と、同時にそのリーダーに強い怒りがこみ上げていた。なぜこの方を忘れてしまったのか、理由があったとしてもこの人が救われない。


 人に忘れられるほど残酷なことはない。

 今すぐそのリーダーの元へ走って行き胸ぐらを掴んでやりたい。


「相談内容は分かりました。では、そのリーダーにアピールするというのはいかがでしょう」

「それは、頑張って存在感を出せということでしょうか?」

「端的に言えばそうですね。とはいえこれまでのこともありますし、誰か協力してもらえる方はいらっしゃいますか?」

「仲間がいます。皆さん自分のような者に親切丁寧に接してくださる良い方々です」

「ちょっと待ってください。それはつまり、リーダーだけ忘れているということですか?」


 相談者は「仰るとおりです」と返事をする。


 沈黙したクラリッサは息を吐きながら天井を見上げた。その脳内では見知らぬリーダーに向かってダブル中指を立てていた。

 相談者が優しいだけだった。やはりそのリーダーはゴミクズ。クズと言えばどこかのS級のリーダーを思い出しますが、さすがにあの人とは別人でしょう。などとクラリッサはぼさぼさ頭の付与士を思い出していた。


「仲間に悩みを打ち明け協力を取り付けるのです。そして、きちんと怒りをぶつけましょう」

「怒ってはいないのですが」

「いいえ、怒るべきです。人は痛みを伴わない記憶は忘れる生き物。刻みつけてやるのです。二度と忘れるなと。もし不安なら私が同行いたしますよ。そのリーダーには一言申したい気分ですので」


 柔らかく語るクラリッサは瞬き一つせず真顔であった。

 嵐の前の静けさ、噴火前の沈黙、たまたま懺悔室の外を歩いていた大司教は、背筋が凍り付くような寒気に動揺した。


「同行は大丈夫です。そうですね、頑張って怒ってみます」

「応援していますよ。女神様のご加護があらんことを」


 相談者は懺悔室を出て行く。

 クラリッサは静かに女神に成功を祈った。



祝・書籍版『最強付与士』の続刊発売が決定いたしました!!!

発売時期についてはもうしばらくお待ちください。

引き続き応援よろしくお願いいたします。ばちこん☆(ウィンク)

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書籍版2026年6月5日発売!
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ドラゴンノベルス公式ページ
― 新着の感想 ―
がさがさって音がしてるのが正体のヒント?もしくは認知されない理由?(最序盤の紹介の際にフェリスが存在に触れていた所と、酔ったラックスの介抱以外で)本編上の何処で出てるか気になりますね。 アグレッシブク…
聖剣さんかと思ったけど木の葉の音? 誰なんだろう。
なかなか正体わかりませんねぇ… 他の仲間達からはやっぱり認識されてたようですが、ますます謎が深まってきましたw
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